「iDeCoの掛金を毎月自分の口座から積み立てているけれど、年末調整で何か書く必要があるのか分からない」
「秋に届いた国民年金基金連合会からのハガキ、あれは何だったのか」
年末調整の「給与所得者の保険料控除申告書」には、生命保険料控除や地震保険料控除とは別枠で、小規模企業共済等掛金控除という欄があります。iDeCoの掛金はここに書きます。生命保険料控除のように支払額の一部が控除されるのではなく、支払った掛金がそのまま全額所得から差し引かれる制度で、金額のインパクトも大きいだけに、書き忘れると損失も大きくなります。国税庁の一次情報にもとづいて、対象になる掛金の範囲から申告書の書き方まで整理します。
1. 小規模企業共済等掛金控除の中身

国税庁タックスアンサー「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」では、控除の対象になる掛金として次の3種類が挙げられています。
独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約(旧第二種共済契約を除く)の掛金
確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金
地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金
出典:国税庁 タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
iDeCoは「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」にあたります。同ページには控除額の計算方法として「控除できる金額は、その年に支払った掛金の全額です」と明記されています。生命保険料控除は支払額に応じた段階的な計算式が適用され、上限も年間4万円(新契約・一般生命保険料の場合)にとどまりますが、小規模企業共済等掛金控除には上限が設けられておらず、年間の掛金がそのまま所得から引かれます。iDeCoで年間27万6,000円(月2万3,000円)を積み立てていれば、27万6,000円がまるごと課税所得から差し引かれる計算です。
2. 給与天引きか、自分の口座からの引き落としかで手続きが分かれる
iDeCoの掛金の払込方法は、勤務先の給与から天引きされる事業主払込と、加入者本人の銀行口座から引き落とされる個人払込の2種類があります。
| 払込方法 | 年末調整での手続き |
|---|---|
| 事業主払込(給与天引き) | 会社の給与計算で毎月控除されているため、申告書への記入もハガキの添付も不要 |
| 個人払込(本人口座からの引き落とし) | 保険料控除申告書への記入と、掛金払込証明書ハガキの添付が必要 |
まず自分の給与明細を確認し、iDeCoの掛金が控除項目として天引きされていなければ、個人払込にあたります。この場合は自分で年末調整の手続きをする必要があります。会社の担当者に「iDeCoは天引きですか」と一言確認しておくと確実です。
3. 国民年金基金連合会から届く掛金払込証明書ハガキ

個人払込でiDeCoの掛金を支払っている人には、毎年秋ごろ、国民年金基金連合会という公的機関から掛金払込証明書のハガキが自宅に郵送されます。1年間に支払った掛金の合計額が印字されたもので、年末調整ではこのハガキの原本を保険料控除申告書に添付して会社に提出します。
年の後半、たとえば11月以降にiDeCoの加入手続きが完了した人は、証明書ハガキの発送が翌年1月にずれ込み、会社の年末調整の締め切りに間に合わないことがあります。その場合は年末調整では申告できないため、翌年2月から3月にかけての確定申告で控除を受けることになります。年末調整に間に合わなかったからといって控除自体を諦める必要はありません。
現場のリアル。薄いハガキを広告と勘違いして捨てそうになった30代の会社員
都内のメーカーに勤める30代の男性は、その年の春からiDeCoを始めたばかりでした。10月末、見慣れない差出人名の薄いハガキがポストに入っていて、内容を確認せずに「またどこかの保険の勧誘か」と思い、ゴミ箱に入れかけたそうです。たまたま同僚に年末調整の話を振られた際に「iDeCoのハガキって取ってあります」と聞かれ、慌ててゴミ箱を漁って中身を確認したところ、国民年金基金連合会からの掛金払込証明書でした。年間で払い込んだ23,000円×3か月分、69,000円分の証明書で、金額としては小さいものの、捨てていれば年末調整で反映できず、確定申告の手間が余分に発生するところでした。iDeCoの証明書ハガキは封筒ではなく薄い一枚のハガキで届くため、宛名面だけでは内容が分かりにくく、毎年一定数の人がダイレクトメールと勘違いして処分してしまうといいます。
4. 保険料控除申告書、小規模企業共済等掛金控除欄の書き方
年末調整で会社に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」には、用紙の右下あたりに小規模企業共済等掛金控除の欄があります。掛金の種類ごとに行が分かれています。
| 掛金の種類 | 記入する内容 |
|---|---|
| 独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金 | 小規模企業共済に加入している場合の掛金額 |
| 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金 | 会社の企業型DCで、給与天引き以外の方法で自己拠出(マッチング拠出)した金額 |
| 確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金 | iDeCoの年間掛金合計額をここに記入 |
| 心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金 | 地方公共団体の心身障害者扶養共済制度の掛金額 |
| 合計(控除額) | 上記の合計額 |
iDeCoだけに加入している人は、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の行に、掛金払込証明書ハガキに記載された合計金額をそのまま書き写し、合計欄にも同じ金額を記入します。ハガキの原本は、この保険料控除申告書と一緒に会社へ提出します。コピーではなく原本を求められる点は、生命保険料控除や地震保険料控除の証明書と同じです。
現場のリアル。申告書の右下を見落としていた経理歴の長い担当者すら気づかなかった人
ある食品卸の会社で経理を担当する40代の女性は、毎年自分自身もiDeCoに加入して掛金を払い続けていました。ある年、保険料控除申告書に生命保険料控除と地震保険料控除だけを記入して提出したところ、給与から天引きされる所得税額が例年より高いことに、翌年の給与明細を見て気づいたといいます。申告書を見返すと、右下の小規模企業共済等掛金控除の欄が空欄のままでした。生命保険や地震保険の欄に慣れていたぶん、申告書の一番下にある欄をうっかり見落としていたのです。経理の実務を長く担当している人でも、自分自身の申告書となると記入漏れに気づきにくいという話で、結局その年は年明けの確定申告で還付を受け直すことになりました。保険料控除申告書は上から生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、そして一番下に小規模企業共済等掛金控除という並びになっているため、一番下の欄まで目を通す習慣をつけておく必要があります。
5. 掛金全額控除の節税効果をどう計算するか

小規模企業共済等掛金控除による節税額は、掛金の金額に、その人の所得税の限界税率と住民税率を足したものを掛けて概算できます。所得税の税率は、国税庁タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」に掲載されている速算表にもとづきます。
課税される所得金額 1,000円から1,949,000円までは税率5%、控除額0円
1,950,000円から3,299,000円までは税率10%、控除額97,500円
3,300,000円から6,949,000円までは税率20%、控除額427,500円
6,950,000円から8,999,000円までは税率23%、控除額636,000円
9,000,000円から17,999,000円までは税率33%、控除額1,536,000円
出典:国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
ここでいう課税される所得金額は、年収そのものではなく、給与所得控除や社会保険料控除、基礎控除などを差し引いたあとの金額です。年収がいくらであれば課税所得がいくらになるかは、扶養親族の有無や社会保険料の額によって一人ひとり異なるため、正確な節税額を知りたい場合は自分の源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」や「所得控除の額の合計額」を確認する必要があります。ここでは目安として、住民税率を標準税率の10パーセントとして、iDeCoの年間掛金27万6,000円(月2万3,000円)を全額控除した場合の節税額を課税所得の水準別に計算しました。
| 課税される所得金額の目安 | 所得税率 | 掛金27万6,000円に対する年間の節税額(所得税+住民税10%) |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 41,400円 |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 55,200円 |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 82,800円 |
| 695万円超900万円以下 | 23% | 91,080円 |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% | 118,680円 |
いずれの水準でも、月2万3,000円の積み立てに対して年間4万円台から12万円近い税負担の軽減になる計算です。20年、30年と積み立てを続ければ、この年ごとの節税額が積み上がっていきます。
6. iDeCoの拠出限度額について
iDeCoの掛金には、加入している年金制度に応じた上限額が定められています。2026年8月時点で、企業年金のない会社員は月2万3,000円、企業型DCのみに加入している会社員や公務員、確定給付企業年金がある会社員は月2万円が上限です。なお、iDeCoの拠出限度額と加入可能年齢については2026年12月から制度改正が予定されており、上限額が変わる見込みです。改正後の正確な金額は、加入している金融機関やiDeCo公式サイトで、申告のタイミングごとに確認してください。
7. よくある質問
証明書ハガキを紛失してしまった場合はどうすればよいか
iDeCoを申し込んだ運営管理機関(証券会社や銀行)に連絡すれば、国民年金基金連合会から再発行のハガキが送られてきます。再発行には数日から2週間程度かかることがあるため、会社の年末調整の締め切りから逆算して、早めに連絡してください。
専業主婦(無収入)の妻がiDeCoに加入している場合、夫の年末調整で控除できるか
小規模企業共済等掛金控除は、確定拠出年金の加入者本人の所得からしか控除できません。生命保険料控除のように、契約者と保険料の負担者が違っても控除を受けられる制度とは性質が異なり、妻の掛金を夫の年末調整で控除に含めることはできません。妻本人に控除対象となる所得がない場合、その年の控除は事実上使いきれないことになります。
給与天引き(事業主払込)なのに証明書ハガキが届いた場合はどうするか
年の途中で払込方法を事業主払込から個人払込に変更した場合など、その年の一部期間について個人払込分の証明書ハガキが届くことがあります。この場合はハガキに記載された個人払込分の金額だけを保険料控除申告書に記入し、天引き分については別途記入する必要はありません。
まとめ
小規模企業共済等掛金控除は、iDeCoの掛金であればその年に支払った全額が所得から差し引かれる制度です(国税庁タックスアンサー No.1135)。自分の口座から掛金を引き落としている人は、年末調整で保険料控除申告書に記入し、国民年金基金連合会から届く掛金払込証明書ハガキの原本を添付する必要があります。給与天引きの人は手続き不要ですが、自分がどちらの払込方法なのかを給与明細で確認しておくと安心です。ハガキが薄い一枚のものであるために見落とされやすいこと、申告書の記入欄自体が一番下にあって見落とされやすいことは、実際に手続きで戸惑う人が多いポイントでもあります。控除証明書の内容を入力するだけで小規模企業共済等掛金控除の該当額を自動で計算し、申告書の該当欄に反映してくれる「書けた年末調整」のようなツールを使えば、こうした記入漏れも防ぎやすくなります。