「配偶者控除と配偶者特別控除、名前が似すぎていて何が違うのか分からない」
「妻のパート年収が103万円を超えたら、夫の控除は0円になるんじゃないの?」
年末調整の書類を前にして、この二つの制度の違いにつまずく方は毎年たくさんいます。「103万円を1円でも超えたら控除がゼロになる」というイメージを持っている人がまだ多いのですが、これは平成29年度の税制改正より前の話です。今の制度では、配偶者の年収が103万円を超えても、150万円までは配偶者特別控除によって配偶者控除とまったく同じ38万円が控除されます。ここでは、二つの制度がどう違うのか、どこまでが満額なのかを、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。
1. 配偶者控除と配偶者特別控除の基本的な違い

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1191 配偶者控除」によれば、控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、民法上の配偶者であり、納税者と生計を一にしており、年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)である人をいいます。控除額は、納税者本人の合計所得金額と配偶者の年齢に応じて13万円から38万円です。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1191「配偶者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1195 配偶者特別控除」によれば、配偶者の合計所得金額が48万円を超えるため配偶者控除の適用が受けられない場合でも、配偶者の合計所得金額が133万円以下(給与収入では201万6千円未満)であれば、所得金額に応じて段階的な控除が受けられます。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1195「配偶者特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
つまり、配偶者控除は「配偶者の年収103万円以下」が対象、配偶者特別控除は「103万円を超えて201万6千円未満」が対象という、隣り合った二つの制度です。控除額の上限はどちらも38万円で、配偶者の年収が103万円のときも140万円のときも、夫(または妻)が受けられる控除額は同じ38万円になります。控除額が実際に減り始めるのは、103万円ではなく150万円を超えたあとです。
2. なぜ配偶者特別控除が作られたのか
かつての税制では、配偶者の年収が103万円を1円でも超えると、配偶者控除の38万円が崖から落ちるようにゼロになっていました。この「103万円の崖」を避けるために、多くのパート主婦が年末になるとシフトを減らして就労調整をしていたことが、社会的な働き控えとして問題視されてきました。
その反省から、103万円を超えても急に控除がなくなるのではなく、150万円までは満額を維持し、そこから201万6千円まで少しずつ減らしていく配偶者特別控除の枠が拡充されました。今では103万円を意識してシフトを削る必要は、控除額の面ではなくなっています。
3. 配偶者の年収別・控除額の早見表

配偶者の給与年収に応じて、控除額がどう変化するかをまとめました(納税者本人の合計所得が900万円以下の場合)。
| 配偶者の給与年収 | 適用される控除 | 控除額 |
|---|---|---|
| 103万円以下 | 配偶者控除 | 38万円(満額) |
| 103万円超〜150万円以下 | 配偶者特別控除 | 38万円(満額) |
| 150万円超〜155万円以下 | 配偶者特別控除 | 36万円 |
| 155万円超〜160万円以下 | 配偶者特別控除 | 31万円 |
| 160万円超〜166.8万円未満 | 配偶者特別控除 | 26万円 |
| 166.8万円以上〜175.2万円未満 | 配偶者特別控除 | 21万円 |
| 175.2万円以上〜183.2万円未満 | 配偶者特別控除 | 16万円 |
| 183.2万円以上〜190.4万円未満 | 配偶者特別控除 | 11万円 |
| 190.4万円以上〜197.2万円未満 | 配偶者特別控除 | 6万円 |
| 197.2万円以上〜201.6万円未満 | 配偶者特別控除 | 3万円 |
| 201.6万円以上 | 適用なし | 0円 |
4. 納税者本人(夫または妻)の年収にも制限がある
配偶者控除・配偶者特別控除を受けるには、控除を受ける側の本人にも所得制限があります。国税庁タックスアンサー「No.1191」の規定により、本人の合計所得金額が900万円(給与収入では1095万円)を超えると控除額が段階的に減り、1000万円(給与収入では1195万円)を超えると控除は一切受けられません。
年収900万円を超えるサラリーマン世帯は多くないため、大半のケースではこの制限を意識する必要はありませんが、共働きで一方が高年収の世帯では確認しておく価値があります。
5. 70歳以上の配偶者がいる場合

配偶者控除には年齢による加算があります。その年の12月31日時点で配偶者が70歳以上の場合、一般の配偶者控除38万円に代わって「老人控除対象配偶者」として48万円の控除が受けられます。配偶者特別控除には、この年齢加算はありません。
6. 現場のリアル。控除の判定欄で固まった総務担当者
ある中小企業の年末調整担当者から聞いた話です。毎年、社員から提出される「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書」の中に、配偶者の年収を「103万円」と丸めて書いてくる人が一定数いるといいます。実際に控除証明書や源泉徴収票を確認すると、配偶者の年収が110万円や120万円だったというケースも珍しくありません。担当者いわく「103万円を境に控除が消えると思い込んでいる人が、書類を大雑把に書く傾向がある」とのことでした。150万円までは同じ38万円が控除されるという制度を知っていれば、正直に正確な年収を書くだけで済むのに、誤解のせいで無駄に神経質になっている社員が多いそうです。年収を少なく偽って申告すると、あとで市区町村からの給与支払報告書と突き合わされて発覚し、追徴課税につながることもあります。正確な見積額を書くことが、結局いちばん手間がかかりません。
7. よくある質問
妻がフリーランスや個人事業主の場合、年収の基準はどう考えますか
給与収入ではなく、売上から必要経費を差し引いた所得金額で判定します。国税庁タックスアンサー「No.1191」「No.1195」のいずれも、判定基準は合計所得金額(給与所得控除を適用しない実質的な利益)です。経費を差し引いた所得が48万円以下なら配偶者控除、48万円超133万円以下なら配偶者特別控除の対象になります。
夫婦どちらも正社員で、お互いに配偶者控除を使い合うことはできますか
できません。配偶者特別控除は夫婦間で互いに受けることができないと、国税庁タックスアンサー「No.1195」に明記されています。双方の年収が201万6千円を超えている場合は、そもそもどちらの側でも適用されません。
年の途中で配偶者が退職した場合、控除はどう判定しますか
その年の1月1日から12月31日までに配偶者が得た給与の合計額で判定します。退職までの給与総額が103万円以下なら配偶者控除、150万円以下なら満額の配偶者特別控除の対象です。
配偶者の所得区分を早見表と照らし合わせて、自分がどこに当てはまるか確認する作業は、慣れていないと意外に時間がかかります。
『書けた年末調整』は、配偶者の年収を入力するだけで該当する控除額を自動で判定します。スマホで質問に答えるだけで、申告書に書く金額まで一気に仕上がります。
まとめ
配偶者の年収が103万円以下なら配偶者控除、103万円を超えて201万6千円未満なら配偶者特別控除が適用されます。控除額が実際に減り始めるのは103万円ではなく150万円を超えてからで、それまでは同じ38万円が控除され続けます。控除を受ける本人の年収が900万円を超えると段階的に控除額が減るため、共働き高年収世帯は本人側の所得制限も確認しておいてください。