「自宅の地震保険、年末調整でいくら戻ってくるのか分からない」
「賃貸マンションで加入している火災保険は、地震保険料控除の対象になるのか」
「昔から続けている積立型の火災保険は、今でも控除を受けられるのか」
年末調整で提出する「給与所得者の保険料控除申告書」には、生命保険料控除の欄の隣に地震保険料控除の記入欄があります。秋に届く控除証明書のハガキをそのまま捨ててしまったり、火災保険と地震保険の金額を混同して書いてしまったりすると、本来受けられるはずの控除を逃すことになります。ここでは国税庁の一次情報にもとづいて、控除額の計算方法から賃貸住まいでの扱い、申告書の書き方までを整理します。
1. 地震保険料控除の控除額と計算ルール

国税庁タックスアンサー「No.1145 地震保険料控除」では、次のように定められています。
『地震保険料控除の金額は、支払った地震保険料の金額により異なり、その年に支払った地震保険料の合計額が5万円以下である場合には、その支払った金額の全額が控除額となり、5万円を超える場合には、一律5万円が控除額となります』
出典:国税庁 タックスアンサー No.1145「地震保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm
| 年間の支払保険料の額 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|
| 5万円以下 | 支払保険料の全額 | 支払保険料 × 1/2(上限2.5万円) |
| 5万円超 | 一律5万円 | 一律2.5万円 |
生命保険料控除は保険料の一部しか控除されない計算式になっているのに対し、地震保険料控除は5万円までであれば支払った金額がそのまま所得から差し引かれる仕組みです。たとえば年間35,000円の地震保険料を払っている場合、控除額はそのまま35,000円になります。年収600万円で税率がおよそ20パーセントの人であれば、所得税・住民税を合わせて年間7,000円前後の税負担が軽くなる計算です。
2. 火災保険は対象外。地震保険部分だけが控除される理由
年末調整でよくある勘違いが、控除証明書ハガキに書かれた保険料の合計額を、そのまま地震保険料の欄に転記してしまうことです。
平成18年度の税制改正により、通常の火災保険料に対する控除は廃止されました。現在控除の対象になるのは、地震・噴火・津波による損害を補償する地震保険部分の掛金だけです。国税庁タックスアンサー「No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約」では、控除対象となる契約の要件が示されています。出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1146.htm
| 保険料の内訳(ハガキの記載例) | 控除の扱い |
|---|---|
| 年間火災保険料 40,000円 | 控除対象外 |
| 年間地震保険料 18,000円 | 全額が控除対象 |
損害保険会社から届く地震保険料控除証明書には、控除の対象となる地震保険料の金額が明記されています。申告書に書き写すのは、この地震保険料の金額だけです。
現場のリアル。ハガキの合計額をそのまま書いてしまった会社員
ある40代の会社員は、保険会社から届いたハガキに記載された年間保険料の合計42,000円という数字を、そのまま保険料控除申告書の地震保険料の欄に書いて提出しました。数日後、総務担当者から「地震保険料の欄の金額が、証明書に記載されている地震保険料の金額と合っていません」と指摘を受けます。よく見るとハガキには「地震保険料」と「積立保険料(満期返戻金部分)」が別々に記載されており、地震保険料控除の対象になるのは18,000円だけでした。残りの24,000円は積立部分にあたる金額で、控除の対象外だったのです。書き直し自体は数分で終わりましたが、担当者によると、ハガキの合計額をそのまま転記してしまう人は毎年一定数いるといいます。ハガキに複数の金額が並んでいる場合は、地震保険料と明記された行だけを拾うことが必要です。
3. 賃貸住まいの一人暮らしでも地震保険料控除を受けられるか

賃貸住宅の契約時に不動産会社を通じて加入した火災保険(賃貸入居者総合保険)に入っている人も多いはずです。
この保険のプランに、家財(家具・家電・衣類等)の地震保険が組み込まれている場合は、その地震保険部分について年末調整で控除を受けられます。持ち家か賃貸かは要件になっておらず、対象になるのはあくまで地震保険の契約があるかどうかです。秋頃に保険会社から控除証明書ハガキが届いていれば控除対象になりますので、捨てずに年末調整で提出してください。ハガキが届かない場合は、火災保険のみで地震特約が付いていない契約と考えられます。
4. 旧長期損害保険料控除(経過措置・最大1万5千円)
平成18年(2006年)12月31日以前に契約した、満期返戻金のある積立火災保険や積立傷害保険については、経過措置として旧長期損害保険料控除が受けられます。
| 年間の支払保険料 | 所得税の控除額 |
|---|---|
| 10,000円以下 | 支払った金額の全額 |
| 10,001円〜20,000円 | 支払金額 × 1/2 + 5,000円 |
| 20,001円以上 | 一律15,000円 |
地震保険料控除と旧長期損害保険料控除の両方の契約がある場合は、両方を合算して所得税は最大5万円まで控除できます。この経過措置についても国税庁タックスアンサー「No.1145 地震保険料控除」の中で扱われています。
5. 地震保険を数年分まとめて前払いした場合の申告方法

地震保険を割引率の高い5年一括払い(長期契約)でまとめて支払った場合、毎年どのように申告すればよいかで迷う人も多いところです。
一括前払いした場合でも、保険会社から毎年秋にその年1年分に相当する按分保険料が記載された控除証明書が送られてきます。自分で割り算をする必要はなく、その年に届いたハガキに記載されている金額をそのまま申告書に記入すれば足ります。
6. 年末調整「保険料控除申告書」地震保険料控除欄の書き方
申告書(通称マル保)の右上ブロックにある地震保険料控除欄には、次の内容を記入します。
| 記入欄 | 記入する内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 保険会社等の名称 | 控除証明書に記載の保険会社名 | 東京海上日動 |
| 保険等の種類 | 地震保険(または旧長期損害保険) | 地震保険 |
| 保険等の対象となった家屋 | 家屋か家財かにチェック | 家屋 |
| 保険等の契約者等の氏名 | 契約者の氏名 | 山田太郎(本人) |
| あなたが本年中に支払った保険料の額 | ハガキに記載の金額 | 28,000円 |
| 控除額の計算 | 5万円以下ならその金額をそのまま | 28,000円 |
家屋と家財の両方に地震保険がかかっている場合は、それぞれの契約について行を分けて記入し、合計額を控除額の計算欄に記入します。
7. 持ち家と賃貸、控除額はどれくらい違うか
住まいの形態によって、地震保険料と控除額は次のように変わります。
持ち家一戸建て(木造住宅・建物3,000万円+家財1,000万円)の場合、年間地震保険料はおよそ42,000円で、所得税の控除額は全額の42,000円、住民税の控除額はその半分の21,000円になります。年収600万円の世帯であれば、年間およそ8,400円の税負担軽減です。
賃貸マンション(家財保険300万円・地震特約付き、火災保険総額12,000円のうち地震保険部分が4,500円)の場合、所得税の控除額は4,500円、住民税の控除額はその半分の2,250円です。年間ではおよそ900円の税負担軽減にとどまりますが、少額であっても全額が控除の対象になるため、ハガキが届いていれば申告する価値があります。
8. 被災したときは雑損控除・災害減免法という別の制度がある
地震保険料控除は、毎年支払っている保険料に対する控除です。これに対し、実際に地震や台風で家屋や家財に損害を受けた場合には、確定申告で雑損控除または災害減免法による軽減免除を申請できます。
国税庁タックスアンサー「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」によれば、災害または盗難もしくは横領によって、資産について一定の損害を受けた場合には、雑損控除として一定の金額の所得控除を受けられるとされています。
出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm
もう一つの選択肢である災害減免法については、国税庁タックスアンサー「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」に規定があり、災害によって受けた住宅や家財の損害金額がその時価の2分の1以上で、かつ被災した年の所得金額の合計額が1,000万円以下であるときに、所得税が軽減または免除されるとされています。出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1902.htm 雑損控除と災害減免法はどちらか一方を選んで申請する制度で、両方を同時に受けることはできません。
現場のリアル。台風被害で雑損控除の窓口に足を運んだ父親
ある一戸建てに住む50代の男性は、台風で自宅の屋根瓦が飛ばされる被害に遭い、修理費用に80万円近くかかりました。火災保険の契約に風災の補償が付いていたため保険金で大部分は賄えましたが、自己負担分については確定申告で雑損控除を申請できると知り、税務署の相談窓口に足を運びました。窓口では罹災証明書や修理業者からの領収書、被害状況が分かる写真の提出を求められ、想像していたより書類の準備に手間がかかったといいます。地震保険料控除は毎年の保険料に対する控除で、雑損控除や災害減免法は実際に被害を受けたときの別の手続きです。「地震保険に入っているから安心」と思い込まず、いざというときにどちらの制度を使うか知っておくことが大事だったと話していました。
9. 建物の耐震性能による地震保険料の割引制度
地震保険料は、建物の免震性能や耐震等級に応じて割引が適用されます。損害保険会社各社が定める割引制度で、主なものは次のとおりです。
| 割引の種類 | 割引率 | 必要書類の例 |
|---|---|---|
| 免震建築物割引 | 50パーセント | 住宅性能評価書、免震建築物証明書 |
| 耐震等級3割引 | 50パーセント | 住宅性能評価書(耐震等級3) |
| 耐震等級2割引 | 30パーセント | 住宅性能評価書(耐震等級2) |
| 耐震診断割引 | 10パーセント | 耐震診断結果、新耐震基準適合証明書 |
| 建築年割引 | 10パーセント | 昭和56年6月1日以降の新耐震基準に基づく建物であることが分かる書類 |
これらの割引はあくまで保険料そのものを下げる制度で、税務上の控除額とは別の話です。ただし保険料が下がっても、支払った金額が5万円以下であれば全額が控除対象になる点は変わりません。
10. よくある質問
自宅が夫婦の共有名義(ペアローン等)の場合、地震保険料控除はどちらが受けますか
実際に保険料を支払った側が申告します。夫の口座から全額引き落とされている場合は、夫の年末調整で全額を申告するのが一般的です。負担割合に応じて夫婦それぞれが申告することも認められています。
控除証明書ハガキの原本の添付は必要ですか
年末調整で地震保険料控除を受ける場合、保険料控除申告書に控除証明書ハガキの原本を添付して会社に提出する必要があります。コピーではなく原本を求められるため、届いたハガキはなくさないように保管してください。
契約者と実際に支払った人が違う場合、控除は誰が受けられますか
実際に保険料を支払った人が控除を受けられます。たとえば夫名義の持ち家の地震保険料を妻のクレジットカードで支払った場合、家屋が夫や生計を一にする親族の所有であれば、妻の年末調整で控除を申告できます。
地震保険を年の途中で解約した場合、その年の控除はどうなりますか
解約日までに実際に支払っていた期間相当額について控除を受けられます。保険会社から送られてくる修正後の控除証明書に記載された金額を、申告書に記入してください。
控除の対象になる金額を保険料の内訳から正しく拾い出す作業は、ハガキの記載が複数行にまたがっているとどうしても迷いやすいところです。『書けた年末調整』は、控除証明書の内容を入力するだけで、地震保険料控除と旧長期損害保険料控除の該当額を自動で計算し、申告書の該当欄に反映します。
まとめ
地震保険料控除は、年間5万円まで支払った保険料の全額がそのまま所得控除になる制度です(国税庁タックスアンサー No.1145)。火災保険部分は対象外で、地震保険部分だけが対象になります。賃貸住まいの一人暮らしでも、家財に地震特約が付いていれば控除の対象です。5年一括払いの場合も、毎年届くハガキに記載された1年分の金額をそのまま申告すれば問題ありません。実際に被災した場合は、地震保険料控除とは別に雑損控除や災害減免法(国税庁タックスアンサー No.1110、No.1902)という制度もあることを覚えておくと、いざというときに役立ちます。