11月の年末調整の時期に、生命保険会社から届いたはずのハガキが見当たらない。そんな経験をした人は少なくないはずです。10月から11月にかけては年賀状の準備やお歳暮の手配、大掃除の計画などで、家の中に紙の郵便物があふれる季節でもあります。控除証明書のハガキは薄くて小さいため、他のダイレクトメールに紛れて開封もされずに処分されてしまうことが実際によくあります。
会社に「証明書がありません」と言い出せないまま提出期限が近づいてくると、落ち着かない時間を過ごすことになりますが、紛失しても税金で損をすることはありません。再発行の手続きも、提出期限に間に合わなかった場合の代わりの手段も、きちんと用意されています。順を追って確認していきます。
1. 控除証明書がなぜ必要なのか

年末調整で提出する保険料控除申告書には、生命保険や地震保険の保険料を証明する書類の添付が必要です。これは国税庁が定める生命保険料控除、地震保険料控除という所得控除の適用を受けるための根拠書類だからです。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1140 生命保険料控除」では、次のように定められています。
『納税者が生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを生命保険料控除といいます』
控除額は保険契約の締結時期によって区分され、平成24年1月1日以後に締結した新契約は各区分最高4万円、平成23年12月31日以前に締結した旧契約は各区分最高5万円、三区分の合計適用限度額は12万円と定められています。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
地震保険料についても同様の控除制度があります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1145 地震保険料控除」では、次のように定められています。
『特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料又は掛金を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます』
地震保険料は年間の支払保険料が5万円を超える場合は一律5万円、経過措置の対象となる旧長期損害保険料は最高1万5千円、両方がある場合は合計で最高5万円が控除限度額です。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1145「地震保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm
つまり控除証明書は、この所得控除を会社の年末調整担当者に証明するための唯一の物証です。金額を自己申告するだけでは認められず、保険会社が発行した証明書、あるいは後述する電子データの提出が必須になります。証明書を提出しなければ本来受けられるはずの控除がまるごと適用されず、還付されるはずだった税金が戻らないまま年を越すことになります。
【現場のリアル】年賀状の準備に紛れて捨てられていたハガキ
40代の会社員の方から聞いた話です。11月に入ってすぐ、家族分の年賀状の下書きや写真プリントの案内はがきと一緒に、生命保険会社からの控除証明書のハガキが届いていました。似たような紙質のダイレクトメールが数日おきに何通も投函されるため、内容を確認せずにまとめて古紙回収の袋に入れてしまったそうです。提出期限の1週間前になって総務から催促のメールが来て初めて紛失に気づき、保険会社のサイトから再発行を申し込む羽目になりました。証明書は届いたその日のうちに年末調整用のクリアファイルへ移す、これだけで防げるトラブルです。
2. 紛失に気づいたら、まず保険会社に再発行を依頼する
控除証明書をなくしたときにやることは一つです。契約している保険会社に再発行を依頼します。会社に事情を説明して代わりに手配してもらう必要はなく、契約者本人が動けば手続きは完了します。
再発行の依頼方法は保険会社によって多少異なりますが、主に次の3つです。
| 依頼方法 | 特徴 |
|---|---|
| WEB(マイページ・会員サイト) | 24時間いつでも申し込める。契約者番号とパスワードがあれば数分で完了する会社が多い |
| 自動音声応答サービス(電話) | 契約者番号を入力するだけでオペレーターと話さずに申し込める |
| コールセンター(電話) | 疑問点を確認しながら手続きできるが、年末調整シーズンは混み合いやすい |
再発行にかかる日数は保険会社によって差がありますが、依頼から手元に届くまでおおよそ1週間前後を見ておく必要があります。10月から11月は同じ理由で再発行を依頼する契約者が全国で集中する時期にあたるため、通常より発送が遅れる保険会社も出てきます。ハガキが見当たらないと気づいた時点で、その日のうちに手続きに動くことが何より大事です。
【現場のリアル】コールセンターに電話がつながらず、提出期限の前日に焦った
30代の契約者の方の話です。証明書の紛失に気づいたのが提出期限の3日前で、慌ててWEBサイトを探したものの、契約している保険会社のマイページには再発行申請の機能が見当たりませんでした。仕方なくコールセンターに電話をかけたところ、案内音声が延々と流れるだけで一向にオペレーターにつながらない。平日の日中に何度もかけ直し、ようやくつながったのは提出期限の前日の夕方でした。オペレーターからは「発送までに数日いただきます」と言われ、結局その年の年末調整には証明書が間に合わず、後述する後日提出の相談をすることになったそうです。再発行の連絡は、思い立ったその日の午前中に済ませておくと、こうした足止めを避けやすくなります。
3. 会社の提出期限に間に合わないときの対処法

再発行を依頼しても、会社が指定した提出期限までに証明書が届かないことは珍しくありません。この場合でも、選べる対処法は複数あります。
会社に後日提出できないか相談する
会社が社内で設定している年末調整の提出期限は、あくまで人事・経理担当者が計算作業の時間を確保するための社内ルールです。国税庁が定める法定の期限ではありません。税務署への最終的な法定調書の提出期限は翌年1月31日ですから、会社側にはまだ余裕があります。
証明書が届き次第、追加で提出してよいか担当者に相談してみましょう。実務上、12月の給与計算に間に合わなくても、1月上旬までに証明書が揃えば年末調整をやり直して再計算してくれる会社は少なくありません。相談を後回しにせず、証明書がまだ届いていない段階で早めに一声かけておくと、担当者側も対応の見通しを立てやすくなります。
電子データを使い、QRコード付証明書等作成システムで印刷する
最近は多くの保険会社が、マイページから電子的控除証明書と呼ばれるデータ(XML形式)をダウンロードできるようにしています。この電子データは、国税庁が提供するQRコード付証明書等作成システムに読み込ませることで、紙の証明書と同じ効力を持つ書類として自分でPDFに変換し、印刷して提出できます。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁 e-Taxの案内ページ「QRコード付証明書等作成システムについて」では、次のように説明されています。
『保険会社等から交付を受けた電子的控除証明書等から、所得税の確定申告又は年末調整において提出するQRコード付控除証明書等をパソコンで作成することができます』
このシステムで作成したQRコード付控除証明書等は、所得税及び復興特別所得税の確定申告及び年末調整の手続きにおいて利用できると案内されています。
出典:国税庁 e-Tax「QRコード付証明書等作成システムについて」 https://www.e-tax.nta.go.jp/cps/cps.htm
保険会社のマイページから電子的控除証明書をダウンロードできる状態であれば、郵送によるハガキの到着を待つ必要がなく、自宅にプリンターがあればその日のうちに提出用の書類を準備できます。ハガキの再発行より確実に早く終わる方法なので、契約している保険会社が電子データに対応しているか、まずマイページを確認してみる価値があります。
会社が電子データを印刷したものを本当に受け付けてくれるか不安に思う人もいますが、QRコード付証明書等作成システムで作成した書類は、国税庁自身が年末調整の提出書類として利用できると案内しているものです。それでも社内ルールとして原本のハガキを求める会社がないとは言い切れないため、印刷して提出する前に担当者へ一言確認しておくと、余計なやり取りを避けられます。
それでも間に合わなければ、翌年の確定申告で取り戻す
会社から「期限を過ぎた分は今年の年末調整には反映できない」と言われてしまった場合でも、控除そのものが消えてなくなるわけではありません。翌年2月16日から3月15日ごろの確定申告期間に、自分で確定申告(還付申告)をすれば、生命保険料控除・地震保険料控除の分を含めて払いすぎた税金を取り戻せます。再発行された証明書は、年末調整で使わなかった場合でも、確定申告の時期まで捨てずに保管しておきましょう。
4. 来年からはマイナポータル連携で紛失そのものをなくす
ハガキの管理に毎年気を遣うのが煩わしいという人は、マイナポータル連携を検討する価値があります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「マイナポータル連携特設ページ」では、マイナポータル連携について次のように案内されています。
『マイナポータルサイトから控除証明書などのデータを一括取得し、各種申告書の作成に利用できる仕組み』
取得した控除証明書のデータは、年末調整や確定申告用ソフトに組み込むことで申告書作成時に活用できるとされています。利用にあたっては、控除証明書の発行機関がマイナポータル連携に対応している必要があり、対応状況は国税庁のサイトで随時更新される一覧から確認できます。
出典:国税庁「マイナポータル連携特設ページ」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/mynapo.htm
事前にマイナンバーカードと保険会社のサイトを連携させておけば、年末調整の時期になったときに、紙のハガキを待たずに控除証明書のデータをまとめて取得できます。紙をなくす、探す、再発行を依頼するという一連の作業自体が発生しなくなるため、対応している保険会社に加入している人は一度連携設定を試しておく価値があります。
複雑な計算や書類作成もスマホで完結
控除証明書が無事に手元に届いても、年末調整の書類は保険料控除の計算式が細かく、どの欄にいくら転記すればいいのか毎年迷うという声をよく聞きます。
こうした計算や手書きの書類作成も、『書けた年末調整』ならスマホで質問に答えるだけで完結します。税金の専門知識がなくても、チャット形式の案内に沿って入力していけば控除額の計算を自動で正確に行い、そのままオンラインで会社に提出、または印刷して提出できます。毎年同じ計算を手作業でやり直す手間から抜け出せます。
無料で申告書を作成してみるまとめ

控除証明書をなくしても、税金で損をすることはありません。
- 生命保険料控除・地震保険料控除は国税庁タックスアンサー No.1140、No.1145 に根拠があり、証明書の提出が控除適用の条件になる
- 紛失に気づいたら、その日のうちに保険会社へ再発行を依頼する。WEBが最も早く、コールセンターは年末調整シーズンにつながりにくい
- 会社の提出期限は社内ルールであることが多く、後日提出を相談できる場合がある
- 電子的控除証明書があれば、国税庁のQRコード付証明書等作成システムで自分で印刷して提出できる
- それでも間に合わなければ、翌年の確定申告(還付申告)で取り戻せる
- 来年からはマイナポータル連携で、証明書を紛失する心配自体をなくせる
証明書が見当たらないと気づいた瞬間は焦るものですが、選べる手段はいくつも用意されています。まずは保険会社のマイページにアクセスして、再発行の手続きから始めましょう。