「マイホームを買って住宅ローン控除を受けたいけれど、1年目と2年目で手続きが違うと聞いた」
「税務署から分厚い封筒で複数年分の申告書が届いたけれど、今年はどの1枚を出せばいいのか分からない」
「銀行から届く年末残高証明書と、税務署の用紙をどう組み合わせればいいのか」
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、マイホームを購入した年に一度だけ自分で確定申告をすれば、2年目以降は勤務先の年末調整で毎年自動的に控除が受けられる制度です。ただしこの「1年目だけ別ルート」という仕組みと、税務署から一括で届く複数年分の証明書の扱いに戸惑う人は少なくありません。ここでは国税庁の一次情報にもとづいて、1年目と2年目以降の違い、税務署から届く書類の正体、年末調整での記入方法までを整理します。
1. 1年目は確定申告、2年目以降は年末調整というルールの根拠

国税庁タックスアンサー「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」では、次のように定められています。
controlを受ける最初の年分は、必要事項を記載した確定申告書に一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。そのうえで、給与所得者については、2年目以後の年分は年末調整でこの特別控除の適用を受けることができるとされています。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-1.htm
つまり1年目だけは、会社の年末調整では完結せず、翌年の2月16日から3月15日までの確定申告期間中に、自分で税務署へ申告書を提出する必要があります。この年に登記事項証明書や売買契約書の写し、銀行の年末残高証明書などを添付して申告し、税務署の審査を経て初めて控除額が確定します。2年目以降は、この確定申告で認められた内容をもとに、年末調整の枠組みの中で処理できるようになります。
2. 控除率と借入限度額。住宅の種類によって上限が変わる
控除額の計算式は住宅の種類にかかわらず一律で、年末残高等に0.7パーセントを掛けた金額です。ただし、いくらでも控除対象になるわけではなく、住宅の環境性能の区分と入居した年によって、対象になる借入残高の上限(借入限度額)が次のように変わります。
| 住宅の区分 | 令和4年・5年入居の借入限度額 | 令和6年・7年入居の借入限度額 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円(特例対象個人は5,000万円) | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円(特例対象個人は4,500万円) | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円(特例対象個人は4,000万円) | 13年 |
| その他の住宅 | 3,000万円 | 原則0円(令和5年末までに建築確認を受けた住宅等は2,000万円) | 13年(その他の住宅の経過措置は10年) |
出典:国税庁 タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」の借入限度額の表にもとづく。特例対象個人とは、19歳未満の扶養親族がいる世帯や、本人または配偶者のいずれかが40歳未満の世帯を指します。
借入限度額に0.7パーセントを掛けて13年分を単純に足すと、省エネ基準適合住宅(令和4・5年入居、限度額4,000万円)であれば理論上の最大控除額はおよそ364万円になります。ただし実際にはローンの残高は返済とともに毎年減っていくため、この金額をそのまま13年間受け取れるわけではありません。あくまで上限を機械的に掛け合わせた理論値として見てください。
3. 税務署から届く書類の正体。何年分が、いつ届くのか

1年目の確定申告が受理されると、その年の秋、税務署からその年の残りの控除期間分の申告書がまとめて郵送されてきます。中に入っているのが「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書 兼 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」です。控除期間が13年であれば、2年目から13年目までの残り12枚が一冊にまとまった形で届きます。
1枚ごとに「令和〇年分」という年号が右上あたりに印字されており、その年の年末調整ではその年号の1枚だけを切り離して会社に提出します。残りの用紙は、翌年以降も毎年1枚ずつ使うことになるので、まとめて保管しておく必要があります。用紙の下段には、家屋の床面積や取得対価の額など、1年目の確定申告で確定した数字がすでに印字済みになっており、記入者が毎年これらを一から書き直す必要はありません。
会社に提出する組み合わせは、この税務署の用紙1枚と、住宅ローンを借りている金融機関から毎年10月前後に郵送される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」のハガキの2点です。年末残高証明書は原本の提出を求められるのが通例で、コピーでは受け付けてもらえません。
現場のリアル。分厚い封筒を開けて固まった30代の会社員
都内で建売住宅を購入した30代のシステムエンジニアの男性は、確定申告を終えた年の10月、税務署から届いたA4サイズの茶封筒を開けて手が止まったといいます。中から出てきたのは、ホチキス留めされた12枚もの申告書の束でした。1枚1枚がほぼ同じ見た目で、どれが今年提出すべき用紙なのか一目では分からず、結局全ページをめくって「令和何年分」という右上の小さな印字を1枚ずつ確認する羽目になったそうです。会社の年末調整の提出期限は12月上旬に設定されていることが多く、彼はこの束を10月に受け取ったあと、封筒ごと引き出しにしまい込んでしまい、期限の1週間前になってようやく探し出す事態になりました。本人いわく「1年目の確定申告だけ乗り越えれば終わりだと思っていたので、まさか毎年この束から1枚探し出す作業が13年続くとは思っていなかった」とのことです。
現場のリアル。年号を1枚間違えて総務に突き返された気まずさ
戸建てを新築した40代の会社員の女性は、2年目の年末調整で、束になっていた申告書の中から目分量で1枚を抜き取り、会社に提出しました。数日後、経理担当者から「これは来年分の用紙です。今年提出していただくのは令和何年分と書かれた別の1枚になります」と指摘され、書類一式を突き返されてしまいます。よく見ると、彼女が提出した用紙には翌年の年号が印字されており、束の中で1枚ずれた位置のものを取り出していたのが原因でした。総務担当者の話では、複数年分がホチキスで綴じられているために、上から数枚目のものと勘違いして提出する人が毎年何人か出るとのことです。それ以来彼女は、束を受け取った時点で年号ごとに付箋を貼り、今年提出する1枚だけをクリアファイルに分けて保管するようにしたと話していました。
4. 年末調整「住宅借入金等特別控除申告書」の記入手順
税務署から届いた用紙のうち、空欄になっているのは主に次の項目です。銀行から届いた年末残高証明書のハガキを手元に置きながら埋めていきます。
| 記入欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 新築、購入又は増改築等に係る借入金等の年末残高 | 銀行の年末残高証明書に記載された金額をそのまま転記 |
| 住宅借入金等の年末残高(合計) | 上記と同じ金額(複数の借入がある場合は合計) |
| 家屋や土地等の取得対価の額 | 用紙の下段にあらかじめ印字されている金額(1年目の申告内容にもとづく) |
| 対象額 | 年末残高と取得対価の額を比較し、少ない方の金額 |
| 住宅借入金等特別控除額 | 対象額に控除率0.7パーセントを掛けた金額(100円未満切り捨て) |
たとえば年末残高が3,500万円、家屋の取得対価が4,200万円だった場合、少ない方である3,500万円が対象額になります。これに0.7パーセントを掛けると245,000円が、その年の住宅借入金等特別控除額です。この金額を用紙の該当欄に記入し、会社の年末調整担当へ提出すれば、その年の所得税から自動的に差し引かれます。
5. ペアローン・連帯債務で夫婦それぞれが控除を受ける場合

夫婦でペアローンや連帯債務の形で住宅ローンを組んでいる場合、金融機関からは夫宛て・妻宛てそれぞれの名義で年末残高証明書が届きます。夫は夫宛ての証明書の金額を、妻は妻宛ての証明書の金額を、それぞれ自分の勤務先の年末調整で申告します。1年目の確定申告についても夫婦それぞれが別々に手続きを行う必要があり、どちらか一方だけが申告すればよいわけではありません。夫婦それぞれの持分割合に応じて控除を受けられるため、単独名義よりも世帯全体の控除額を増やせる仕組みになっています。
6. 所得税から引ききれなかった分は住民税から差し引かれる
住宅ローン控除の額が、その年の所得税額を上回ってしまうケースもあります。この場合、引ききれなかった残りの金額は、翌年度の住民税から自動的に差し引かれます。個人住民税におけるこの控除の上限額について、総務省の案内では、令和4年以降に居住した場合、所得税の課税総所得金額等の5パーセント(上限97,500円)とされています。
出典:総務省「所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/090929.html
この住民税側の減税は、会社が年末調整の内容を市区町村へ給与支払報告書として連携することで自動的に処理されるため、従業員本人が住民税用に別途申請する必要はありません。翌年6月以降の給与から天引きされる住民税額が、この分だけ軽減された金額になっているかを確認すれば十分です。
7. よくある質問
税務署から届いた複数年分の申告書を紛失してしまいました
国税庁「A1-39 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請手続」にもとづき、所轄の税務署へ「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書」を提出すれば、残りの年数分が再交付されます。e-Taxを利用した電子交付にも対応しています。
出典:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/36.htm
9年分の書類をどこに保管すればいいか分からず、引き出しの奥に埋もれさせてしまいました
税務署から届く証明書の束は、控除期間が終わるまで手元に置いておく必要がある書類です。実際、地方の工務店で注文住宅を建てた50代の男性は、9年分の申告書を受け取った当初は「毎年使うのだから」とリビングの引き出しに入れていましたが、数年後に子どもの学用品などで引き出しがいっぱいになり、束がどこにあるか分からなくなってしまったといいます。結局その年は年末調整に間に合わず、確定申告の期間中に自分で税務署へ出向いて手続きをやり直すことになりました。控除証明書は毎年の給与明細や源泉徴収票と同じ場所にまとめて保管しておくと、年末調整のたびに探し回らずに済みます。
年の途中で住宅ローンを繰り上げ返済した場合、控除額はどうなりますか
その年の年末時点でのローン残高が計算の基準になります。繰り上げ返済によって年末残高が減れば、その年の控除額もそれに応じて少なくなります。年末残高証明書には繰り上げ返済後の金額が反映されているため、届いたハガキの金額をそのまま転記すれば問題ありません。
まとめ
住宅ローン控除は、1年目だけ自分で確定申告を行い、2年目以降は勤務先の年末調整で完結する制度です(国税庁タックスアンサー No.1211-1)。税務署から届く複数年分の証明書の束からは、その年の年号が印字された1枚だけを取り出して提出し、残りは翌年以降のために保管しておく必要があります。借入限度額は住宅の環境性能と入居年によって細かく分かれており、控除率は一律0.7パーセントです。所得税から引ききれなかった分は住民税から自動的に減税されるため、控除の恩恵を毎年もれなく受けるには、届いた用紙の年号を1枚ずつ確認する手間を惜しまないことに尽きます。
証明書に印字された家屋の取得対価や、銀行から届く年末残高証明書の数字を転記して控除額を計算する作業は、年号違いの用紙を取り違えるとやり直しになる分、思った以上に神経を使います。『書けた年末調整』では、証明書とハガキの数字を入力するだけで対象額と控除額を自動計算し、申告書の該当欄に反映できるようになっています。