11月に総務から配られた年末調整の書類を前に、生命保険料控除の欄を埋め終えたところで手が止まる。今年はふるさと納税で3万円ほど寄付したはずなのに、保険料控除申告書のどこにもそれを書く欄がない。「これ、どこかに書き忘れてるのか、それとも別の手続きがいるのか」と、提出直前になって不安になった経験がある人は少なくないはずです。
先に言ってしまうと、ふるさと納税の控除は年末調整では一切処理できません。年末調整とは別に、ワンストップ特例制度か確定申告のどちらかを、自分の手で済ませる必要があります。ここを知らないまま年末調整の書類だけ出して満足していると、寄付した分の控除がまるごと受けられないまま終わってしまいます。
なぜ年末調整の書類にふるさと納税を書く欄がないのか

会社が年末調整で処理してくれるのは、生命保険料控除や地震保険料控除、扶養控除といった、給与所得者の扶養控除等申告書・保険料控除申告書・基礎控除申告書の3枚に定められた項目に限られます。ふるさと納税は税法上「寄附金控除」という別の控除項目にあたり、この3枚のどこにも記入欄が用意されていません。
国税庁タックスアンサー「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」では、ふるさと納税を含む寄附金控除について次のように説明されています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
「国、地方公共団体、特定の公益法人等に対して『特定寄附金』を支出した場合には、所得控除(寄附金控除)を受けることができます」
「ふるさと納税として寄附された金額について、控除を受けるためには、ふるさと納税を行った年分において確定申告をする必要があります」
出典:国税庁タックスアンサー No.1155「ふるさと納税(寄附金控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
つまり原則は確定申告です。ただし給与所得者がいちいち確定申告をしなくて済むよう、総務省の制度として設けられているのが「ワンストップ特例制度」になります。ここは国税庁の管轄ではなく総務省・地方税法の枠組みで動いている点は押さえておいたほうがいいところで、地方税法附則第7条第1項・第2項に、確定申告が不要な給与所得者等が寄付先5団体以内であればワンストップ特例を利用できる旨が定められています。出典:総務省「ふるさと納税ワンストップ特例の取扱いについて」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000362730.pdf
書く欄がないからといって、保険料控除申告書の余白に寄付額を書き込んでも会社では処理できません。総務担当者を困らせるだけなので、そこは素直に別ルートで手続きすると割り切ったほうが早いです。
ワンストップ特例制度と確定申告、どちらを選ぶか
| 項目 | ワンストップ特例制度 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 対象者 | もともと確定申告が不要な給与所得者等 | 個人事業主、給与収入2,000万円超の人、6自治体以上に寄付した人など |
| 寄付先の数 | 1年間で5自治体以内 | 制限なし |
| 手続き先 | 寄付した各自治体(申請書を郵送またはオンライン申請) | 税務署(確定申告書を提出) |
| 提出期限 | 寄付した翌年の1月10日必着 | 寄付した翌年の2月16日〜3月15日ごろ |
| 控除される税金 | 翌年度の住民税から全額控除 | その年分の所得税から還付+翌年度の住民税から控除 |
普段は会社の年末調整だけで税金の手続きが完結していて、今年のふるさと納税が5自治体以内に収まっているなら、ワンストップ特例のほうが圧倒的に手間が少ないです。逆に医療費控除など他の理由で元々確定申告をするつもりがあるなら、ふるさと納税もまとめて確定申告に含めたほうが二度手間になりません。
ワンストップ特例制度、申請書のどこに何を書くか

ワンストップ特例を使える条件は次の2つを両方満たすことです。
- 会社員などで、もともと確定申告や住民税の申告をする必要がない人
- その年の1月1日から12月31日までにふるさと納税をした自治体が5団体以内であること(同じ自治体に複数回寄付しても1団体としてカウント)
手続きの流れは次のとおりです。
- 寄付の申し込み時に「ワンストップ特例制度を利用する」にチェックを入れる。チェックを忘れると自治体側から申請書が送られてこないので、申し込み画面の一番下まで見落とさないことです。
- 自治体から届く「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」に、氏名・住所・マイナンバーなどを記入する。住所欄は住民票どおりに書く必要があり、引っ越し直後で住民票の住所と現住所がずれていると、自治体側で本人確認が取れず差し戻されることがあります。
- マイナンバーカードのコピー(表・裏の両面)、またはマイナンバー通知カードと運転免許証など、定められた本人確認書類一式を添付する。
- 寄付した「すべて」の自治体に、それぞれ個別に郵送する。1つの自治体にまとめて送っても他の自治体には届きません。
- 翌年1月10日必着で提出する。
マイナンバーカードを持っていれば、スマホから「さとふるアプリ」「ふるさとチョイス」などのオンライン申請に対応している自治体も増えており、こちらは1月10日23時59分までの送信で間に合います。郵送より締切に余裕を持たせられるので、年末に慌てるくらいならオンライン対応の自治体を選んで寄付するのも一つの手です。
【現場のリアル】年末の郵便事情で1月10日必着に間に合わなかった話
ある会社員は、12月に駆け込みで4自治体にふるさと納税をし、届いた申請書を年明けの1月8日にまとめてポストに投函しました。普通郵便なら数日で届くはずだと思っていたのですが、年賀状シーズンの配達遅延と重なり、1通だけ1自治体への到着が1月12日になってしまいました。結果、その1自治体分だけワンストップ特例が無効になり、翌年その分だけ確定申告で改めて申告する羽目になったといいます。必着とは自治体に届いた日であって投函日ではありません。年末年始は郵便局の配達自体が普段より遅くなることも踏まえて、遅くとも1月5日前後には投函するか、余裕があるならオンライン申請に切り替えたほうが安全です。
こんなときは確定申告になる。ワンストップ特例は使えない
以下のいずれかに当てはまる場合は、ワンストップ特例制度は使えず、確定申告でふるさと納税分も含めて申告する必要があります。
- 1年間で6自治体以上にふるさと納税をした場合。国税庁タックスアンサー「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」のとおり、控除自体は受けられますが、申告方法が確定申告に一本化されます。
- 医療費控除を受けたい場合。国税庁タックスアンサー「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」では、1年間に支払った医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の場合はその5パーセント)を超えた場合に対象になると定められています。出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- 住宅ローン控除を1年目で受ける場合。国税庁タックスアンサー「No.1210 マイホームの取得等と所得税の税額控除」のとおり、初年度は必ず確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で処理できます。出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1210.htm
- 給与収入が2,000万円を超える場合、または副業所得が年間20万円を超える場合。国税庁タックスアンサー「No.2020 確定申告」に、確定申告が必要な人の要件がまとめられています。出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm
一番の落とし穴、確定申告をするとワンストップ特例は無効になる

ここが毎年一定数の人がはまるポイントです。ワンストップ特例の申請書をすでに自治体へ送っていても、後から何らかの理由で確定申告をすることになった時点で、それまでに提出したワンストップ特例の申請はすべて無効になります。国税庁タックスアンサー「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」が示すとおり、ふるさと納税の控除を受ける方法は「ワンストップ特例」か「確定申告」のどちらか一本であり、両方が同時に有効になることはありません。
つまり確定申告をする場合は、寄付先が1団体だろうと5団体だろうと、ふるさと納税で支払った金額を全部合算して確定申告書の寄付金控除の欄に記入し直す必要があります。これを忘れると、ワンストップ特例も無効・確定申告でも未記載という、控除がどこにも反映されない状態になってしまいます。
【現場のリアル】ワンストップ特例が全部無効になった絶望
これは実際によく起きる失敗です。ある人は年末に5自治体へふるさと納税をし、律儀に申請書を全部そろえて1月上旬に発送しました。ところが2月に入って歯の治療で医療費が10万円を超えたことに気づき、医療費控除のために確定申告をすることにしたのです。確定申告書を作成する際、ふるさと納税の寄付金控除欄への記入をすっかり忘れ、医療費控除だけを申告して提出してしまいました。結果、確定申告をした時点で5自治体分のワンストップ特例はすべて無効になっているのに、確定申告書にはふるさと納税の控除が反映されていないという状態になり、寄付した5万円ぶんの控除が丸ごと消えてしまいました。気づいたのは翌年の住民税決定通知書を見たときで、想定より住民税が全く下がっていなかったことでようやく発覚したそうです。この場合、更正の請求という手続きで取り戻せる可能性はありますが、税務署に出向いて事情を説明し直す手間がかかります。確定申告をすると決めた瞬間に、その年のふるさと納税分は必ず寄付金控除の欄にまとめて書き込む。これを鉄則にしておくべきです。
【現場のリアル】マイナンバーカードの更新を忘れて申請が差し戻された話
もう一つよくあるのが、マイナンバーカードの有効期限切れです。ある人はワンストップ特例の申請書にマイナンバーカードのコピーを添付して郵送したのですが、実はカードの有効期限が寄付をした年の年末で切れていました。自治体側で本人確認書類として認められず、書類一式が差し戻しになったのです。差し戻しに気づいたのが1月8日で、慌てて更新済みの通知カードと運転免許証の組み合わせで再提出しましたが、1自治体分は1月10日必着に間に合いませんでした。マイナンバーカードやパスポートといった本人確認書類は、有効期限がふるさと納税の申請時点で切れていないか、申請書を書く前に確認しておくと防げるトラブルです。
ふるさと納税の手続きは別で済ませるとしても、会社に提出する年末調整の書類自体は避けて通れません。生命保険料控除の計算が合っているか不安、毎年同じ欄で手が止まる、そう感じている方には『書けた年末調整』が向いています。スマホで質問に答えていくだけで、複雑な控除額の計算も含めて自動で仕上がります。作成したデータはそのまま印刷して提出したり、オンラインで会社に提出したりできるので、手書きで書き直す手間からは解放されます。
まとめ
- ふるさと納税の控除は年末調整では処理できず、ワンストップ特例制度か確定申告のどちらかが必須(国税庁タックスアンサー No.1155)
- 確定申告不要な給与所得者で寄付先が5自治体以内なら、ワンストップ特例のほうが手続きは簡単(提出期限は翌年1月10日必着)
- 医療費控除や住宅ローン控除1年目など、他の理由で確定申告をする年は、ふるさと納税分も必ず寄付金控除としてまとめて申告する
- 確定申告をした時点でワンストップ特例の申請はすべて無効になる。ここを忘れると控除がどこにも反映されないまま終わる
寄付そのものより、この最後の申告手続きのほうが実はつまずきやすいところです。申請書の締切と、確定申告に切り替わった場合の書き直しさえ押さえておけば、余計な取りこぼしは防げます。