年金をもらいながら働くシニアの年末調整、公的年金等控除と所得金額調整控除(最大10万円)

年金をもらいながら働くシニアの年末調整、公的年金等控除と所得金額調整控除(最大10万円)のイメージイラスト
目次

「65歳になって年金の受給が始まったけれど、会社にはまだ籍がある。年末調整の書類に年金の金額はどう書けばいいんだろう」

「給与明細と同じ時期に、日本年金機構から『公的年金等の源泉徴収票』という封筒が届いた。これ、会社の年末調整とは別に何か手続きがいるということなのか」

60歳や65歳を過ぎても会社で働き続け、同時に老齢厚生年金や老齢基礎年金を受け取っているという人が、この数年で目に見えて増えています。給料と年金、収入の窓口が2つになった瞬間に、年末調整の勝手がこれまでと変わってしまい、戸惑う人は少なくありません。

会社の年末調整は、あくまで会社が把握している給料の分しか処理してくれません。年金の分は会社の書類には出てこないため、年金をもらいながら働く人の多くは、年が明けてから自分で確定申告をする必要が出てきます。そしてこのとき、給与と年金の両方がある人だけに使える「所得金額調整控除」という控除があることを知らないまま確定申告を済ませ、本来受けられるはずの控除を取りこぼしてしまうケースが実際に起きています。

この記事では、公的年金等控除の年齢別の計算方法から、給与と年金の両方がある人向けの所得金額調整控除(最大10万円)の仕組み、会社の年末調整と年明けの確定申告の役割分担まで、国税庁の公式情報にもとづいて整理しました。


1. 公的年金は年齢でボーダーラインが変わる、公的年金等控除の仕組み

年金をもらいながら働くシニアの年末調整、公的年金等控除と所得金額調整控除(最大10万円)の制度・手続きイメージイラスト

年金には給与所得控除のような概念はありませんが、代わりに「公的年金等控除」という控除が用意されており、年金の収入金額からこの控除額を差し引いた残りが、税金の計算対象になる雑所得の金額になります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」では、公的年金等に係る雑所得の計算方法について次のように説明しています。
『公的年金等は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。』
具体的な計算式については『下記の表の年齢の区分および「(a)公的年金等の収入金額の合計額」に対応した「(b)公的年金等に係る雑所得の金額」の計算式を使って算出します』とされています。
出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

公的年金等控除の額は、受給者の年齢が65歳未満か65歳以上かで区分され、さらに年金の収入金額に応じて段階的に変わります(公的年金等以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合)。

年齢区分公的年金等の収入金額公的年金等控除額
65歳未満130万円以下60万円(一律)
65歳未満130万円超〜410万円以下収入金額×25%+27.5万円
65歳以上330万円以下110万円(一律)
65歳以上330万円超〜410万円以下収入金額×25%+27.5万円

同じ国税庁のページには、65歳以上で公的年金等の収入金額が350万円の場合の計算例も示されています。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」の計算例では、次のように示されています。
『3,500,000円×75%-275,000円=2,350,000円』
出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

つまり65歳以上の人であれば、年間の公的年金受給額が330万円以下の間は控除額が110万円で固定されているので、年金収入が110万円以下であれば雑所得はゼロ、年金だけを見れば所得税がかからない状態になります。65歳未満の人は非課税の目安が60万円までとやや小さく、この年齢の境目を知らずに「年金だから税金はかからないはず」と思い込んでいると、65歳未満で年金額の大きい人は思ったより税金がかかっていて驚くことがあります。

#### 【現場のリアル】日本年金機構からの源泉徴収票を初めて見て固まった話

65歳の誕生月に老齢厚生年金の受給が始まったある方の話です。それまで年末調整といえば会社から渡される書類に印鑑を押すだけの作業でしたが、翌年1月、見慣れない日本年金機構の封筒が自宅に届き、中から「公的年金等の源泉徴収票」という書類が出てきたそうです。金額の欄には支払金額と源泉徴収税額が印字されていて、「もう税金が天引きされているなら、これで完結しているのでは」と思い込み、そのまま引き出しにしまってしまったといいます。

ところが翌年、会社の給料と年金の両方の所得を合算すると確定申告が必要になるケースがあることを、たまたま参加した年金セミナーで知り、慌てて前年分の源泉徴収票を引っ張り出して確認したそうです。本人は「会社の源泉徴収票と年金の源泉徴収票、2枚とも税務署に持っていかないと話が終わらないということを、誰も教えてくれなかった」と振り返っていました。年金の受給が始まった最初の年は、この2枚目の書類の存在そのものに気づかず、机の中で眠らせてしまう人が実は少なくありません。


2. 給与と年金の両方があるからこそ使える、所得金額調整控除(最大10万円)

平成30年度の税制改正で給与所得控除と公的年金等控除がそれぞれ10万円ずつ引き下げられた際、給与と年金の両方を受け取っている人だけが実質的に増税の影響を二重に受けてしまう問題が指摘され、その調整のために新設されたのが所得金額調整控除です。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1411 所得金額調整控除」では、給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方がある人について、次のように説明しています。
『その年分の給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、その合計額が10万円を超える者』が対象となり、控除額は
『{給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円)+公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円』
の計算式で求めると定められています。
出典:国税庁「No.1411 所得金額調整控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1411.htm

根拠となる条文は租税特別措置法第41条の3の11および第41条の3の12です。式だけを見ると分かりにくいので、具体的な数字で追ってみます。給与年収200万円、公的年金受給額150万円、65歳以上の人のケースです。

手順内容金額
1給与所得=給与年収200万円-給与所得控除68万円132万円
2控除計算に使う給与側の金額(10万円が上限のため)10万円
3年金雑所得=年金150万円-公的年金等控除110万円40万円
4控除計算に使う年金側の金額(10万円が上限のため)10万円
5所得金額調整控除額=(10万円+10万円)-10万円10万円(満額)
6圧縮後の給与所得=132万円-10万円122万円

給与側も年金側もそれぞれ10万円を超えている場合は、この控除は自動的に上限の10万円まで満額適用されます。給与所得132万円がそのまま課税対象になるのではなく、この10万円が差し引かれた122万円が最終的な給与所得として扱われる、という流れです。

なお、この所得金額調整控除は「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」と名前も条文の位置も別立てで、会社に提出する年末調整の申告書では通常「子どもや特別障害者を扶養している人」向けの欄しか用意されていません。年金と給与の両方がある人向けの所得金額調整控除は、会社の年末調整では処理されず、年明けの確定申告で自動的に計算される仕組みになっています。

#### 【現場のリアル】所得金額調整控除の存在を知らず確定申告をやり直しかけた話

給与年収230万円のパート勤務と、老齢基礎年金・老齢厚生年金あわせて年160万円を受け取っていた65歳の方の話です。確定申告会場で申告書を作成した際、市販の申告ソフトを使わず手書きで済ませようとしたところ、所得金額調整控除の欄をどう埋めればよいのか分からず、そのまま空欄で提出してしまったそうです。

後日、還付金の通知額が思っていたより少ないことに気づき、税務署の相談窓口に電話をかけたところ、「給与と年金の両方がある方には所得金額調整控除という制度があります、申告書の内容を確認させてください」と案内を受けたといいます。結局、更正の請求という形で申告をやり直すことになり、数万円分の還付が追加で戻ってきたそうです。本人は「年末調整の書類には出てこない控除だったので、そんな制度があること自体を知らなかった、窓口で聞いていなければそのまま損をしていた」と話していました。所得金額調整控除は、確定申告書を作成する際に給与所得と年金の雑所得を正しく入力しさえすれば自動計算される仕組みなので、申告ソフトやe-Taxを使って入力する分には取りこぼしにくいのですが、手書きや自己流の計算で済ませようとすると見落としやすい控除だという実例です。


3. 会社の年末調整と、年明けの確定申告、それぞれの役割分担

年金をもらいながら働くシニアの年末調整、公的年金等控除と所得金額調整控除(最大10万円)の計算・シミュレーションイメージイラスト

給料と年金の両方がある人にとって、年末調整と確定申告は別の役割を持つ2つの手続きです。会社の年末調整は、あくまで会社が支払っている給料の分だけを対象に、11月から12月にかけて行われます。年金の金額を年末調整の書類に書く欄はなく、記入する必要もありません。

時期手続き内容
11月〜12月会社の年末調整給料のみを対象に実施。年金の金額は記入不要
翌年1月年金の源泉徴収票が届く日本年金機構から「公的年金等の源泉徴収票」が郵送される
翌年2月〜3月確定申告給与と年金を合算して申告。所得金額調整控除が自動適用される

年金をもらいながら会社で働いている人が確定申告を必要とする根拠は、給与以外の所得が一定額を超える人には確定申告が義務づけられているという国税庁の規定にあります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」では、確定申告が必要な人の一つとして次のように説明しています。
『給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得及び退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人』
出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm

年金の雑所得は、この「給与所得及び退職所得を除く各種の所得」に含まれます。前述のとおり65歳以上の人でも年金収入が110万円を超えれば雑所得が発生するため、勤務先の給料が1か所からのみで年末調整を受けていても、年金の雑所得が20万円を超えていれば確定申告が必要になる人がほとんどです。

会社の年末調整で使う「所得金額調整控除申告書」は、23歳未満の扶養親族がいる人や、本人・配偶者・扶養親族が特別障害者に該当する人向けの別の制度の申告書です。年金と給与の両方があることを理由にこの申告書へ何かを記入する欄は用意されていません。年金受給者が受けられる所得金額調整控除は、年明けの確定申告(書面またはe-Tax)で給与と年金の金額を正しく入力すれば、自動的に計算・適用されます。

#### 【現場のリアル】年末調整の担当者に年金のことを聞いて驚かれた話

年金を受け取りながら週4日のパートで働いているある方が、11月の年末調整の時期に、会社の総務担当者へ「年金の分もこの書類に書くんですよね」と尋ねたことがあります。担当者からは「うちで把握しているのは給料だけなので、年金の金額はこちらでは分かりません、確定申告で別途手続きしてください」と説明を受け、拍子抜けしたそうです。

それまで年末調整さえ終われば税金の手続きはすべて完了するものだと思い込んでいたため、年が明けてから改めて確定申告をしなければならないという事実に軽くショックを受けたといいます。本人は「年末調整と確定申告が別物だという説明を、もっと早い段階で受けておきたかった」と話していました。会社の総務担当者も年金の金額までは把握していないことがほとんどなので、年金受給後の最初の年末調整では、自分から「年金がある場合の手続きはどうなりますか」と一声確認しておくと、年明けの手続き漏れを防ぎやすくなります。


4. 年金雑所得の速算表、収入金額から一気に計算する

65歳以上の人を対象に、公的年金等の収入金額の区分ごとに、雑所得の金額を求める計算式をまとめました。

65歳以上の年金収入金額公的年金等控除額年金に係る雑所得の計算式
110万円以下全額控除0円(所得ゼロ)
110万円超〜330万円未満110万円年金収入-110万円
330万円〜410万円未満年金額×25%+27.5万円年金収入×75%-27.5万円
410万円〜770万円未満年金額×15%+68.5万円年金収入×85%-68.5万円

この表の金額は、公的年金等以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の人を前提にしています。不動産所得や事業所得など年金・給与以外の所得が大きい人は、国税庁のページに掲載されている別区分の速算表を確認する必要があります。


5. よくある質問

年金をもらいながら働くシニアの年末調整、公的年金等控除と所得金額調整控除(最大10万円)の完了・申告イメージイラスト

Q1. 年金をもらっていれば、会社の年末調整は受けなくてもいいですか。

会社の年末調整は必ず受けてください。年末調整で基礎控除や社会保険料控除が正しく適用された給与の源泉徴収票を受け取り、それを年明けの確定申告で年金の源泉徴収票と一緒に使います。年末調整を省略してしまうと、確定申告の際に基礎控除や社会保険料控除の情報を自分で一から入力し直すことになり、手間が増えます。

Q2. 確定申告をすると、税金は戻ってきますか。

給与と年金それぞれから天引きされていた源泉徴収税額と、本来納めるべき税額との差によって、還付になる場合と追加で納税になる場合の両方があります。生命保険料控除や医療費控除など、会社の年末調整では反映しきれなかった控除を確定申告で追加すると、還付を受けられる可能性が高くなります。

Q3. 年金の源泉徴収票をなくしてしまいました。どうすればいいですか。

日本年金機構の「ねんきんネット」で再発行の手続きができるほか、年金事務所や街角の年金相談センターの窓口、電話でも再発行を依頼できます。確定申告の時期は問い合わせが集中しやすいため、手元に見当たらないことに気づいた時点で早めに手続きを始めておくと安心です。

Q4. 所得金額調整控除は、自分で申請しないと受けられませんか。

会社の年末調整では対応していませんが、確定申告書に給与所得控除後の給与の金額と公的年金等に係る雑所得の金額をそれぞれ正しく入力すれば、要件を満たす限り自動的に計算されます。国税庁のe-Taxや確定申告書等作成コーナーを使って入力する場合、計算漏れはほぼ起きません。手書きで申告書を作成する場合は、この記事の計算手順に沿って自分で金額を出す必要があります。


まとめ、年金と給料の両方があるからこそ見落としやすい控除がある

65歳以上の人であれば、公的年金の受給額が年間110万円以下の間は雑所得がゼロになり、年金にかかる税金は発生しません。給料と年金の両方を受け取っている人は、これに加えて最大10万円の所得金額調整控除が上乗せで適用されます。ただしこの控除は会社の年末調整では処理されず、年明けの確定申告で給与と年金を合算して申告して初めて反映される仕組みです。

おすすめ便利ツール
スマホで5分!年末調整の申告書を自動作成

会社では給料のみで年末調整を済ませ、日本年金機構から届く公的年金等の源泉徴収票を手元に用意したうえで、翌年2月から3月の確定申告で2つの所得を合算する。この順番さえ押さえておけば、年金をもらいながら働くことで生じる控除を取りこぼさずに済みます。年末調整の書類作成をスマホで手早く終わらせたい方は、無料で使える『書けた年末調整』もあわせてご利用ください。

無料で申告書を作成してみる
この記事を友達や同僚にシェアする

年末調整で迷っている方に役立つ情報を届けてみませんか?

🔍 お悩み・キーワード検索

他の年末調整の疑問・用語を調べる

全160本の解説コラムから、知りたい単語ですぐに見つけられます(入力すると下に即時表示されます)。

お悩み解決コラム一覧(全160記事)を見る 申告書作成ツール(するんと入力)をはじめる トップページへ戻る
記事URLをクリップボードにコピーしました!