外国人労働者の年末調整、国外居住親族の扶養控除と必要書類

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目次

「うちの工場で働いているベトナム人技能実習生から『母国の親を扶養に入れたい』と相談された。何を準備すればいいのか分からない」

「総務窓口で外国人社員に『戸籍謄本を出してください』と言ったら、怪訝な顔をされてしまった」

日本国内の企業や工場、IT現場で働く外国人労働者、エンジニア、技能実習生、特定技能人材は年々増えています。年末調整の時期になると「母国にいる両親や子どもを扶養控除に入れて税金を安くできるのか」「どんな証明書が必要なのか」という相談が、企業の人事・総務部に集中します。

まず押さえておきたいのは、日本国内で働く外国人であっても、居住者(国内に住所がある、または1年以上居所がある人)であれば、日本人社員と同じ手続きで年末調整を受けられるという点です。ただし、海外に住む家族を扶養に入れる「国外居住親族の扶養控除」には、令和5年分以後、書類面でかなり細かい要件が課されるようになりました。

この記事では、外国人労働者の年末調整の基本から、国外居住親族の扶養要件、必要な証明書類、租税条約による所得税免除、技能実習生が帰国するときの脱退一時金の還付まで、国税庁の公式情報と現場の実例を交えて整理します。


1. 国外居住親族を扶養に入れるための必須書類

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国外に住む親族を扶養控除等の対象にするには、その親族が扶養者本人の親族であることを示す「親族関係書類」と、生活費や教育費を送金した事実を示す「送金関係書類」を、勤務先へ提出する必要があります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」には、次のように定められています。
『居住者が、非居住者である親族について扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける場合には、その適用を受ける年分の確定申告書、給与や公的年金等の源泉徴収の際に「親族関係書類」及び「送金関係書類」を確定申告書に添付し、又は提示しなければなりません』
出典:国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/kokugai/index.htm

親族関係書類は、日本の戸籍の附票の写しと国外居住親族のパスポートの写しの組み合わせ、または外国政府や外国の地方公共団体が発行した書類(氏名・生年月日・住所が記載されているもの)のいずれかで足ります。送金関係書類は、金融機関の外国送金依頼書の控えやクレジットカードの利用明細書、reswallet等の決済アプリの送金記録など、生活費や教育費として支払ったことが分かる資料です。

令和5年分以後、30歳以上70歳未満の親族は要件が厳しくなった

年齢によって求められる書類の重さが変わり、とくに30歳以上70歳未満の親族については、単に親族関係書類と送金関係書類を揃えるだけでは足りなくなりました。

国外居住親族の年齢区分扶養控除等の対象となる条件必要な追加書類
16歳以上30歳未満通常どおり所得要件を満たせば対象親族関係書類+送金関係書類
30歳以上70歳未満留学により非居住者となっている、または障害者である、または年間38万円以上の送金を受けている、のいずれかに該当する場合のみ対象親族関係書類+送金関係書類(留学の場合は留学ビザ等書類も)
70歳以上通常どおり所得要件を満たせば対象親族関係書類+送金関係書類

30歳以上70歳未満の親族は、この3つのいずれにも当てはまらなければ、たとえ実際に仕送りをしていても扶養控除等の対象から外れます。この改正は、就労目的で来日した若い世代が、実際には自活している成人の兄弟姉妹などを名目だけ扶養に入れて控除を受けるケースを防ぐために設けられたものです。

なお、扶養親族としての所得要件そのものは、国内・国外を問わず共通です。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1180 扶養控除」には、控除対象扶養親族の要件として次のように記載されています。
『年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は、給与収入が103万円以下)』
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm

2. 外国語の証明書には日本語訳の添付が必要

親族関係書類や送金関係書類が外国語で書かれている場合、その日本語訳を添付する必要があります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁のパンフレット「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ」には、外国語で作成された書類について『その翻訳文の添付又は提示も必要です』と案内されています。
出典:国税庁「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/gaikokugo/02.htm

この翻訳は専門の翻訳会社に依頼する必要はなく、本人や会社の担当者が作成したもので構いません。ただし、誰が訳したのかが分かるよう、翻訳者の氏名を書類に記載しておくと、あとで総務や税務署から問い合わせを受けた際にスムーズです。

#### 【現場のリアル】ベトナム語の出生証明書を、総務担当者と実習生が一緒に訳した夜

ある食品工場で人事を担当している方から聞いた話です。技能実習生から「ベトナムにいる両親を扶養に入れたい」と相談を受け、本人が持っていたベトナム語の出生証明書と親のパスポートのコピーを預かったものの、日本語訳をどう用意すればいいのか最初は分からなかったといいます。

結局、その実習生本人と担当者が休憩時間を使い、スマホの翻訳アプリで下訳を作りながら、氏名や生年月日など数字と固有名詞の部分だけを慎重に突き合わせて日本語訳を完成させたそうです。専門業者に頼む予算も時間もないなかでの手作業でしたが、担当者いわく「翻訳者の名前さえ書いておけば本人翻訳で通る、と知っていれば、あんなに身構える必要はなかった」とのことでした。

#### 【現場のリアル】家族全員分をまとめて父親の口座に送金していたため、扶養に入れられなかった実例

別の製造業の会社で経理を担当している方の話です。ある社員が母国の父・母・弟の3人を扶養に入れたいと申請してきましたが、実際の送金記録を確認すると、毎月まとめて父親名義の口座へ一括送金していることが分かりました。

送金関係書類は、扶養に入れたい親族一人ひとりの名義口座への個別の送金でなければ、その親族分の証拠として認められません。父親宛の送金記録だけでは、母や弟の生活費に充てたことを客観的に示せないためです。結局その社員は、父親のみを扶養控除の対象とし、母と弟については翌年から個別の口座へ分けて送金するよう改めることになりました。「家族の代表者にまとめて送っていれば大丈夫」という思い込みは、実務では通用しません。


3. 租税条約に関する届出書で所得税が軽減・免除されることがある

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日本と母国との間で租税条約が締結されている場合、条約の定めに従って「租税条約に関する届出書」を提出することで、給与や報酬にかかる所得税が軽減または免除される特例があります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「A3-9 租税条約に関する届出(自由職業者・芸能人・運動家・短期滞在者の報酬・給与に対する所得税及び復興特別所得税の免除)」の案内では、届出書は『報酬又は給与の支払者を経由して、その支払者の所轄税務署長に提出することになっています』とされています。
出典:国税庁「A3-9 租税条約に関する届出」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/1648_45.htm

この届出書は本人が単独で税務署へ持ち込むものではなく、給与の支払者、つまり勤務先の会社を経由して提出する仕組みになっています。対象になるかどうかは相手国との条約内容や滞在目的によって細かく異なるため、留学生や実習生として来日している場合は、まず会社の人事部やハローワークの専門相談窓口を通じて確認するのが確実です。

届出書提出までの実務フロー

租税条約の軽減措置を受けるには、会社を通じて次の5ステップで手続きを進めます。

  1. 対象者の母国と日本の間に租税条約があり、給与や報酬に軽減規定があるかを確認する
  2. 会社(給与の支払者)が「租税条約に関する届出書」を作成する
  3. 相手国が発行する居住者証明書など、条約ごとに定められた添付書類を準備する
  4. 会社が届出書を、支払者の所轄税務署長に提出する
  5. 提出日以後に支払う給与から、軽減または免除された税率で源泉徴収する

#### 【現場のリアル】届出書の存在を知らず、数か月分を通常税率で源泉徴収してしまった話

ある機械部品メーカーで、受け入れている実習生の母国と日本との間には租税条約があり、条件を満たせば軽減措置が使えるはずでした。ところが経理担当者が「租税条約に関する届出書」という制度自体を知らず、来日から数か月間は通常どおりの税率で源泉徴収した給与を支払い続けていました。監理団体の担当者からの指摘で初めて制度の存在に気づき、あわてて所轄税務署へ届出書を提出しましたが、提出前にすでに源泉徴収してしまった分の扱いについては、税務署への個別確認が必要になり、その処理だけで数週間を要したといいます。担当者は「入社時のオリエンテーションの段階で、租税条約の対象国かどうかを一覧で確認できていれば良かった」と話していました。


4. 帰国時に受け取る「脱退一時金」は確定申告で税金が戻ってくる

日本での勤務を終えて母国へ帰国する外国人労働者は、それまで納めてきた厚生年金の払い戻しとして「脱退一時金」を請求できます。この脱退一時金は税法上、退職所得として扱われ、支給時には20.42パーセントの所得税及び復興特別所得税があらかじめ源泉徴収されます。

帰国後に確定申告(還付申告)を行うことで、日本人の退職金と同じ計算方法を選択でき、源泉徴収されすぎた分の還付を受けられます。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「退職所得の選択課税の記載例(出国後受け取った退職金)」では、非居住者が退職手当等の支払を受ける場合について『その年中に支払を受けるべき退職手当等の総額について、居住者として受けた場合の税額により計算することを選択することができます』と案内されています。
出典:国税庁「退職所得の選択課税の記載例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kisairei/pdf/taisyokusentaku.pdf

還付申告は、脱退一時金の支払を受けた日の翌年1月1日から5年以内であれば行うことができます。本人がすでに帰国して日本にいないため、実務上は帰国前に日本国内の知人や監理団体の担当者、税理士などを納税管理人として届け出ておき、その納税管理人が代わりに還付申告を行う流れになります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「A1-7 所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続」には、提出時期について『納税管理人を定めたとき、又は出国のときまで』と定められています。
出典:国税庁「A1-7 所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/07.htm

帰国から還付までの5ステップ

脱退一時金の還付は、帰国前の準備から確定申告まで、大きく次の5段階で進みます。

  1. 帰国前に、知人や監理団体の担当者、税理士などを納税管理人として選び、税務署へ選任届出書を提出する
  2. 帰国後、国民年金・厚生年金の被保険者資格を喪失した日から2年以内に、日本年金機構へ脱退一時金を請求する
  3. 支給時に20.42パーセントの所得税及び復興特別所得税が源泉徴収された状態で、指定口座に振り込まれる
  4. 納税管理人が、支払を受けた日の翌年1月1日から5年以内に還付申告(所得税の確定申告)を行う
  5. 退職所得として退職所得控除を適用した税額で再計算され、源泉徴収されすぎた分が還付される

#### 【現場のリアル】帰国後に納税管理人を決めておらず、還付金を受け取るまで半年かかった話

ある監理団体の担当者から聞いた話です。技能実習を終えて帰国したインドネシア出身の実習生が、脱退一時金から引かれた源泉所得税の還付を受けたいと国際電話で相談してきたものの、帰国前に納税管理人の届出を済ませていなかったため、まず日本にいる元の受け入れ企業の担当者を納税管理人に立てる届出書から準備しなければならなかったそうです。

書類のやり取りが国際郵便を挟むため、還付金が実際に振り込まれるまで半年近くかかったといいます。担当者は「帰国が決まった時点で、誰を納税管理人にするか決めて届出書を先に出しておけば、ここまで待たせずに済んだはずだ」と振り返っていました。


5. よくある質問(Q&A)

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書類の翻訳や送金証明でつまずきやすい3つの質問に、国税庁の案内をもとに答えます。

#### Q1. 親族関係書類の日本語訳は、プロの翻訳会社に頼まないといけませんか

本人や会社の同僚が作成した日本語訳で問題ありません。翻訳者の氏名を書類の余白に記載しておくと、あとで確認を求められた際にスムーズです。

#### Q2. 母国へ帰る同僚に現金を託して、家族に手渡ししてもらった場合は送金証明になりますか

手渡しは送金関係書類として認められません。金融機関からの送金や、正規の資金移動業者(Wise、ウエスタンユニオン等)を通じた送金など、記録が残る方法で送る必要があります。

#### Q3. 海外送金サービスのアプリで送った場合、何を会社に提出すればいいですか

送金アプリの画面から「送金完了」を示す明細やPDFをダウンロードして印刷し、会社へ提出します。その際、受取人の氏名がパスポートの記載と一致しているかを事前に確認しておくと、あとで書類の不備を指摘されずに済みます。


まとめ

日本国内で働く外国人労働者・技能実習生も、居住者であれば日本人社員と同じ手続きで年末調整を受けられます。ただし国外に住む家族を扶養に入れるには、親族関係書類と送金関係書類の提出が前提で、とくに30歳以上70歳未満の親族は、留学・障害者・年間38万円以上の送金のいずれかに該当しない限り対象から外れます。外国語の書類には日本語訳の添付が必要ですが、翻訳は本人や同僚が作成したもので足ります。租税条約の対象になる場合は会社を通じた届出で所得税が軽減・免除されることがあり、帰国後は脱退一時金にかかった源泉所得税を還付申告で取り戻せます。いずれの手続きも、帰国や出国が決まった時点で早めに準備しておくことが、あとの手間を大きく減らします。

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