「今年離婚してひとり親になったけれど、年末調整はどう書けばいいのか」
「年の途中で配偶者と死別した場合、その年の配偶者控除はどうなるのか」
離婚や死別という大きな出来事の直後は、生活環境の変化への対応で手一杯になり、年末調整の手続きまで気が回らないという方は少なくありません。しかし、日本の税制には、ひとりで子どもを育てる親や、配偶者と離婚・死別した人を支援するための「ひとり親控除」「寡婦控除」という所得控除が用意されています。ここでは、離婚と死別で扱いが異なる点も含めて、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。
1. 離婚と死別で、その年の配偶者控除の扱いが違う

所得税法第85条の規定により、配偶者控除の判定は原則としてその年12月31日の現況によりますが、判定対象となる人がその時点ですでに死亡している場合は、死亡した時点の現況で判定するという例外があります。
この違いにより、年の途中で離婚した場合は、12月31日時点で戸籍上独身であるため、その年の配偶者控除は0円になります。一方、年の途中で配偶者と死別した場合は、亡くなった時点ではまだ配偶者がいたとみなされるため、その年の配偶者控除を満額受けることができます。
2. ひとり親控除。性別に関係なく一律35万円
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1171 ひとり親控除」では、その年12月31日の現況で、婚姻をしていない、または配偶者の生死が明らかでない人のうち、生計を一にする子(総所得金額等が48万円以下)がいて、本人の合計所得金額が500万円以下であるなどの要件を満たす人について、35万円の所得控除を受けられると定められています。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1171「ひとり親控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm
この控除は令和2年分の所得税から新設された制度で、離婚・死別だけでなく、婚姻歴のない未婚のひとり親も対象に含まれる点が大きな特徴です。男女どちらでも要件は同じで、本人の合計所得金額が500万円以下(給与収入ではおよそ678万円以下)であること、事実婚の関係にある人がいないこと、生計を一にする子どもの所得が48万円以下(給与収入ではアルバイト年収103万円以下)であることが条件です。
3. 寡婦控除。子ども以外の扶養親族がいる女性が対象

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1170 寡婦控除」では、ひとり親控除の対象とならない人のうち、夫と死別または生死不明のあとに婚姻していない人、あるいは夫と離婚したあとに婚姻しておらず子ども以外の扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下であれば、27万円の所得控除を受けられると定められています。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1170「寡婦控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1170.htm
寡婦控除は女性を対象とした制度で、子どもがいない、または子ども以外の親族(高齢の親など)を扶養している場合に該当します。ひとり親控除と寡婦控除は重複して適用されず、子どもがいる場合は控除額の大きいひとり親控除が優先されます。
4. 申告書「扶養控除等申告書」の記入箇所
ひとり親控除や寡婦控除は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の中段にある「障害者、寡婦、ひとり親及び勤労学生」の欄で申告します。該当する項目にチェックを入れ、事実欄に離婚または死別の年月日、生計を一にする子どもの氏名、本人の合計所得金額の見積額を記入します。子どもが16歳未満の場合は、用紙の最下段にある「住民税に関する事項」の欄にも子どもの氏名と生年月日を忘れずに記入してください。ここへの記入は控除額には影響しませんが、自治体の住民税非課税判定や各種行政サービスの算定基礎になります。
5. 現場のリアル。離婚を会社に知られたくなかった相談

ある企業の総務担当者は、離婚した女性社員から「ひとり親控除を受けたいが、会社に知られたくない」と相談を受けたことがあるといいます。年末調整の書類には離婚の事実や子どもの情報を書く欄があるため、担当者に離婚したことが伝わってしまうのを避けたかったそうです。この社員には、年末調整では申告せず、翌年2月16日以降にスマートフォンから確定申告(還付申告)をおこなう方法を案内しました。会社を通さずに税務署へ直接申告すれば、勤務先に事情を知られることなく同じ控除を受けられます。担当者は「制度自体は誰でも使えるのに、会社に知られる不安から申告をためらう人は一定数いる」と話していました。
6. 過去の申告漏れは5年前まで遡って取り戻せる
「数年前に離婚したが、当時の年末調整でひとり親控除にチェックを入れ忘れていた」という場合でも、諦める必要はありません。所得税の還付申告は、法定申告期限から5年間さかのぼって提出できます。過去の源泉徴収票が手元にあれば、税務署の窓口またはe-Taxで申告し、払いすぎた税金の還付を受けられます。
7. よくある質問
元配偶者から受け取る養育費は、所得制限の判定に含まれますか
含まれません。養育費は、扶養義務の履行として通常必要と認められる範囲であれば非課税所得にあたります。ひとり親控除の所得制限(合計所得500万円以下)の計算に、養育費の金額を加える必要はありません。
別居中で離婚が成立していない場合、ひとり親控除は使えますか
使えません。ひとり親控除は「婚姻をしていない」ことが要件であり、法律上の離婚が成立していない別居状態では、婚姻関係が継続しているとみなされます。
子どもが就職して扶養から外れた年は、控除はどうなりますか
その年の12月31日時点で子どもの合計所得金額が48万円を超えていれば、ひとり親控除の要件である「生計を一にする子」の所得要件を満たさなくなります。子どもが年の途中で就職し、年収が要件を超える見込みになった時点で、控除の対象から外れる可能性があることを確認しておいてください。
離婚や死別のあとの手続きは、精神的な負担が大きいなかで細かい書類まで気が回らないことも多いと思います。
『書けた年末調整』は、質問に答えていくだけでひとり親控除・寡婦控除に該当するかどうかを自動で判定し、申告書に書く内容まで示してくれます。会社に相談しにくい場合の確定申告の進め方についても案内しています。
まとめ
離婚した年は配偶者控除が使えませんが、死別した年は満額の配偶者控除を受けられます。ひとり親控除は性別を問わず35万円、寡婦控除は女性のみ27万円で、両者は重複適用されません。会社に事情を知られたくない場合は、年末調整では申告せず、翌年の確定申告で還付を受けることもできます。過去の申告漏れは5年前まで遡って取り戻せます。