11月に年末調整の書類を書きながら、「そういえば今年、うちの子はバイトをどれくらい稼いだんだったか」とふと手が止まる親御さんは多いはずです。扶養控除等申告書の「特定扶養親族」の欄に子どもの名前を書くべきかどうか、去年までと同じでいいのか、そこで迷う。
「103万円を超えたら扶養から外れる」という話は多くの人が耳にしたことがあると思いますが、この数字は令和7年分の税制改正で大きく変わりました。今も103万円のまま止まっている情報を見て慌てて計算し直す人が今年は特に多いはずです。子どものアルバイト収入がいくらを超えると、親の税金にどう影響するのか、最新のルールに沿って順を追って確認していきます。
1. 「103万円の壁」は令和7年分から「123万円」に変わった

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1410 給与所得控除」では、給与所得控除の最低保障額について定められています。令和7年分以後、この最低保障額は55万円から65万円に引き上げられました。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1410「給与所得控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
あわせて国税庁タックスアンサー「No.1199 基礎控除」では、令和7年分以後の基礎控除額(合計所得金額2,350万円以下の場合)が48万円から58万円に引き上げられたことが説明されています。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1199「基礎控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
令和6年分までは、給与所得控除の最低保障額55万円と基礎控除48万円を足した103万円が、子どもが「扶養に入れるかどうか」の分かれ目でした。これが世に言う「103万円の壁」です。
令和7年分からは、この2つの控除がそれぞれ引き上げられ、65万円+58万円=123万円が新しい基準になりました。ネット上や親戚から聞く話がまだ「103万円」で止まっていることも多く、去年の感覚のまま計算すると20万円分ズレることになります。今年の年末調整の書類を書く前に、まずこの数字が変わったことを頭に入れておいてください。
【現場のリアル】去年の感覚のまま「103万」で計算してヒヤッとした話
ある年、ちょうど税制改正の初年度に扶養控除等申告書を書いていた父親が、子どものアルバイト収入を103万円ちょうどで計算し、「ギリギリ超えたから今年は扶養から外そう」と申告書の特定扶養親族の欄を空欄にして提出したそうです。ところが後日、会社の経理担当から「今年から基準が123万円に変わっているので、お子さんの収入なら扶養控除の対象になりますよ」と指摘され、慌てて訂正の申告書を出し直すことになりました。63万円分の控除を一年分丸ごと取り損ねるところだったと、本人は後になって青ざめていたといいます。逆のパターンもあり、123万円まで大丈夫だろうと油断して188万円近くまで子どもが稼いでいたことに気づかず、年明けに住民税の通知を見て初めて扶養から完全に外れていた事実を知った家庭もあります。数字が変わった年は、思い込みでの計算がいちばん危険です。
2. 特定扶養親族の控除額(63万円)の根拠
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1180 扶養控除」によると、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日時点で19歳以上23歳未満の人は「特定扶養親族」に区分され、控除額は63万円と定められています。一般の控除対象扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満)の控除額38万円と比べて、25万円上乗せされた金額です。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1180「扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
大学生の年代(多くは19〜22歳)がここに該当します。学費や仕送りなど負担が重い時期だからこそ、通常の扶養控除より控除額が大きく設定されているわけです。この63万円という数字を軸に、子どもの収入がいくらまでなら親がこの控除を丸ごと受けられるかを考えていきます。
3. 新設「特定親族特別控除」で壁は崖から坂道になった

103万円が123万円に上がっただけなら、境目を1円でも超えると控除がゼロに落ちる「崖」という構造は変わりません。しかし令和7年分からは、この崖を緩やかな坂道に変える新しい控除がもうひとつ追加されました。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1177 特定親族特別控除」によると、居住者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円を超え123万円以下(給与収入のみの場合はおおむね123万円超188万円以下)の場合、特定親族特別控除として、その所得金額に応じて最高63万円までの控除を受けられます。この規定は令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されます。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1177「特定親族特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1177.htm
具体的には次のような段階になっています。
- 給与収入123万円以下 → 扶養控除(特定扶養親族)として満額63万円
- 給与収入123万円超〜150万円以下 → 特定親族特別控除として満額63万円(実質、扶養控除と同じ金額を維持)
- 給与収入150万円超〜188万円以下 → 特定親族特別控除の額が収入に応じて段階的に減っていく
- 給与収入188万円超 → 控除ゼロ(ここで初めて完全に扶養から外れる)
つまり「103万円を1円でも超えたら即アウト」だった時代とは違い、今は188万円まで何らかの控除が残るゆるやかな仕組みになっています。ただし123万円を超えた場合、会社に自動で反映されるわけではありません。年末調整で新設された「給与所得者の特定親族特別控除申告書」に子どもの見込み収入を記入して提出する必要があります。扶養控除等申告書とは別の用紙になっている会社も多いので、総務から渡された書類一式の中に見慣れない紙が増えていたら、それがこの申告書です。
4. 親の税金は具体的にいくらの差になる?
控除がゼロになった場合、親の税負担がどれくらい増えるかの目安は次のとおりです。特定親族特別控除が段階的に減っていく途中の金額は世帯の所得税率によって変わるため、ここでは「188万円を超えて控除が完全にゼロになったケース」で試算しています。
▼ 親の税金負担アップの目安(子どもの給与収入が188万円を超え、控除がゼロになった場合)
| 親の所得税率の目安 | 所得税の増加額 | 住民税の増加額 | 親の負担増(合計) |
|---|---|---|---|
| 5%(年収約300〜500万円) | 約31,500円 | 約45,000円 | 約76,500円 |
| 10%(年収約500〜700万円) | 約63,000円 | 約45,000円 | 約108,000円 |
| 20%(年収約700〜900万円) | 約126,000円 | 約45,000円 | 約171,000円 |
※住民税は控除額45万円(特定扶養親族の住民税控除額)に税率10%を掛けて計算した目安です。実際の金額は世帯の所得や他の控除の有無によって変わります。
123万円を少し超えたくらいでは、この表の金額がそのまま親にのしかかるわけではありません。150万円までは扶養控除と同じ控除が維持され、150万円を超えてからは段階的に目減りしていく計算になります。「うちの子は135万円くらい稼いだらしい」という場合、控除が満額残っているのか一部減っているのか、188万円までの間のどのあたりに位置するのかを、まず給与明細の総支給額で確認してください。
【年末調整で悩まないためのポイント】
「今年から基準が変わったと聞いたけれど、うちの子はどの控除に当てはまるのか申告書を見ても分からない」という声は、今年の年末調整の現場でよく聞かれます。特定親族特別控除申告書は数字を当てはめて計算する欄が複雑で、手書きだと計算ミスも起きやすいところです。
こうした複雑な条件判定や控除額の計算も、『書けた年末調整』ならスマホで質問に答えるだけで完了します。子どもの見込み収入を入力すれば、扶養控除に該当するのか特定親族特別控除の段階的な金額になるのかを自動で判定し、そのままオンラインで会社に提出(または印刷)できます。
5. 判定で気をつける3つのポイント

年末調整の時期が近づいたら、まず子どもに「今年のバイト代、全部でいくらになりそう」と確認することから始めます。その際に気をつけたいのが次の3点です。
1. 通勤手当は含めない
アルバイト先から支給される交通費(通勤手当)は、一定額(月15万円)までは非課税とされているため、給与収入の判定には含めません。時給や日給で計算された給与のみを合計してください。
2. 掛け持ちしている場合はすべて合算する
居酒屋と塾講師など、2つ以上のアルバイトを掛け持ちしている場合は、すべてのバイト先の収入を合計した金額で判定します。「1つのバイト先では123万円を超えていないから大丈夫」ではなく、必ず全部の源泉徴収票を突き合わせて合算してください。
3. 対象になるのは「1月〜12月に支払われた」金額
その年の1月1日から12月31日の間に実際に支払われた(振り込まれた)金額が対象です。12月に働いた分の給料が翌年1月10日に振り込まれる場合、その分は翌年の収入としてカウントされます。年末に集中してシフトを入れる子どもは、この振込日のズレで意外と収入が想定より少なくなっていることもあります。
【現場のリアル】年明けに源泉徴収票を見て青くなった話
年末調整の書類を出したあと、冬休みに子どもがシフトを詰めて働き、結果的に給与収入が188万円を超えてしまっていたケースがありました。母親は年明けに子どもから源泉徴収票を見せてもらって初めてその事実に気づき、「もう会社に出した後なのにどうしよう」と青くなったそうです。幸い、その会社では1月末までなら年末調整のやり直しを受け付けていたため、総務に事情を説明して特定親族特別控除申告書を取り下げる形で再提出し、事なきを得ました。もし会社の締め処理がすでに終わっていた場合は、親自身が翌年の確定申告で修正することになっていたはずで、そちらは手続きの手間も税務署とのやり取りも一段階面倒になります。
6. 年末調整の後に「実は超えていた」と判明したら
年末調整の書類を出した後になって、子どもの収入が想定より多かったと分かることは珍しくありません。この場合、放置するのがいちばんよくない選択です。放置すると、後日税務署から親の勤務先に連絡が入り、過去にさかのぼって税金の追加徴収を受ける可能性があります。
年末調整のやり直し期間(会社によりますが、おおむね翌年1月末頃まで)であれば、急いで勤務先の担当部署に連絡し、扶養控除等申告書や特定親族特別控除申告書を訂正してもらいましょう。会社の年末調整の手続きがすでに締め切られている場合は、親自身が翌年3月15日までの確定申告で扶養控除を訂正する必要があります。
まとめ
大学生の子どものアルバイト収入は、令和7年分の税制改正で判定の基準が大きく変わりました。
- 「103万円の壁」は令和7年分から「123万円」に引き上げられた(国税庁タックスアンサー No.1410、No.1199)
- 特定扶養親族(19〜22歳)の扶養控除額は63万円(国税庁タックスアンサー No.1180)
- 123万円を超えても、188万円までは「特定親族特別控除」で段階的に控除が残る(国税庁タックスアンサー No.1177)
- 通勤手当は含めない、掛け持ち分は合算、対象は1月〜12月に支払われた金額
制度が変わった年は、去年までの感覚が一番の落とし穴になります。子どもの収入を給与明細や源泉徴収票で正確に把握したうえで、複雑な計算や書類作成は『書けた年末調整』のような便利なツールを活用し、迷わず正確に手続きを進めましょう。