年末調整で組合費・社宅家賃は控除できない、天引き項目の判定

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目次

「給料から毎月引かれている労働組合費、年末調整で申告すれば税金が戻ってくるんじゃないか」

「社宅の家賃も社員旅行の積立金も天引きされているんだから、書類に書けば控除になるはず」

給与明細の控除欄には、健康保険や厚生年金だけでなく、労働組合費、社宅家賃、社員旅行積立金、親睦会費、財形貯蓄など、様々な項目が並んでいます。11月に年末調整の書類が配られる時期になると、「これだけ天引きされているのだから、書けば税金が安くなるのでは」と考える方が毎年のように出てきます。

労働組合費、社宅家賃、社員旅行積立金、親睦会費、財形貯蓄の掛金は、いずれも税法上の所得控除には該当せず、年末調整の書類に書いても税金は変わりません。年末調整で所得から差し引けるのは、社会保険料や一部の企業年金掛金、生命保険料など、法律で個別に名前と要件が定められた項目に限られています。

この記事では、給与天引き項目ごとの控除可否、労働組合費が対象外になる理由、社宅家賃に別の形で用意されている非課税の仕組み、財形貯蓄の利子非課税制度、団体扱い生命保険料の扱いまで、国税庁の公式情報と実際の職場でのやり取りを交えて整理します。


1. ひと目でわかる、給与天引き項目の年末調整控除可否一覧

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年末調整で控除できるのは社会保険料・一部の企業年金掛金・生命保険料などに限られ、労働組合費・社宅家賃・社員旅行積立金・親睦会費・財形貯蓄の掛金は対象外です。

1-1. 天引き項目別の判定表

給料から天引きされる主な項目を、控除の可否で分類すると次のようになります。

給与天引き項目年末調整での控除可否税務上の分類手続き
健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料対象(全額)社会保険料控除会社が自動計算、記入不要
企業型DCのマッチング拠出分対象(全額)小規模企業共済等掛金控除給与天引き分は会社が計算
団体扱い生命保険料対象(上限あり)生命保険料控除控除証明書ハガキを添付して自己申告
労働組合費対象外組合への会費(家事費)年末調整の欄自体が存在しない
社宅家賃・寮費対象外(別の非課税の仕組みあり)個人が負担すべき住居費年末調整には書けない
社員旅行積立金・親睦会費対象外私的な積立金・会費年末調整には書けない
財形貯蓄(一般・住宅・年金)対象外(利子等の非課税制度あり)本人名義の貯蓄年末調整には書けない

対象になるかどうかの境目は単純で、国税庁が法律にもとづいて定めた「所得控除」という名前のついた制度に当てはまるかどうかだけです。会社や組合の内部ルールで天引きされているというだけでは、控除の対象にはなりません。


2. なぜ労働組合費・社員旅行積立金・親睦会費は年末調整で控除できないのか

国税庁が定める所得控除は全部で15種類あり、そのどれにも労働組合費・社員旅行積立金・親睦会費に該当する項目がないため、年末調整の書類にどう書いても控除の対象になりません。

2-1. 国税庁が定める15種類の所得控除

国税庁は、所得控除の種類を次のように示しています。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」には、所得控除の種類について次のように明記されています。
『雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除、基礎控除』
出典:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1100.htm

このリストのどこにも「組合費控除」「親睦会費控除」「旅行積立金控除」といった項目は存在しません。所得控除は法律で一つひとつ名前と要件が決められた制度なので、リストに載っていない支出は、天引きの形をとっていても対象になりようがない、というのが仕組みの根本です。

2-2. 「家事費」として扱われる理由

労働組合費や親睦会費は、労働者が任意に加入した組織に払う会費であり、税務上は個人の私的な生活費に近いものとして扱われます。

労働組合は法律上、労働者が自主的に組織する団体であり、加入も脱退も本人の意思にもとづきます。組合費はその団体の活動を支えるための会費であって、国が「国民の最低限度の生活を守るために必要な支出」として制度化した社会保険料や医療費とは性格が異なります。社員旅行積立金や親睦会費も同様に、会社や有志のグループが独自に運営している積立・会費であり、公的な制度にもとづくものではありません。この違いが、所得控除の対象になるかならないかを分けています。

#### 【現場のリアル】労働組合費を年末調整に書こうとした新人事担当の話

入社して半年ほどが経った人事総務の担当者から聞いた話です。初めて年末調整の集計作業を任されたとき、扶養控除等申告書と一緒に配られた「保険料控除申告書」の余白に、ある社員が「労働組合費、年間36,000円」と書き込んで提出してきたことがあったそうです。どの欄に転記すればいいのか分からず、先輩社員に確認したところ、「それは控除できる項目じゃないから、そのまま何もしないで大丈夫」とあっさり言われて拍子抜けしたといいます。

念のため国税庁のタックスアンサーのページを自分でも確認してみたところ、所得控除の一覧に組合費に該当する項目が本当に見当たらず、「天引きされているから何かしら控除になるはず」という思い込みがあったことに気づいたそうです。結局その社員には、書類の余白の記載は年末調整には反映されない旨を伝え、給与明細上の控除とは別物であることを説明したとのことでした。

天引きされているという事実と、税法上の控除対象であるという事実は、必ずしも一致しません。給与明細の「控除欄」という言葉のイメージにつられて、両者を同じものだと思い込んでしまうケースは、総務の現場でも珍しくないようです。


3. 社宅家賃は控除できないが、代わりに非課税という仕組みがある

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社宅家賃は所得控除の対象ではありませんが、賃貸料相当額の50パーセント以上を給与天引きで会社に払っていれば、会社が負担している分は給与として課税されない仕組みになっています。

3-1. 国税庁が示す賃貸料相当額の50パーセントルール

国税庁は、使用人に社宅や寮を貸す場合の課税関係について、次のように示しています。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」には、次のように明記されています。
『使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50パーセント以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。』
出典:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm

つまり、社宅家賃は「年末調整で所得から差し引く」のではなく、「そもそも会社が負担している分に税金がかからない」という形で扱われています。天引きされている家賃は控除申告の対象ではなく、賃貸料相当額の計算のもとになる金額そのものだと考えると仕組みが理解しやすくなります。

3-2. 賃貸料相当額の計算のもとになる要素

賃貸料相当額は、建物と敷地の固定資産税の課税標準額をもとに、次の3つの要素を合計して計算します。

計算要素内容
(1)建物にかかる分その年度の建物の固定資産税課税標準額 × 0.2パーセント
(2)床面積にかかる分12円 ×(その建物の総床面積(平方メートル)÷ 3.3平方メートル)
(3)敷地にかかる分その年度の敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22パーセント

この(1)から(3)を合計した金額が賃貸料相当額です。会社が所有している物件でも、会社が他から借りて社員に貸している物件でも、計算方法は同じです。実際に受け取っている家賃がこの相当額の50パーセントに届いていない場合は、届いていない分が給与として課税対象に加算されるため、社宅制度を導入している会社は、この基準を意識して家賃を設定しています。

#### 【現場のリアル】社宅家賃の天引き額が周辺相場よりずっと安いことに気づいた話

転勤で借り上げ社宅に入居することになった方から聞いた話です。給与明細に「社宅使用料」として毎月2万円が天引きされているのを見て、同じ間取りの近隣物件の家賃相場が8万円前後だったこともあり、「これは何か特別に安くしてもらっているのか、それとも後からまとめて追加請求でもされるのか」と不安になり、総務に問い合わせたことがあったそうです。

総務の担当者からは、会社が借り上げている物件の賃貸料相当額をもとに算出した金額であり、法律で決まった計算式に沿って設定しているため、追加の請求などは発生しないと説明を受けたといいます。年末調整の書類には家賃の項目自体がないため、「控除の書類にはどこにも書かなくていい」と言われたときは、逆にそれで合っているのか半信半疑だったとのことでした。あとから自分でも国税庁のページを確認し、賃貸料相当額の50パーセント以上を払っていれば差額に課税されない仕組みだと知って、天引きされている家賃の安さそのものが、すでに制度として成立している優遇だったのだと納得したそうです。


4. 財形貯蓄は年末調整に書く必要があるか

財形貯蓄の掛金そのものは年末調整の所得控除にはなりませんが、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄をあわせて元利合計550万円までの利子等が非課税になる制度が別途用意されています。

4-1. 財形貯蓄の非課税限度額

国税庁は、財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄の非課税限度額について、次のように示しています。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1319 財形年金貯蓄」には、次のように明記されています。
『元本550万円までの利子等について所得税を非課税とする制度です。なお、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の両方を有する場合は、両方を合わせて最高550万円とされています。』
出典:国税庁「No.1319 財形年金貯蓄」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1319.htm

「No.1316 財形住宅貯蓄」でも同様に、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄を両方保有する場合は合算で最高550万円までという上限が示されています。この非課税枠は、掛金を所得から差し引く制度ではなく、貯蓄でついた利子等に税金をかけないという別枠の優遇であるため、年末調整の申告書に金額を書く欄自体が用意されていません。

4-2. 財形貯蓄3種類の目的の違い

財形貯蓄には一般財形・住宅財形・年金財形の3種類があり、非課税の優遇が受けられるのは住宅財形と年金財形のみです。

種類主な目的利子等の非課税優遇
一般財形貯蓄使途を問わない自由な貯蓄優遇なし(通常どおり課税)
財形住宅貯蓄住宅の取得・増改築資金財形年金貯蓄と合算で元利合計550万円まで非課税
財形年金貯蓄老後の年金原資財形住宅貯蓄と合算で元利合計550万円まで非課税

給与天引きという形は同じでも、一般財形貯蓄には非課税の優遇がついていません。年末調整の書類に財形貯蓄の記載欄がないのは、控除ではなく「利子への課税を非課税にする」という別の制度で優遇されているためです。天引きされている金額を年末調整で申告する必要はなく、口座を開設した金融機関側で非課税の管理が行われます。


5. 団体扱い生命保険料は年末調整の生命保険料控除の対象になる

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給与天引きの団体扱い生命保険料は、個人で契約する生命保険と同じ仕組みで生命保険料控除の対象になり、控除証明書ハガキを年末調整の書類に添付すれば所得から差し引けます。

5-1. 国税庁が示す生命保険料控除の仕組み

国税庁は、生命保険料控除について次のように示しています。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1140 生命保険料控除」には、次のように明記されています。
『生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。』
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm

団体扱い生命保険料は、会社を窓口にして保険料を給与天引きで集め、まとめて保険会社に払い込む仕組みであるだけで、契約自体は個人が結んでいる生命保険と変わりません。そのため、天引きされているという理由で対象外になることはなく、他の生命保険料控除と同じ扱いになります。

5-2. 控除額の上限(新契約の場合)

平成24年1月1日以後に契約した新契約の場合、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料それぞれの上限が40,000円、合計の上限が120,000円です。

区分(新契約)各区分の上限額
一般生命保険料40,000円
介護医療保険料40,000円
個人年金保険料40,000円
合計の上限額120,000円

平成23年12月31日以前に契約した旧契約については、区分や上限額の計算方法が新契約と異なるため、保険会社から届く控除証明書ハガキに記載されている区分(新・旧)と金額を、そのまま申告書の対応する欄に転記するのが確実です。

#### 【現場のリアル】団体扱い保険の証明書ハガキを毎年無くす経理担当者の話

ある会社の経理担当者から聞いた話です。10月から11月にかけて自宅に届く生命保険料控除証明書のハガキを、団体扱いで加入している保険会社の分だけ毎年のように失くしてしまう社員がいて、提出期限の直前になって「ハガキが見当たらないので控除は諦めます」と申し出てくることが何度かあったそうです。

経理側としては、控除証明書がなければ生命保険料控除を適用できず、その分税金が安くなる機会をそのまま逃すことになってしまうため、「保険会社に電話すれば再発行してもらえますよ」と毎回伝えているとのことでした。実際、契約者本人が保険会社のコールセンターや会員サイトから再発行を依頼すれば、数日から2週間程度で新しいハガキが郵送されてくるケースがほとんどで、年末調整の提出期限までに十分間に合うことも多いそうです。団体扱いだからといって会社側で控除証明書を用意してくれるわけではなく、あくまで契約者本人が個別に取り寄せる必要がある、という点は見落とされがちだといいます。


6. よくある質問

労働組合費の申告可否、社宅家賃の課税されない割合、財形貯蓄の記載要否、生命保険料控除証明書の再発行について、4つの質問にまとめて答えます。

6-1. Q&A一覧

#### Q1. 労働組合費や親睦会費は、確定申告なら経費として認められますか。

認められません。労働組合費や親睦会費は、給与所得者の必要経費にあたる「特定支出控除」の対象にも含まれておらず、税法上は個人の私的な生活費として扱われます。年末調整でも確定申告でも、控除や経費にすることはできません。

#### Q2. 社宅家賃はどのくらい払っていれば給与として課税されませんか。

賃貸料相当額の50パーセント以上を会社に払っていれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は給与として課税されません。50パーセントに届いていない場合は、届いていない分が給与課税の対象に加算されます。

#### Q3. 財形貯蓄をしていますが、年末調整の書類に金額を書く必要はありますか。

書く必要はありません。財形貯蓄は所得控除の制度ではなく、住宅財形・年金財形の利子等を元利合計550万円まで非課税にする別枠の制度です。年末調整の申告書には財形貯蓄を記載する欄自体がなく、非課税の管理は口座のある金融機関側で行われます。

#### Q4. 団体扱い生命保険の控除証明書ハガキを無くしてしまいました。どうすればいいですか。

契約している保険会社のコールセンターや会員向けサイトから再発行を依頼してください。会社の経理・総務では再発行できないため、契約者本人が保険会社に直接連絡する必要があります。数日から2週間程度で手元に届くことが多く、年末調整の提出期限に間に合うケースがほとんどです。


まとめ、給与天引き項目は法定の控除か私的な会費かで判断する

給与明細の天引き項目は、天引きされているという見た目だけでは控除になるかどうか判断できません。法律で定められた制度に当てはまっているかどうかで、結果が分かれます。年末調整の書類作成をスマホで一から入力し直したい方は、完全無料で使える「書けた年末調整」もあわせてご検討ください。

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