生命保険料控除、新制度と旧制度の違い。所得税は新12万円・旧10万円、一番得する組み合わせ方

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目次

秋になると自宅のポストに保険会社から控除証明書のハガキが何枚も届いて、年末調整の「保険料控除申告書」を前に手が止まる、という方は多いはずです。ハガキには「新制度」「旧制度」という見慣れない区分が印字されていて、どちらの計算式を使えばいいのか分からず固まってしまう人もいるでしょう。昔から入っている保険と最近入った保険、両方の証明書が届いたとき、どちらを優先して書けば税金が安くなるのか気になる人も少なくないはずです。

生命保険料控除は、平成24年1月1日を境に契約日によって適用されるルールが変わる、年末調整の中でも仕組みが複雑な控除のひとつです。新旧の違いと計算の考え方を押さえておけば、証明書ハガキを前に固まることはなくなります。

1. 生命保険料控除とは何か

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【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1140 生命保険料控除」では、次のように説明されています。
『納税者が生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを生命保険料控除といいます』
出典:国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm

生命保険料控除は、一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料という3つの枠それぞれについて、支払った保険料の額に応じた金額を所得から差し引く仕組みです。控除額が増えるほど課税所得が下がり、結果として所得税と住民税が軽くなります。

契約日によって新制度と旧制度に分かれる

同じタックスアンサーには、次の記載もあります。

『平成24年1月1日以後に締結した保険契約等に係る保険料と平成23年12月31日以前に締結した保険契約等に係る保険料では、生命保険料控除の取扱いが異なります』
出典:国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」

つまり保険の中身ではなく、契約した日付が平成24年1月1日より前か後かで、適用されるルールが分かれます。平成23年12月31日以前に契約した保険は旧制度、平成24年1月1日以後に契約した保険は新制度です。この改正で、医療保険やがん保険、介護保険を対象にした「介護医療保険料控除」が新たに独立した枠として設けられました。旧制度には一般生命保険料と個人年金保険料の2枠しかありませんが、新制度は一般・介護医療・個人年金の3枠になっています。

2. 新制度と旧制度、何が違うのか

契約日による違いを整理すると次のとおりです。

比較項目旧制度(旧契約)新制度(新契約)
契約した日付平成23年12月31日以前平成24年1月1日以後
対象となる枠一般生命保険料、個人年金保険料の2枠一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3枠
1枠あたりの所得税控除限度額50,000円40,000円
所得税の全体合計限度額100,000円120,000円
住民税の全体合計限度額70,000円70,000円(各枠上限28,000円)

旧制度は1枠の上限が5万円と大きいものの枠数が2つしかなく、合計10万円が上限です。新制度は1枠の上限が4万円に下がった代わりに枠が3つに増え、合計12万円まで使えるようになっています。同じ「上限」でも、新旧で構造がまったく違う点がこの控除の分かりにくさの正体です。

3. 支払保険料から控除額を計算する方法

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証明書ハガキに記載された年間の保険料をもとに、次の計算式に当てはめて所得税の控除額を出します。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1140 生命保険料控除」に定められている計算式は次のとおりです。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」

新契約(平成24年1月1日以後、各枠上限4万円)の所得税控除額

年間の支払保険料控除額の計算式
20,000円以下支払保険料の全額
20,000円超 40,000円以下支払保険料 × 1/2 + 10,000円
40,000円超 80,000円以下支払保険料 × 1/4 + 20,000円
80,000円超一律40,000円

旧契約(平成23年12月31日以前、各枠上限5万円)の所得税控除額

年間の支払保険料控除額の計算式
25,000円以下支払保険料の全額
25,000円超 50,000円以下支払保険料 × 1/2 + 12,500円
50,000円超 100,000円以下支払保険料 × 1/4 + 25,000円
100,000円超一律50,000円

住民税の控除額も同様の考え方で計算しますが、地方税の取り扱いにもとづく別建ての計算式で、新契約は上限28,000円、旧契約は上限35,000円、全体の合計上限は新旧あわせて70,000円です。証明書ハガキに印刷されている金額を上の表に当てはめれば、自分で電卓を叩いて確かめることもできます。

4. 新旧両方に入っている場合、どちらを選べば得か

同じ枠、たとえば一般生命保険料控除の中に新契約と旧契約の両方がある場合、申告書の書き方には3つの選択肢があります。

新制度のみで計算すると上限は40,000円です。旧制度のみで計算すると上限は50,000円です。新旧を合算して計算すると、合算後の上限は40,000円になります。

ここで判断が分かれます。旧契約の年間保険料がすでに10万円を超えている場合は、旧制度単独で申告すれば満額の5万円が取れます。新旧を合算しても上限は4万円までしか伸びないため、この場合は旧制度単独を選んだほうが1万円多く控除される計算です。逆に旧契約の保険料がそれほど大きくない場合は、新旧を合算したほうが有利になることがあります。どちらが得かは、契約ごとの支払保険料の額によって変わるため、機械的に「新旧合算が正解」とは言い切れません。

現場のリアル。合算だけして満額を取り損ねていた会社員

ある50代の会社員は、若い頃に加入した終身保険(旧契約、年間保険料12万円)に加えて、数年前に医療保障を厚くするために新しく入った保険(新契約、年間保険料5万円)の両方の証明書を毎年提出していました。長年、深く考えずに「新旧合算」の欄に金額を書いていたところ、ある年、経理担当から「旧契約だけで計算したほうが控除額が大きくなりますよ」と指摘されたそうです。実際に計算し直すと、合算では上限の4万円止まりだったのが、旧制度単独では満額の5万円まで伸び、差額の1万円分、何年も余分に税金を払っていたことになります。契約が複数ある人ほど、一度は計算式を見比べる価値があります。

5. 証明書ハガキの読み方と記入時の注意点

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手元に届いたハガキを見るときは、次の3点を確認します。ひとつ目は適用制度の区分で、新制度か旧制度かを確認します。ふたつ目は保険の種類で、一般・介護医療・個人年金のいずれの枠に該当するかを確認します。みっつ目は申告すべき金額で、ハガキ発行時点(多くは10月時点)の証明額ではなく、その年12月末までの支払見込みを含めた申告額を使う必要があります。

現場のリアル。証明額と申告額を書き間違えて差し戻された話

ある会社員は、ハガキに大きく印字されていた「証明額」の数字をそのまま保険料控除申告書に書いて総務に提出したところ、後日「この保険はまだ12月まで保険料の支払いが続くので、証明額ではなく下段に小さく書かれている申告額(見込額)を使ってください」と差し戻しを受けたそうです。証明額は発行時点までに支払った実績額で、申告額はその年の12月末まで契約が継続した場合の見込み額です。月払いの保険は毎月保険料を払い続けるため、証明額より申告額のほうが数千円から1万円ほど大きくなることが多く、この差に気づかずに小さいほうの数字を書いてしまう人が少なくありません。ハガキのどこに何の数字が書かれているか、提出前に一度落ち着いて確認する価値があります。

6. 年末調整「給与所得者の保険料控除申告書」の書き方

会社から配られる保険料控除申告書(通称マル保)の生命保険料控除欄には、次の項目を記入します。保険会社等の名称、保険等の種類(終身保険、医療保険、がん保険、個人年金など)、保険期間、保険契約者の氏名、保険金受取人の氏名と続柄、新・旧の区分、その年中に支払った保険料等の金額です。金額はハガキに記載された申告額(年末までの見込み額)を用い、区分ごとの計算表に当てはめて控除額を算出したうえで、合計欄に記入します。所得税の合計控除額の上限は12万円です。

7. 新旧混在契約の計算例

具体的な数字で確認しておきます。

旧一般生命保険12万円と新一般生命保険5万円の両方に加入しているケースでは、新旧合算だと旧契約分が上限の4万円、新契約分が計算上3万2,500円になりますが、合算後の上限自体が4万円のため、結局40,000円までしか使えません。一方、旧制度単独で計算すると、支払保険料が10万円を超えているため一律50,000円が使えます。この場合は旧制度単独を選んだほうが1万円多く控除されます。

旧一般生命保険3万円と新一般生命保険6万円の場合は、旧契約分の計算額が27,500円、新契約分の計算額が35,000円で、合計すると62,500円になりますが、合算の上限は4万円です。旧制度単独では支払保険料3万円に対する控除額は22,500円にとどまるため、この場合は新旧合算を選んだほうが有利になります。

保険料の金額の組み合わせ次第で正解が変わるため、複数契約がある人は面倒でも両方のパターンを計算して比べてみることをすすめます。

8. 年収別に見る節税額の目安

生命保険料控除を満額申告した場合、実際にどれくらい税金が軽くなるかの目安です。所得税率は課税所得の水準によって変わるため、あくまで目安として見てください。

給与年収の目安課税所得の目安所得税率の目安新制度12万円満額時の節税額目安旧制度10万円満額時の節税額目安
300万円約140万円5%約13,000円/年約12,000円/年
500万円約240万円10%約19,000円/年約17,000円/年
700万円約380万円20%約31,000円/年約27,000円/年
1,000万円約680万円23%約34,600円/年約30,000円/年
1,200万円約850万円33%約46,600円/年約40,000円/年

年収が高く所得税率が上がるほど、同じ控除額でも節税効果は大きくなります。住民税分の軽減効果はこの表に含まれていないため、実際の手取り増加額はこれより少し上乗せされます。

9. マイナポータル連携で証明書業務が楽になる

現在、多くの保険会社がマイナポータル連携による電子控除証明書(XMLファイル)の発行に対応しています。紙のハガキを探したり、台紙に貼り付けたりする手間がなくなり、会社の年末調整システムにXMLデータを取り込むだけで金額の入力が完了します。証明書を紛失しやすい人や、複数の保険会社と契約していて毎年ハガキの管理が煩雑になっている人は、マイナポータル連携への切り替えを検討する価値があります。

10. よくある質問

妻名義の生命保険の保険料を、夫の口座から引き落としています。夫の年末調整で控除できますか

できます。契約者が妻であっても、実際に保険料を負担しているのが夫であり、受取人が夫か妻・親族であれば、実際に支払っている夫側の控除として申告できます。契約者名義と控除を受ける人が一致している必要はありません。

証明書ハガキを紛失してしまいました。どうすればいいですか

保険会社のマイページから証明書のPDFを再発行するか、コールセンターに連絡すれば数日程度で再送してもらえます。前述のとおり、マイナポータル連携に対応している保険会社であれば、電子データとして取得し直すことも可能です。提出期限が近い場合は早めに動いたほうが安全です。

新旧どちらか一方だけ申告して、もう一方を書き忘れたらどうなりますか

その年は控除額が本来より少ない状態で年末調整が確定してしまいます。翌年、確定申告(還付申告)をすれば、書き忘れた分の控除を追加で受けられます。還付申告は原則としてその年の翌年1月1日から5年間さかのぼって行えるため、書き忘れに気づいた時点で税務署に相談してください。

おすすめ便利ツール
スマホで5分!年末調整の申告書を自動作成

生命保険料控除の新旧計算は、契約が1件だけならさほど難しくありませんが、複数の契約が混在すると、どの組み合わせが一番得かを手計算で比較するのは骨が折れます。『書けた年末調整』は、契約ごとの新旧区分と支払保険料をスマホで入力するだけで、新旧合算と旧制度単独の両方を自動で計算し、有利なほうを提示します。

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まとめ

生命保険料控除は、契約日が平成23年12月31日以前かどうかで旧制度と新制度に分かれ、旧制度は一般・個人年金の2枠で所得税上限10万円、新制度は一般・介護医療・個人年金の3枠で所得税上限12万円です(国税庁タックスアンサー No.1140)。新旧両方の契約がある場合は、旧契約の年間保険料が10万円を超えているなら旧制度単独、そうでなければ新旧合算のほうが有利になりやすく、実際の金額で両方計算して比べる必要があります。証明書ハガキに書かれた数字は、発行時点の証明額ではなく12月末までの申告額を使うことを忘れないようにしてください。

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