「今年結婚して入籍したけれど、年末調整の書類には何を書けばいいのか」
「12月に結婚する予定だけど、年の途中の結婚だと配偶者控除は月割りになってしまうのか」
結婚した年は、新生活の準備や引っ越しで何かと出費がかさむ時期ですが、年末調整を正しく申告すれば数万円から十数万円の還付を受けられる可能性がある年でもあります。日本の税法には、その年の12月31日に婚姻関係にあれば、たとえ大晦日の入籍であっても1年分の配偶者控除が満額適用されるという規定があります。一方で、配偶者の年収を結婚前の分も含めて正しく計算しないと、思わぬ落とし穴にはまることもあります。ここでは、この二つのポイントを国税庁の一次情報にもとづいて整理します。
1. 判定は「12月31日の現況」でおこなわれる

【国税庁の公式見解・1次情報】
所得税法第85条の規定により、控除対象配偶者や扶養親族に該当するかどうかの判定は、その年12月31日の現況によります。判定対象となる人がその時点ですでに死亡している場合は、死亡の時の現況によります。
出典:所得税法第85条/国税庁タックスアンサー「No.1191 配偶者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
これは「年の途中で結婚したら控除が月割りになる」という誤解を否定する規定です。1月に入籍しても、7月に入籍しても、12月31日に入籍しても、その年の12月31日時点で法律上の夫婦であれば、控除額は同じ満額38万円になります。入籍した日によって控除額に差はつきません。
2. 落とし穴は「結婚前の年収」も合算される点
結婚した年の年末調整で見落とされやすいのが、配偶者の年収の計算範囲です。「結婚後の給料だけを見ればいい」と思い込みがちですが、判定の基準は結婚した日ではなく、その年の1月1日から12月31日までの合計収入です。
たとえば、妻が9月まで正社員として働き、給与を250万円得たあと10月に寿退社して専業主婦になったとします。10月以降は無収入でも、1年間の合計は250万円であり、配偶者控除の対象となる103万円はもちろん、配偶者特別控除の上限である201万6千円も超えているため、その年の夫の年末調整では配偶者控除・配偶者特別控除のどちらも使えません。翌年以降、妻の年収が要件内に収まれば、その年から控除の対象になります。
3. 結婚に伴う3つの変更手続き

年末調整の書類で確認すべき点は次の3つです。
改姓した場合は、新しい戸籍上の氏名で申告書を記入します。引っ越しをした場合は、その年の1月1日時点の住所ではなく、申告書提出時点の現住所を記入するのが実務上の一般的な扱いです(住民税の課税は1月1日時点の住所地の自治体が行うため、会社によっては両方の確認を求められることがあります)。そして、配偶者の年収が要件を満たすのであれば、配偶者控除等申告書に記入して申告します。
4. 会社の提出締め切りに入籍が間に合わない場合
年末調整の書類の締め切りは11月中旬から下旬に設定している会社が多く、12月に入籍を控えている人はタイミングが合わないことがあります。この場合、二つの対処法があります。
一つは、会社の総務や人事に「12月に入籍予定です」と事前に相談し、配偶者欄をあらかじめ記入したうえで提出を認めてもらう方法です。多くの会社でこの対応が可能です。もう一つは、11月時点ではいったん独身として提出し、入籍後の翌年2月16日以降に税務署へ確定申告(還付申告)をおこなって配偶者控除分を取り戻す方法です。会社に再提出の手間をかけたくない場合は、こちらのほうが確実です。
5. 現場のリアル。11月の書類提出日と入籍日のはざまで

12月に入籍を控えていたある社員は、11月の年末調整の締め切り日、独身のまま申告書を出すべきか、婚約者の名前を書いてしまってよいものか分からず、総務の窓口で立ち尽くしていたそうです。総務担当者に相談したところ「婚姻届の受理予定日が分かっているなら、その前提で記入してもらって構いません。もし年内に入籍できなかった場合は、年明けに訂正してください」と説明を受け、無事に配偶者欄を記入して提出できました。担当者いわく、こうした相談は年末調整の時期になるとほぼ毎年寄せられるとのことで、「聞かずに独身のまま出してしまい、あとから確定申告で還付を受け直すことになった社員もいる」と話していました。迷ったときは、まず総務に一声かけるのが結局いちばん早い解決になります。
6. 年末調整用紙の記入例
夫が妻を配偶者控除の対象に入れる場合(妻の年収100万円、所得45万円)の記入手順です。
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」の「配偶者の有無」で「有」にチェックし、「源泉控除対象配偶者」欄に妻の氏名、マイナンバー、生年月日、住所を記入します。
- 「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書」の右側(配偶者控除欄)に妻の氏名と所得見積額45万円を記入し、判定欄で該当する区分にチェックを入れ、控除額38万円を記入します。
7. よくある質問
結婚式は挙げましたが、まだ婚姻届を出していません。控除は使えますか
使えません。所得税法上の配偶者控除は、民法上の法律婚(戸籍上の夫婦)であることが条件です。12月31日までに市区町村役場へ婚姻届が受理されている必要があります。
夫婦どちらの名字を名乗っても、控除の手続きに違いはありますか
違いはありません。夫の申告書に妻を配偶者として記入する場合でも、妻の申告書に夫を記入する場合でも、控除額や要件はまったく同じです。
夫より妻の方が年収が高い場合、妻の年末調整で夫を配偶者控除に入れられますか
入れられます。配偶者控除に性別の制限はないため、収入の高い側の申告書に配偶者として記入するほうが、適用される税率が高い分だけ世帯の減税額は大きくなります。
入籍のタイミングと会社の提出締め切りが重なる時期は、何をいつまでに出せばいいのか判断に迷いやすいところです。
『書けた年末調整』は、配偶者の有無や年収を入力するだけで、控除欄に何を書けばいいかを自動で示してくれます。年明けの確定申告が必要になった場合の考え方も、あわせて確認できます。
まとめ
12月31日時点で婚姻関係にあれば、入籍が年のいつであっても配偶者控除は満額適用されます。配偶者の年収は結婚前の分も含めた1年間の合計で判定するため、結婚前に高収入だった場合は注意してください。会社の提出締め切りに入籍が間に合わない場合は、事前相談か翌年の確定申告のどちらかで対応できます。