兄弟姉妹で親を扶養に入れるとき。重複はNG、一族で一番得する組み合わせの考え方

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目次

実家の親を自分の年末調整で扶養に入れようとしたら、兄も同じ親を扶養に入れていた、という話を聞いたことがある人は多いはずです。

兄弟で同じ親を同時に扶養に入れることはできるのか、もし重複してしまったら後からどうなるのか、と不安に思う人も少なくないでしょう。実家に父と母の2人が健在なら、兄弟でどう分担するのが一番得なのか、という素朴な疑問もあるはずです。

親を扶養に入れる制度そのものは単純ですが、兄弟姉妹が複数いる家庭では「誰が申告するか」で毎年ちょっとした確認作業が必要になります。ここでは国税庁の一次情報にもとづいて、重複申告が禁止される根拠と、一族全体で見たときにどう分担するのが合理的かを整理します。

1. 親1人につき扶養控除を使えるのは子ども1人だけ

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国税庁タックスアンサー「No.1181 納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更」では、同一の扶養親族について複数の納税者が重複して扶養控除の適用を受けることはできず、扶養親族が「誰の扶養親族に該当するか」は、その年に提出された扶養控除等申告書などの記載内容によって決まると説明されています。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1181「納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1181.htm

つまり、同じ母親を長男と次男の両方が扶養控除等申告書に書いてしまった場合、どちらか一方しか有効になりません。誰の扶養親族として確定させるかは、あとから提出された申告書の記載内容や税務署とのやり取りで決まっていきます。

考え方を整理すると、次の3パターンになります。

パターン内容可否
重複申告長男と次男の両方が同じ母親を扶養親族として申告する認められない
単独申告長男だけが母親を扶養親族として申告する問題なし
分け合い長男が父親を、次男が母親を、それぞれ別に申告する問題なし

分け合いのパターンは合法ですが、これは「1人の親につき1人の子ども」という原則の範囲内での話です。父と母がそれぞれ別の子どもの扶養親族になっているだけで、1人の親を2人以上の子どもが同時に扶養に入れているわけではない、という点を押さえておくと理解しやすくなります。

2. 現場のリアル。兄弟でうっかり重複申告してしまった話

都内の食品メーカーに勤める40代の兄と、地方の会社で働く30代の弟が、同じ母親(72歳、年金収入のみで年間120万円ほど)を、それぞれの勤務先の年末調整でともに「別居老親等」として申告してしまったことがあったそうです。発覚したのは、兄の会社の総務担当者が扶養控除等申告書を処理していて、前年のデータと照らし合わせた際に「あれ、去年は弟さんの方で申告されていませんでしたか」と気づいたのがきっかけでした。兄弟のどちらも「まさか相手も同じタイミングで申告しているとは思わなかった」と話していたといいます。

このケースでは年末調整の書類段階での発覚だったため、弟が扶養控除等申告書を書き直して母親の記載を外し、大きな問題にはなりませんでした。厄介なのは、どちらかがすでに確定申告書を提出したあとに重複が判明するケースです。国税庁の同ページによれば、いったん確定申告書を提出している場合、その後に扶養親族の所属を変更することはできません。年末調整の書類提出前であれば書き直しで済みますが、確定申告まで進んでしまうと訂正の選択肢が狭まるため、重複に気づいたら早めに兄弟間で連絡を取り合うことが大切です。

なお、税務署から指摘される前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税などのペナルティを避けられる場合があります。逆に、税務署からの照会で発覚してから対応すると、加算税が課される可能性が出てきます。

3. 誰が親を扶養に入れると一族全体で得になるか

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日本の所得税は課税される所得金額に応じて税率が段階的に上がる累進課税です。国税庁タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」によれば、課税所得330万円超695万円以下は20パーセント、695万円超900万円以下は23パーセント、900万円超1,800万円以下は33パーセントという具合に区分されています(出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)。実際の税率は給与収入そのものではなく、各種控除を差し引いたあとの課税所得金額で決まる点には注意が必要です。

この仕組みがあるため、扶養控除は税率の高い人が使うほど、控除額に対する節税効果が大きくなります。70歳の別居の親を扶養に入れた場合の控除額48万円を例に、所得税と住民税をあわせた実効税率の目安で試算すると、次のようになります。

子ども年収の目安実効税率の目安48万円控除による節税額の目安
長男800万円30パーセント程度年間14万4千円程度
次男500万円20パーセント程度年間9万6千円程度
長女300万円15パーセント程度年間7万2千円程度

同じ48万円の控除でも、誰が使うかで受け取れる金額に数万円単位の差が出ます。この例では、年収が最も高い長男が母親を扶養に入れたほうが、一族全体で見た手取りは大きくなる計算です。ただし実効税率は他の控除や家族構成によっても変わるため、あくまで目安としてとらえてください。

4. 両親が2人とも健在なら、1人ずつ分担する方法もある

実家に父と母の2人がいて、どちらも扶養親族の要件(年金収入のみなら年間158万円以下が目安)を満たしている場合、兄弟が1人ずつ分担して申告することも制度上問題ありません。前述のとおり、これは「1人の親につき1人の子ども」という原則の範囲内での分担だからです。

たとえば、長男(年収700万円程度)が父親を、次男(年収450万円程度)が母親をそれぞれ扶養に入れた場合、長男は48万円控除で14万4千円程度、次男も48万円控除で9万6千円程度の節税になる計算です。それぞれが自分の申告で控除を受けられるため、片方だけが得をしているという不公平感も生まれにくくなります。

兄弟が3人いる家庭であれば、たとえば長男(850万円程度)が父親を、次男(600万円程度)が母親を扶養に入れ、三男(350万円程度)は扶養枠を使わない代わりに実家の日常的なサポートを担う、という役割分担も考えられます。この例では長男と次男を合わせて年間24万円程度の節税になる計算になり、その一部を三男への感謝として渡す家庭もあるようです。数字はあくまで一例であり、実際にどの組み合わせが最適かは各家庭の年収や他の控除の状況によって変わるため、個別に試算することをおすすめします。

5. 現場のリアル。姉妹の年収差で分担にわだかまりが出た話

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ある姉妹は、同居する母親の扶養をめぐって毎年少しもめかけていたそうです。姉は実家で母親と同居して身の回りの世話をしており、妹は遠方に嫁いで仕送りだけをしている状況でした。ところが妹の世帯のほうが年収が高く、税率で単純に比較すると妹が申告したほうが一族全体の手取りは増える計算になります。

実際に世話をしているのは姉なのに、控除を受けるのは妹というのは釈然としない、という感情的なわだかまりがしばらく残っていたといいます。最終的には、妹が母親を扶養に入れて浮いた税金の一部を、母親の介護用品代や通院の交通費として毎月姉の口座に振り込む形で折り合いをつけたそうです。税務上の損得と、実際に世話をしている負担感は別の軸にあるため、数字だけで決めずに家族内でどう納得感を作るかが、こうした場面では意外と大事になります。

6. 兄弟間で揉めないための工夫

親の扶養をどちらが申告するかは、毎年同じ話し合いが必要になります。実際にトラブルを避けている家庭でよく聞くのは、次のような工夫です。

年末調整の書類が配られる10月から11月にかけて、兄弟間で一度「今年の親の扶養はどうするか」を確認する。高い税率で申告した側が浮いた税金の一部を、実家の固定資産税や親の医療費、介護サポートに充てる。仕送りをしている場合は、実際に扶養に入れている子どもの口座から定期的に振り込むようにして、生計を一にしている実態を記録として残しておく。

こうした取り決めは税務署への提出物ではありませんが、翌年以降も同じ話し合いを繰り返さずに済むという意味で、家族内の運用ルールとして決めておく価値があります。

7. よくある質問

長男が親と同居し、次男が別居で仕送りをしています。どちらが扶養に入れるべきですか

どちらでも申告は可能です。同居している長男が申告すれば同居老親等として58万円、別居の次男が申告すれば別居老親等として48万円の控除になります(国税庁タックスアンサー No.1180「扶養控除」)。控除額そのものは同居している側のほうが大きいため、あとは兄弟それぞれの年収と実効税率を比較して、一族全体で見たときに節税効果が大きいほうを選ぶ、という考え方になります。

過去に兄弟で重複して申告していたことに気づきました。どう直せばいいですか

まだどちらも確定申告書を提出していない段階であれば、扶養控除等申告書を書き直すことで是正できます。すでに確定申告書を提出している場合は、税務署に相談のうえで修正申告が必要になることがあります。税務署から指摘される前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税などのペナルティを避けられる場合があるため、気づいた時点でできるだけ早く動くことをおすすめします。

同居老親等として扱われるのはどんな場合ですか

原則として、親と子どもが日常的に同じ家で生活していることが条件です。ただし国税庁の説明では、親が病気治療のために長期入院しているようなケースは、一時的な別居として扱われ、同居老親等の判定には影響しないとされています。一方で、親が老人ホームに入所している場合は、同居に該当しないとされているため、別居老親等(48万円控除)の扱いになります(国税庁タックスアンサー No.1180「扶養控除」)。

まとめ

親1人につき扶養控除を使えるのは子ども1人だけで、兄弟が重複して申告することはできません(国税庁タックスアンサー No.1181)。重複に気づいた場合は、確定申告書を提出する前であれば申告書の書き直しで是正でき、提出後は税務署への相談と修正申告が必要になります。

誰が申告するかを考えるときは、所得税が累進課税である以上、税率の高い子どもが控除を使ったほうが一族全体の節税額は大きくなります(国税庁タックスアンサー No.2260)。両親が2人とも健在なら、兄弟で1人ずつ分担することも制度上問題ありません。ただし、実際に世話をしている負担感と税務上の損得は別の軸にあるため、数字だけで押し切らず、家族内でどう納得感を作るかも合わせて考えておきたいところです。

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こうした兄弟間の分担や控除額の計算は、条件によって組み合わせが複雑になりがちです。『書けた年末調整』では、家族構成や年収を入力するだけで、扶養控除の対象や控除額の目安をスマホ上で確認しながら書類を仕上げられます。誰がどの親を申告するかを兄弟で相談する際の材料としても活用できます。

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