「会社から『年末調整はSmartHRで入力してください』と言われたが、他社のオフィスステーションやfreeeとは何が違うのか分からない」
「電子データで証明書を送ったのに、あとから『原本も提出してください』と言われて二度手間になった」
SmartHR、オフィスステーション、マネーフォワード クラウド給与、freee人事労務、ジンジャー(jinjer)労務。近年、年末調整をこの手のクラウドシステムで済ませる会社が急増していますが、システムによって細かな機能や対応形式に差があり、さらに電子化されたはずなのに一部の書類だけは紙の原本提出を求められる、という分かりにくさが残っています。
この記事では、主要5システムの機能面での違い、国税庁が定める電子的控除証明書のルール、そして電子化が進んでも原本の提出が必要になる書類の見分け方まで、公式情報と実際の現場の声を交えて整理しました。
1. 主要5システムに共通する仕組みと、システムごとの違い

SmartHR、オフィスステーション、マネーフォワード クラウド給与、freee人事労務、ジンジャー労務は、いずれも国税庁が提供する電子的控除証明書の仕組みを土台にしており、従業員がスマホやパソコンの画面で入力し、証明書データをアップロードして送信するという骨格は共通しています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「年末調整手続の電子化の概要・メリット」のページでは、次のように案内されています。
『年末調整手続を電子化することで、従業員は保険会社や金融機関などから控除証明書等を電子データで受け取り、国税庁が無償で提供する年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)にその電子データを取り込むことで、控除額の計算を自動化した申告書データを作成し、控除証明書データとあわせて勤務先へ提出できるようになる』
出典:国税庁「年末調整手続の電子化の概要・メリット」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho_01.htm
1-1. 5システムの機能面での違い
各サービスとも入力画面のデザインや招待方法は異なりますが、電子データのアップロードとスマホ対応という基本機能は共通しています。
| システム名 | 入力画面の特徴 | スマホ対応 | 証明書アップロード形式 |
|---|---|---|---|
| SmartHR | 質問に一つずつ答えていく一問一答形式 | 対応(ブラウザ・アプリ) | 電子データ(PDF/XML)または画像 |
| オフィスステーション年末調整 | 申告書の様式に近い一覧入力形式 | 対応(ブラウザ) | 電子データ(PDF/XML)または画像 |
| マネーフォワード クラウド給与 | マイナポータル連携機能が充実 | 対応(ブラウザ) | 電子データ(PDF/XML)または画像 |
| freee人事労務 | 給与明細アプリと同じ画面から申請可能 | 対応(アプリ) | 電子データ(PDF/XML)または画像 |
| ジンジャー(jinjer)労務 | スマホ操作を前提にしたシンプルな画面構成 | 対応(ブラウザ) | 電子データ(PDF/XML)または画像 |
いずれのシステムも、対応している保険会社から発行された電子的控除証明書であれば、そのままアップロードするだけで金額の転記や計算が自動化されます。画面の見た目や操作の流れがシステムごとに異なるだけで、税法上の扱いや控除の要件そのものは、どのシステムを使っても変わりません。会社から案内されたシステムの名前が分からない、招待メールが見当たらないといった場合は、システム名を検索する前に、まず総務・人事の担当者へ確認するのが結局は一番早い解決策です。
2. 電子的控除証明書、どの保険会社が対応しているかの確認方法
電子データでの証明書提出は、契約している保険会社や金融機関が「電子的控除証明書」の発行に対応している場合に限られ、対応の有無は国税庁が一覧で公表しています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「控除証明書等の電子的交付について」のページでは、保険会社や金融機関などが発行する各種控除証明書等について、電子データ形式での交付が可能になっていることが案内されています。対象となる証明書には、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、寄附金控除証明書、住宅ローンの年末残高等証明書、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書などが含まれます。
出典:国税庁「控除証明書等の電子的交付について」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo.htm
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「保険料に係る電子控除証明書の発行主体一覧」のページには、電子的控除証明書の発行に対応している生命保険会社・損害保険会社の一覧が掲載されています。大手を含む多くの保険会社が対応を進めている一方で、対応していない会社も含まれるため、自分の契約している保険会社が対応しているかどうかは、この一覧か契約先のマイページ等で確認する必要があります。
出典:国税庁「保険料に係る電子控除証明書の発行主体一覧」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho_06.htm
【国税庁の公式見解・1次情報】
電子データか紙かという提出形式の違いとは別に、そもそも各控除の対象・要件・控除額の計算方法は、国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)で個別に定められています。生命保険料控除は所得税法第76条に基づき「タックスアンサーNo.1140 生命保険料控除」、地震保険料控除は同法第77条に基づき「タックスアンサーNo.1145 地震保険料控除」、国民年金保険料を含む社会保険料控除は同法第74条に基づき「タックスアンサーNo.1130 社会保険料控除」、寄附金控除は同法第78条に基づき「タックスアンサーNo.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」で、それぞれ必要書類と控除上限額が案内されています。
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm
出典:国税庁「No.1130 社会保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm
出典:国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm
2-1. マイナポータル連携を使うと複数の証明書を一度に取得できる
マイナンバーカードとマイナポータルを連携させれば、複数の保険会社・金融機関の証明書データを、契約先ごとに個別ログインせずまとめて受け取れます。
マイナポータル連携に対応している発行主体は、生命保険会社だけでなく、国民年金保険料の控除証明書を発行する日本年金機構や、住宅ローンの年末残高等証明書を発行する金融機関にも広がっています。対応している発行主体の一覧も国税庁のサイトで公開されているため、複数の保険に加入している人ほど、個別のマイページに一つずつログインするより、マイナポータル連携を先に設定しておいたほうが手間が少なくて済みます。
出典:国税庁「マイナポータル連携可能な控除証明書等発行主体一覧」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/list.htm
#### 【現場のリアル】マイナポータル連携の設定を後回しにして、結局5社分のログインを繰り返した話
生命保険2社、地震保険1社、iDeCoの運営管理機関1社と、契約が細かく分かれている40代の会社員から聞いた話です。会社からマイナポータル連携についての案内メールが届いていたものの、「あとで設定すればいい」と後回しにしたまま年末調整の時期を迎え、結局それぞれの契約先のマイページに個別のIDとパスワードでログインし、証明書データを一つずつダウンロードする羽目になったそうです。4社目のログイン画面でパスワードを忘れていることに気づき、再発行の手続きに追加で20分ほど取られたといいます。翌年は年始のうちにマイナポータルとの連携設定を済ませておいたところ、次の年末調整では一度のマイナポータル操作で複数の証明書をまとめて受け取れ、「去年の自分に、先に連携だけでも済ませておけと言いたい」と振り返っていました。マイナポータル連携は年末調整の直前ではなく、契約している保険が2件以上ある人ほど、早めに済ませておく価値があります。
3. 【要注意】電子化されても原本提出が必要な書類の見分け方

電子データで証明書をアップロードしても、国税庁が提供する「QRコード付証明書等作成システム」の対象は生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書・寄附金の受領証明書の3種類に限られ、この3種類以外は別の方法で紙の原本を用意する必要があります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁の「QRコード付証明書等作成システムについてよくある質問」では、QRコード付控除証明書等について次のように説明されています。
『保険会社等から交付された電子的控除証明書を利用して「QRコード付証明書等作成システム」により作成したQRコード付の控除証明書等(PDFファイル)を出力した書面』
出典:国税庁「QRコード付控除証明書等とは何ですか。」 https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/qa-cps/01.htm
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁の「QRコード付証明書等作成システム」に関するQ&Aでは、対象となる控除証明書等について次のように説明されています。
『従来、保険会社等や寄附金の受領者から契約者や寄附金の支払者に書面で交付されていた生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書及び寄附金の受領証明書等について、証明書に記載すべき内容を記録したデータに発行元の電子証明書を付与して発行される控除証明書等データ』
出典:国税庁「電子的控除証明書等とは何ですか。」 https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/qa-cps/02.htm
3-1. QRコード付証明書等作成システムで紙に変換できる証明書は3種類だけ
対応するのは生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書・寄附金の受領証明書の3種類のみで、国民年金保険料控除証明書と住宅ローンの年末残高等証明書はこのシステムの対象外です。次の2種類の証明書は、同じ「電子的控除証明書」であっても、QRコード付証明書等作成システムでは紙に変換できません。
| 証明書の種類 | 電子データでの取得可否 | 紙への変換方法 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除証明書 | 可能(保険会社のマイページ等) | QRコード付証明書等作成システムでPDF変換して印刷 |
| 地震保険料控除証明書 | 可能(保険会社のマイページ等) | QRコード付証明書等作成システムでPDF変換して印刷 |
| 寄附金の受領証明書 | 可能(発行団体のサイト等) | QRコード付証明書等作成システムでPDF変換して印刷 |
| 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 | 可能(ねんきんネット) | このシステムの対象外。ねんきんネットで正式な証明書として再交付申請が必要 |
| 住宅ローンの年末残高等証明書 | 金融機関により異なる | このシステムの対象外。金融機関の案内、または税務署発行の申告書と合わせて原本提出 |
会社のクラウドシステムが電子データでの提出にそもそも対応していない場合は、生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書・寄附金の受領証明書についても紙で出す必要が生じます。逆に、会社側が電子データでの提出に対応していても、国民年金保険料控除証明書と住宅ローンの年末残高等証明書だけは別ルートでの準備が必要になる、という点が電子化された年末調整でつまずきやすいポイントです。
#### 【現場のリアル】生命保険だけ電子化されたと思い込み、国民年金の証明書を出し忘れた話
個人事業主から会社員に転職し、国民年金から厚生年金への切り替えが年の途中であった30代男性の話です。会社が電子年末調整のシステムを導入していたため、生命保険料控除証明書をマイページからダウンロードしてアップロードし、「これで証明書関係は全部終わった」とすっかり安心していたそうです。ところが後日、経理担当者から「転職前に払っていた国民年金保険料の控除証明書が届いていませんが」と連絡が入り、そこで初めて、電子的控除証明書に対応している証明書の種類が保険ごとに違うことを知ったといいます。ねんきんネットで再交付を申請し、数日後に届いた証明書を追加で提出して事なきを得たものの、「同じ電子データだから全部同じ扱いだと思い込んでいた」と話していました。複数の保険や年金が絡む年は、証明書の種類ごとに提出ルールが異なる可能性がある、という前提で早めに確認しておくと、こうした出し忘れを防げます。
4. 前年からの乗り換えでシステムが変わった時の注意点
会社が年末調整のシステムを別サービスに乗り換えた年は、前年の入力データがそのまま引き継がれないため、扶養家族や保険の情報を改めて手入力する必要があります。
クラウド年末調整システムの多くは、同じシステムを継続して使っている限り、前年の入力内容が初期値として画面に表示される仕組みを備えています。しかし、会社がSmartHRからオフィスステーションへ、あるいはfreeeからジンジャーへといった形で別サービスに乗り換えた場合、新しいシステムには前年のデータが存在しないため、初めて年末調整をするときと同じように、扶養家族の氏名や保険契約の情報をすべて入力し直す必要があります。
4-1. 移行の年に入力し直しが必要になる主な項目
扶養家族の氏名・生年月日・マイナンバー、保険契約者名や保険の種類、前年契約していた住宅ローンの残高情報など、通常なら前年データが自動反映される項目のほぼすべてが対象になります。
| 入力し直しが必要な項目 | 通常年の状態 | システム移行年の状態 |
|---|---|---|
| 扶養家族の氏名・生年月日 | 前年データが自動表示 | 空欄、手入力が必要 |
| 保険契約者名・保険の種類 | 前年データが自動表示 | 空欄、手入力が必要 |
| 住宅ローンの契約情報 | 前年データが自動表示 | 空欄、手入力が必要 |
| 証明書データのアップロード | 毎年必須(変わらず) | 毎年必須(変わらず) |
#### 【現場のリアル】システム移行の年だけ入力項目が増えて戸惑った話
同じ会社に5年勤めているパート従業員の話です。それまで使っていたシステムから別のクラウドサービスに切り替わった年、いつものように「前年のデータが自動で入っているはず」と軽い気持ちで画面を開いたところ、扶養家族の欄も保険の欄もすべて空欄になっていて驚いたそうです。総務に問い合わせたところ、「今年からシステムを変更したので、お手数ですが今年だけは一から入力をお願いします」と説明を受け、結局、去年の源泉徴収票の控えを引っ張り出しながら家族の生年月日や保険契約の内容を入力し直したといいます。「毎年同じように数分で終わると思っていたら、今年だけ30分近くかかった」と話していました。会社から年末調整のシステムが変わったという案内があった年は、前年より入力に時間がかかることを見込んで、余裕を持って着手しておくと慌てずに済みます。
5. よくある質問

電子年末調整の窓口、証明書の対象範囲、マイナポータル連携の仕組み、スマホ対応の可否について、現場で特に質問が多い4点をまとめました。
5-1. 電子年末調整でよく聞かれる4つの質問
質問が集中するのは、会社への問い合わせ先、証明書の対象範囲、マイナポータル連携でできること、システムのスマホ対応可否の4点です。Q1からQ4で順に答えます。
#### Q1. 会社が案内してきたシステムの使い方が分かりません。どこに聞けばいいですか。
まずは会社の総務・人事の担当者に確認してください。SmartHR、オフィスステーション、マネーフォワード、freee、ジンジャーのいずれも、操作方法についての問い合わせ先は導入している会社側が窓口になっており、システムの提供会社に従業員が直接問い合わせても対応してもらえないのが一般的です。
#### Q2. 生命保険料控除証明書は電子データで提出したのに、なぜ国民年金の証明書は紙で出せと言われるのですか。
国税庁のQRコード付証明書等作成システムで紙に変換できる証明書は、生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書・寄附金の受領証明書の3種類に限られており、国民年金保険料控除証明書はこの対象に含まれていません。国民年金の証明書を電子的に取得したい場合は、ねんきんネットからの再交付申請という別の手続きが必要です。
#### Q3. マイナポータル連携をすると、控除証明書は自動で会社に提出されますか。
されません。マイナポータル連携は、複数の保険会社や金融機関の証明書データを一つの操作でまとめて受け取るための仕組みであり、受け取ったデータを会社のクラウドシステムにアップロードして送信する操作は、従業員自身が別途行う必要があります。
#### Q4. 使っているシステムがスマホに対応していない機能はありますか。
各社のクラウド年末調整システム自体はスマホでの入力・アップロードに対応していますが、電子データを紙のQRコード付証明書に変換する国税庁の「QRコード付証明書等作成システム」はパソコン専用で、スマートフォンでは利用できません。紙の原本提出が必要な場面でパソコンが手元にない場合は、会社の共用パソコンを借りるなどの代替手段を検討してください。
まとめ、システムが変わっても確認すべき点は同じ
SmartHR、オフィスステーション、マネーフォワード クラウド給与、freee人事労務、ジンジャー労務は、画面のデザインや招待方法こそ違うものの、国税庁が定める電子的控除証明書の仕組みを土台にしているという点は共通しています。電子化が進んでも、国税庁のQRコード付証明書等作成システムで紙に変換できるのは生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書・寄附金の受領証明書の3種類に限られ、国民年金保険料控除証明書と住宅ローンの年末残高等証明書はそれぞれ別ルートでの準備が必要です。会社のシステムが変わった年は前年データが引き継がれない点も含めて、どのシステムを使う場合でも「この証明書は電子データで完結するのか、それとも別途原本が必要なのか」を一つずつ確認する姿勢が欠かせません。
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