休職中に支払った医療費や社会保険料を年末調整・確定申告で取り戻す方法(社会保険料控除・医療費控除の5%特例・配偶者への医療費集約)

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目次

「休職中に入院費や通院費でまとまった医療費を払った。少しでも税金から取り戻す方法はないだろうか」

「給料が止まっている間も会社へ毎月振り込んでいた社会保険料は、年末調整で控除できるのだろうか」

病気やケガ、メンタル不調による休職期間は、収入がほぼゼロに近づく一方で、病院の治療費や薬代、そして休職中も発生し続ける健康保険料・厚生年金保険料の支払いが重なり、家計への負担が一番大きくなる時期です。傷病手当金である程度の収入は補填されるものの、通常の給料と比べれば手取りは大きく目減りします。

ただ、税法上の控除制度を正しく使えば、休職中に自分で支払った社会保険料や医療費を根拠にして、休職前に給料から天引きされていた所得税の一部を年末調整や確定申告で取り戻すことができます。さらに休職によって本人の所得が下がっている場合は、医療費控除の足切り額が通常より低くなる特例や、働いている配偶者の確定申告に医療費をまとめて申告する方法も使えます。この記事では、それぞれの制度の正確な計算式と根拠を、国税庁および全国健康保険協会の公式情報にもとづいて整理しました。


1. ひと目でわかる、休職中の出費を取り戻す3つのルート

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【休職中の出費を取り戻す3つのルート】

1. 会社へ振り込んだ社会保険料年末調整の「社会保険料控除」欄に
記入すれば、支払った全額がそのまま
所得控除になる
2. 病院・薬局へ払った医療費確定申告の「医療費控除」の対象。
所得が下がっていれば足切り額も
下がる(5%特例)
3. 配偶者の確定申告への医療費集約生計を一にする配偶者の申告にまとめ
て申告することもできる

いずれも「本人の確定申告で使い切れなかった控除を、どう組み合わせて手取りに反映させるか」がポイントになります。以下、それぞれ根拠となる条文から順に確認していきます。


2. 会社へ振り込んだ社会保険料の年末調整の書き方

休職中に給料が支払われない期間、健康保険料・厚生年金保険料は会社が立て替えるのではなく、多くの場合は本人が自分の銀行口座から会社へ振り込む形で支払うことになります。この振り込んだ保険料は、社会保険料控除として全額が所得控除の対象になります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1130 社会保険料控除」では、次のように説明されています。
『納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額についてその納税者に社会保険料控除が適用されます』
また控除できる金額については、『その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金から差し引かれた金額』の全額と説明されています。
出典:国税庁「No.1130 社会保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm

社会保険料控除の対象になるのは、健康保険、厚生年金保険、国民年金、国民健康保険、介護保険といった保険料で、休職中に自分の口座から会社宛てに振り込んだ健康保険料・厚生年金保険料もこれに含まれます。年収が下がって税率が低くなっていたとしても、支払った金額の一部だけが控除されるのではなく、支払った全額がそのまま控除額になる点が、他の控除制度と比べても分かりやすい特徴です。

年末調整の「給与所得者の保険料控除申告書」の社会保険料控除欄には、保険料の種類、支払先の名称、支払った本人の氏名、そして本年中に支払った金額の合計を記入します。休職中に自分で振り込んだ分は給与明細から天引きされているわけではないため、会社の給与システムが自動計算してくれる社会保険料控除とは別枠で、振込明細や会社から送られてくる納付額のお知らせをもとに、自分で金額を書き込む必要があります。

【現場のリアル】休職中に立て替えた社会保険料の振込明細を集めるのに苦労した話

メンタル不調で半年ほど休職していたという方の話です。休職中は毎月、会社の経理担当から届く払込用紙をもとに、コンビニや銀行の窓口で保険料を振り込んでいたそうです。ところが年末調整の時期になって「今年支払った社会保険料の合計を書いてください」と言われ、いざ集計しようとしたところ、振込のたびに受け取っていたはずの領収控えが数枚見当たらないことに気づいたといいます。体調が悪い時期は正直それどころではなく、封筒ごと引き出しに突っ込んで確認していなかったそうで、慌てて通帳の記帳履歴を1ページずつ遡って振込日と金額を拾い出す作業に丸一日かかったとのことでした。最終的には経理担当に「今年支払っていただいた保険料の合計額が分かる書類を発行してもらえますか」と相談したところ、年間の納付額をまとめた一覧をすぐに用意してもらえ、「最初からこの一覧をお願いすればよかった、体調が悪いなかで通帳を遡るのは本当につらかった」と振り返っていました。休職中に保険料を振り込む形になっている場合は、年末に自分で集計するより先に、会社の経理や総務に年間合計額の一覧を出してもらえないか聞いてみる方が確実です。


3. 医療費控除の足切り額が下がる「5%特例」の正確な計算式

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医療費控除は、支払った医療費が年間10万円を超えないと使えないと思われがちですが、これは所得が一定以上ある人の話です。休職によって年収が下がっている人は、この足切り額そのものが引き下げられる特例が適用されます。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」では、医療費控除の金額について次のように説明されています。
『医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補塡される金額)-10万円』
そのうえで、『その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%の金額』を差し引くと説明されています。
出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

つまり正確な計算式は次のとおりです。

【医療費控除の計算式】
医療費控除額 =(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金等で補塡される金額)
−(10万円 と 総所得金額等の5% のうち、いずれか低い方)
※控除額の上限は200万円

休職によって年間の総所得金額等が200万円未満まで下がっていれば、10万円ではなく総所得金額等の5%相当額が足切り額になります。たとえば休職の影響でその年の総所得金額等が140万円だった場合、足切り額は140万円×5%=7万円です。年間の医療費(保険金等の補填を除く)が15万円かかっていれば、控除額は15万円−7万円=8万円になります。通常の10万円ルールなら医療費が10万円を超えないと1円も控除されませんが、5%特例が適用される所得水準であれば、10万円未満の医療費でも控除の対象になり得るということです。

なお、ここで差し引く「保険金などで補塡される金額」は、実際に支払った医療費を上回っては差し引かれません。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「【確定申告書等作成コーナー】生命保険や社会保険などで補てんされる金額の入力方法」では、保険金等の対象について次のように説明されています。
『生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などが該当します』
また同ページでは、『保険金などで補塡される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます』とも説明されており、補填額が対象の医療費より多くても、他の医療費からは差し引かないとされています。
出典:国税庁「【確定申告書等作成コーナー】生命保険や社会保険などで補てんされる金額の入力方法」 https://www.keisan.nta.go.jp/r3yokuaru/ocat2/ocat22/cid172.html

【現場のリアル】高額療養費の払い戻しと医療費控除の計算で混乱した話

入院を伴う手術で1ヶ月ほど休職したという方の話です。退院後しばらくして、健康保険から高額療養費として十数万円が払い戻されてきたのはありがたかったものの、確定申告の時期になって医療費控除の計算をしようとしたところ、「病院の窓口で払った金額をそのまま医療費として書いていいのか、それとも高額療養費で戻ってきた分を引かないといけないのか」で完全に手が止まってしまったそうです。領収書の金額をそのままエクセルに入力して合計を出したあと、高額療養費の通知書を見つけて金額を照らし合わせ、同じ入院にかかった分だけを差し引いて計算し直したものの、通院と入院が複数月にまたがっていたため、どの月の高額療養費がどの領収書に対応するのか整理するのに何度も表を作り直したといいます。「病院ごと、月ごとに高額療養費の通知が別々に届くので、あとから全部を突き合わせるのが一番大変だった」と話しており、退院直後にその場で領収書と高額療養費の通知を1セットにしてクリップで留めておけばよかった、と振り返っていました。高額療養費や入院給付金がある場合は、対応する医療費ごとに補填額を紐づけて記録しておくと、確定申告の時期になって慌てずに済みます。


4. 生計を一にする配偶者の確定申告に医療費を集約する方法

休職中は本人の所得税がそもそも少ない、あるいは源泉徴収されていないケースも多く、その場合は本人名義で医療費控除を申告しても還付される税金はわずかか、ゼロになってしまいます。こうした場合、生計を一にする配偶者の確定申告にまとめて医療費を計上できる仕組みがあります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「【確定申告書等作成コーナー】共働き夫婦の夫が妻の医療費を負担した場合」では、次のように説明されています。
『医療費控除は、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合に適用することとされていますので、その医療費を実際に支払った方の医療費控除の対象となります』
出典:国税庁「【確定申告書等作成コーナー】共働き夫婦の夫が妻の医療費を負担した場合」 https://www.keisan.nta.go.jp/r3yokuaru/cat2/cat22/cat221/cid485.html

ポイントは「誰の医療費か」ではなく「誰が実際に支払ったか」で申告者が決まるという点です。休職中の本人にかかった医療費であっても、家計が同じ配偶者がその費用を実質的に負担しているのであれば、配偶者の確定申告にまとめて計上できます。医療費控除には対象となる親族の所得要件がないため、休職中で所得が少ない、あるいはない本人の医療費であっても、配偶者側の申告に含めることに支障はありません。

税率は所得が高い人ほど上がる累進課税のため、同じ医療費控除額でも、税率の高い配偶者側で申告した方が還付される所得税額は大きくなります。仮に配偶者の課税所得に適用される税率が20%、休職中の本人の医療費が年間30万円で足切り10万円を差し引いた控除額が20万円だったとすると、配偶者の確定申告に含めることで所得税だけで4万円(20万円×20%)程度の還付が見込める計算になります。実際の還付額は配偶者の所得水準や他の控除の状況によって変わるため、あくまで目安としての試算です。

【現場のリアル】医療費控除をどちらの名義で申告すべきか夫婦で相談した話

夫がうつ症状で数ヶ月休職していたという家庭の話です。確定申告の時期になり、夫の通院費と処方薬代の領収書を整理していたところ、妻から「これって私の確定申告に入れた方がいいんじゃない」と提案されたそうです。夫は最初、自分が実際に病院へ行って払ったお金なのだから自分名義で申告するのが当然だと思い込んでいたといい、「人の医療費を自分の申告に入れていいものなのか」と半信半疑だったといいます。念のため税務署の電話相談センターに問い合わせたところ、「生計が同じご家族の医療費であれば、実際にその費用を負担している方の申告にまとめていただいて構いません」と説明され、家計を管理していた妻の口座から治療費を支払っていた実態があったことから、妻の確定申告に集約することにしたそうです。結果として、夫はその年ほとんど所得税を納めていなかったため、もし夫名義で申告していたら還付額はごくわずかで終わっていたところ、妻の申告に含めたことで数万円単位の還付になったといい、「知らずに自分の名義だけで申告していたら大損するところだった」と話していました。


5. 傷病手当金は医療費控除の計算から差し引く必要があるか

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休職中の収入源として傷病手当金を受け取っている場合、「これは医療費控除の計算上、保険金等で補填される金額として差し引く必要があるのではないか」という疑問を持つ方が少なくありません。まず傷病手当金がどういう性質の給付なのか、制度の目的から確認します。

【全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式見解・1次情報】
全国健康保険協会「傷病手当金」では、制度の趣旨について次のように説明されています。
『傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です』
出典:全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html

一方、国税庁が医療費控除の計算で差し引く対象として案内している「保険金などで補塡される金額」は、前述のとおり生命保険の入院給付金や健康保険の高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など、特定の医療費の支払いに対応して支給される給付に限られています。傷病手当金はこの一覧には含まれておらず、そもそも特定の治療費や入院費を補填する目的の給付ではなく、休業中の生活費を保障するための所得補填として支給されるものです。したがって、傷病手当金として受け取った金額を、医療費控除の計算上「保険金等で補塡される金額」として医療費から差し引く必要はありません。実際に支払った治療費・薬代の合計から差し引くのは、あくまでその治療や入院に対応して支給された給付金・一時金だけです。


6. よくある質問(Q&A)

Q1. 休職中に払った社会保険料の領収書や振込明細を紛失してしまいました。

会社の経理・総務部門に、その年に本人が支払った保険料の合計額が分かる書類(納付額のお知らせや一覧)を発行してもらえないか相談してみてください。給与天引き分と違い、休職中に個人で振り込んだ分は会社側でも把握しているケースが多く、通帳を1件ずつ遡るより早く解決できることがあります。

Q2. 高額療養費として払い戻された分はどう計算すればよいですか。

窓口で実際に支払った医療費の金額から、同じ入院・治療について高額療養費として健康保険から戻ってきた金額を差し引いて計算します。戻ってきた金額が対応する医療費より多い場合でも、余った分を他の医療費からさらに差し引く必要はありません。

Q3. 心療内科のカウンセリング代や診断書代は医療費控除の対象になりますか。

医師による診療・治療、および治療の一環として医師の指示にもとづいて行われるカウンセリングにかかった費用は医療費控除の対象です。一方、会社に提出するためだけの診断書作成手数料のように、治療目的ではない証明書発行の費用は対象外です。

Q4. 本人の確定申告と配偶者の確定申告、どちらで申告すればよいか迷います。

医療費控除は「実際にその医療費を支払った人」の申告に計上するのが原則です。休職中で本人の所得税額が少ない、またはゼロの場合は、家計を管理していて所得のある配偶者が実質的に費用を負担しているのであれば、配偶者の確定申告にまとめて計上した方が還付額は大きくなりやすくなります。夫婦それぞれの所得や源泉徴収の状況を確認したうえで判断してください。

Q5. 確定申告の期限(原則3月15日)を過ぎてしまいました。

税金が戻ってくる還付申告であれば、3月15日を過ぎても、対象となる年の翌年から5年間はいつでも提出できます。休職中で体調や書類集めに時間がかかる場合は、無理に期限内にまとめようとせず、落ち着いて書類を揃えてから申告する方が確実です。


まとめ、休職中の出費は制度を知っているかどうかで手取りが変わる

会社へ自分で振り込んだ社会保険料は、年末調整の社会保険料控除欄に記入すれば支払った全額がそのまま所得控除になります。医療費控除は、通常は年間10万円が足切り額ですが、休職で総所得金額等が200万円未満まで下がっていれば、10万円ではなく総所得金額等の5%相当額が足切り額になり、より少ない医療費でも控除の対象になります。本人の所得税額が少なく控除を使い切れない場合は、生計を一にする配偶者が実際に医療費を負担しているのであれば、配偶者の確定申告にまとめて計上することもできます。傷病手当金は生活費を保障するための給付であり、医療費控除の計算上、医療費から差し引く必要はありません。

体調がすぐれないなかで領収書を集めたり計算式を追ったりするのは決して楽な作業ではありませんが、制度の仕組みと根拠を知っているかどうかで、休職期間中の手取りへの影響はかなり変わってきます。

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