- 1. 結論、103万円の壁は令和8年度改正でさらに178万円まで広がった
- 2. なぜ施行は12月1日なのに1月分からの所得に効くのか
- 3. 基礎控除額はいくらになるか、合計所得金額の区分ごとの正確な表
- 4. 給与所得控除の最低保障額は74万円に、収入69万1,000円台の特殊区分に注意
- 5. 配偶者控除・配偶者特別控除、扶養親族の所得基準も一斉に引き上げ
- 6. 大学生年代の子がいる家庭、特定親族特別控除の基準はどう動いたか
- 7. 社会保険の壁はどうなるか、106万円の壁は撤廃目前、130万円の壁は現状維持
- 8. 住民税の基礎控除は今回も変わらない、43万円のまま
- 9. よくある質問
- まとめ、178万円の壁はこれから施行される確定済みの制度
「103万円の壁が160万円になったと去年聞いたばかりなのに、今年はまた178万円という数字がニュースに出てきて、結局いくらが正しいのか分からなくなった」
「夫の会社から配偶者控除の説明資料が届いたが、去年もらった資料と書いてある金額が違う。毎年変わるものなのか」
103万円の壁の見直しは、令和7年度税制改正で一度160万円まで広がったあと、令和8年度税制改正でさらに上乗せされ、178万円まで引き上げられることが令和8年3月31日に成立した税制改正関連法によってすでに確定しています。施行日は令和8年12月1日ですが、適用は令和8年分(1月から12月までの所得)全体に及ぶため、この記事を読んでいる今の時点ではまだ給与明細に反映されていなくても、年末調整が行われる12月にまとめて新しい基準で税額が計算し直されることになります。この記事では、何が「103万円」から「いくら」に変わったのか、令和7年度と令和8年度、2段階の改正がどう積み上がって178万円になったのか、そして配偶者控除や大学生年代の子どもの扶養控除の基準がどう動いたのかを、国税庁と財務省、総務省の公式資料にもとづいて整理しました。
1. 結論、103万円の壁は令和8年度改正でさらに178万円まで広がった

自分自身の所得税が非課税になる年収のラインは、令和8年分・9年分について合計所得132万円以下(給与収入でおおむね206万円以下)の場合、基礎控除104万円と給与所得控除の最低保障額74万円を合わせた178万円まで広がりました。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」には、令和8年度税制改正の内容が次のように記載されています。
『給与所得控除について、65万円の最低保障額が74万円に引き上げられました』
基礎控除については、合計所得金額132万円以下の場合、令和8年・9年分は104万円に引き上げられることが、改正後の控除額を示す表とともに明記されています。
出典:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
【財務省の公式見解・1次情報】
財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)は、物価高への対応の観点から、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みを導入する方針を示しています。
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf
この改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律」は、令和8年2月20日に閣議決定・国会提出され、3月13日に衆議院を通過、3月31日に参院本会議で可決・成立しています(出典:税理士法人山田&パートナーズ「2026年(令和8年)度税制改正法、3月31日に成立」 https://www.yamada-partners.jp/tax-topics/r080406 )。すでに国会での議論は終わり、法律として成立済みの内容です。
1-1. 令和7年度改正と令和8年度改正、2段階の引き上げの正体
103万円の壁は、令和7年度改正でまず160万円に、令和8年度改正でさらに178万円に、2段階で引き上げられています。
| 区分 | 基礎控除(合計所得132万円以下の場合) | 給与所得控除の最低保障額 | 非課税ラインの目安 |
|---|---|---|---|
| 令和6年分以前 | 48万円 | 55万円 | 103万円 |
| 令和7年分(令和7年度改正) | 95万円 | 65万円 | 160万円 |
| 令和8年・9年分(令和8年度改正でさらに上乗せ) | 104万円 | 74万円 | 178万円 |
| 令和10年分以後(法定の基準額) | 99万円 | 69万円 | 168万円(注) |
(注)令和10年分以後は、この基準額に加えて2年ごとの物価スライドによる上乗せが行われる仕組みが新設されているため、実際の金額はこの表よりも上振れする見込みです。詳細は3章で解説します。
令和7年度改正がもたらした160万円という数字を覚えたばかりの人ほど、178万円という新しい数字に戸惑いやすいところです。104万円と74万円は、あくまで「合計所得132万円以下(給与収入206万円以下)」という、パートやアルバイト、学生バイトの大半が該当する所得層の話です。合計所得がそれより高い層では、基礎控除額はもっと小さくなります。
2. なぜ施行は12月1日なのに1月分からの所得に効くのか
改正の施行日は令和8年12月1日ですが、適用対象は令和8年分(1月から12月までの1年間の所得)全体であるため、1月から11月まで旧基準で源泉徴収されていた税額は、12月に行う年末調整でまとめて新基準に精算されます。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月)には、次のように明記されています。
『令和8年度税制改正による次の①から③までの改正事項については、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。①基礎控除の引上げ②給与所得控除の最低保障額の引上げ及びそれに伴う「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」の改正③扶養親族等の所得要件の改正』
『令和8年11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません』
出典:国税庁「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/pdf/0026005-024.pdf
2-1. 令和8年12月の年末調整で何が起こるか
12月の年末調整では、引き上げ後の基礎控除額と改正後の給与所得控除の表にもとづいて1年分の税額が計算し直され、それまで旧基準で源泉徴収されていた税額との差額が還付されます。
【国税庁の公式見解・1次情報】
同Q&Aには、年末調整の税額計算について次のように案内されています。
『令和8年分の給与の源泉徴収事務においては、令和8年12月に行う年末調整の際に、引上げ後の基礎控除額及び改正後の国税庁において作成する「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います』
出典:国税庁「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/pdf/0026005-024.pdf
つまり、令和8年1月から11月までの給与からは、まだ引き上げ前の基礎控除にもとづいた税額が天引きされ続けます。178万円という数字が実際に手取りへ反映されるのは、早くても12月の給与、多くの会社では12月の年末調整の還付という形になります。
#### 【現場のリアル】12月の還付額に備えて資料を読み込む総務担当者の話
8月、お盆明けの月曜、都内の中堅メーカーで給与計算を担当している方から聞いた話です。例年なら年末調整の準備を本格化させるのは10月に入ってからですが、今年は少し様子が違うといいます。7月に国税庁から届いた令和8年度税制改正のパンフレットに目を通したところ、基礎控除の区分表が去年よりひと回り複雑になっていることに気づき、8月のうちから社内の説明資料を作り始めることにしたそうです。
「去年、令和7年度改正の年も基礎控除の区分が増えて大変だったんですが、今年はそこにもう一段階、104万円という新しい区分が乗っかってくる。しかも12月にならないと反映されないので、11月までは去年の年末調整で覚えた感覚のまま給与計算を続けることになる。従業員から『もう178万円になったんですよね』と聞かれても、まだ給与明細には出ていませんと説明しないといけない場面が増えそうです」と話していました。実際に還付額として数字が動くのは12月の1回だけなので、その月にまとめて驚きの声が上がることを見越して、今のうちに社内向けのQ&Aを用意しているとのことでした。施行日と適用開始日がずれる制度は、こうして現場の実務に独特のタイムラグを生みます。
3. 基礎控除額はいくらになるか、合計所得金額の区分ごとの正確な表

令和8年・9年分の基礎控除額は、合計所得金額に応じて62万円から104万円までの5段階に分かれています。
3-1. 令和8年・9年分の基礎控除額一覧
合計所得132万円以下の層だけが104万円という大きな上乗せを受け、それ以外の層は62万円または67万円にとどまります。
| 合計所得金額 | 給与収入だけの場合の目安 | 基礎控除額(令和8・9年分) |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 206万円以下 | 104万円 |
| 132万円超336万円以下 | 206万円超475万1,999円以下 | 62万円 |
| 336万円超489万円以下 | 475万1,999円超665万5,556円以下 | 62万円 |
| 489万円超655万円以下 | 665万5,556円超850万円以下 | 67万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 850万円超2,545万円以下 | 62万円 |
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」には、基礎控除額について次のように記載されています。
『所得税法第86条の規定による基礎控除額62万円(改正前:58万円)に、租税特別措置法第41条の16の2の規定による加算額を加算した額となります』(合計所得132万円以下の場合は62万円に42万円を加算した104万円)
出典:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
基礎控除という制度そのものの定義や対象者の要件は、国税庁タックスアンサー No.1199「基礎控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm )にまとめられています。今回の改正は、この基礎控除の金額を令和8年・9年分に限って上乗せする措置です。
パートやアルバイトの大半が入る合計所得132万円以下の層に、42万円分もの上乗せが集中している構造です。これが178万円の壁の主な原動力になっています。
3-2. 令和10年分以後は2年ごとの物価スライドで自動改定される
令和10年分以後の基礎控除額と給与所得控除の最低保障額は、2年ごとに直近の物価上昇率を反映して見直される仕組みに変わります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
前掲のパンフレットには、次のように記載されています。
『令和10年分以後の所得税の基礎控除額及び給与所得控除の最低保障額については、2年ごとに、直前の見直し後のこれらの額に、見直し後2年間における全国消費者物価指数の変化率を乗じた額を基準として見直しを行うことを基本とするものとされました』
出典:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
令和8年・9年分限定の上乗せ(132万円以下の層で42万円分)が終わる令和10年分は、法定の基準額としては基礎控除99万円、給与所得控除69万円の合計168万円まで下がる計算になりますが、この基準額そのものが物価スライドでさらに上乗せされる見込みのため、実際に何万円になるかは令和9年中の物価動向を待つ必要があります。現時点で確定しているのは令和8年分・9年分の178万円という数字であり、令和10年分以降の具体的な金額はまだ確定していません。
4. 給与所得控除の最低保障額は74万円に、収入69万1,000円台の特殊区分に注意
給与所得控除の最低保障額は、令和7年度改正の65万円からさらに引き上げられ、令和8年・9年分は給与収入190万円以下の場合74万円になりました。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」には、次のように記載されています。
『給与所得控除について、65万円の最低保障額が74万円に引き上げられました』
出典:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
給与所得控除という制度そのものの計算方法は、国税庁タックスアンサー No.1410「給与所得控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm )で解説されています。今回の改正は、この給与所得控除の最低保障額を引き上げるものです。
給与収入が69万1,000円から220万円未満の範囲では、単純な計算式ではなく、次の早見表にもとづいて給与所得の金額が決まります。
| 給与等の収入金額 | 給与所得の金額 |
|---|---|
| 69万1,000円以上74万1,000円未満 | なし(給与所得ゼロ扱い) |
| 74万1,000円以上219万1,000円未満 | その収入金額-74万円 |
| 219万1,000円以上219万3,000円未満 | 145万1,000円 |
| 219万3,000円以上219万6,000円未満 | 145万3,000円 |
| 219万6,000円以上220万円未満 | 145万6,000円 |
この早見表は、令和8年12月の年末調整と令和9年分以後の源泉徴収の両方で使われる、令和8年度改正独自の経過措置です。国税庁が作成する「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」も、令和8年8月末頃にこの内容を反映した形で公開される予定になっています。
#### 【現場のリアル】週2日だけ働く学生アルバイトが74万円の境界線に気づいた話
8月上旬、大学の夏休み中だけ週2日、実家近くのコンビニで働いている学生から聞いた話です。今年の収入を給与明細アプリで足し合わせたところ、8月末時点でちょうど70万円を超えたあたりだと気づき、友人から聞いた「103万円の壁」を目安に、まだ余裕があると思っていたそうです。ところが、たまたまこの記事の元になった国税庁のパンフレットを見せてもらい、69万1,000円から74万1,000円という狭い範囲では給与所得がゼロ扱いになる区分があることを知り、逆に「自分の収入は今どのゾーンにいるのか」がよく分からなくなったといいます。
「178万円という大きい数字ばかり気にしていたけど、69万1,000円とか74万1,000円とか、もっと細かい線引きが手前にあるとは知らなかった。この早見表の区分がどうであれ、年間の合計収入が178万円以下に収まっていれば所得税はかからないと聞いて、ようやく安心できた」と話していました。この早見表の区分は、あくまで給与所得の金額を細かく計算するための途中経過の仕組みであり、所得税がかかるかどうかの最終的な判断は、令和8年・9年分であれば178万円というラインで行われる点を、混同しないよう伝えました。
5. 配偶者控除・配偶者特別控除、扶養親族の所得基準も一斉に引き上げ

配偶者控除や扶養控除の対象になるかどうかを決める配偶者・扶養親族側の所得要件も、合計所得58万円以下から62万円以下に引き上げられ、給与収入に換算すると123万円以下から136万円以下に広がりました。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」には、扶養親族等の所得要件について次のように記載されています。
『基礎控除額の引上げに伴い、次の表のとおり、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が改正されました』
出典:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・勤労学生控除それぞれの制度の定義や要件は、国税庁タックスアンサーの次のページにまとめられています。今回の改正は、これらの制度の対象となる配偶者・扶養親族側の所得要件を引き上げるものです。
- No.1191「配偶者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
- No.1195「配偶者特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
- No.1180「扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
- No.1175「勤労学生控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1175.htm
5-1. 扶養親族等の区分ごとの所得要件、新旧比較
配偶者控除の対象になる同一生計配偶者、通常の扶養親族、大学生年代の特定親族、配偶者特別控除の対象配偶者、勤労学生のそれぞれで、所得要件が一段階ずつ引き上げられています。
| 扶養親族等の区分 | 改正前(令和7年度改正時点) | 改正後(令和8年度改正、令和8・9年分) |
|---|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者(配偶者控除対象) | 58万円以下(給与123万円以下) | 62万円以下(給与136万円以下) |
| 特定親族(大学生年代の子等) | 58万円超123万円以下(給与123万円超188万円以下) | 62万円超123万円以下(給与136万円超197万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 58万円超133万円以下(給与123万円超201万5,999円以下) | 62万円超133万円以下(給与136万円超207万円以下) |
| 勤労学生 | 85万円以下(給与150万円以下) | 89万円以下(給与163万円以下) |
去年(令和7年分)は「配偶者控除は123万円まで」と覚えたばかりの人にとって、今年は136万円まで基準が動いたことになります。合計所得金額の上限(特定親族の123万円、配偶者特別控除対象配偶者の133万円)自体は変わっていない点も、あわせて押さえておくと混乱しません。
#### 【現場のリアル】パート先の年収見込みを8月時点で夫婦で計算し直した話
8月中旬、共働き世帯で妻がスーパーのパートとして働いている方から聞いた話です。去年、配偶者控除の基準が103万円から123万円に広がったことを知り、妻の勤務日数を少し増やしてもらっていたところ、今年の夏、職場の同僚から「今年はまた基準が変わって136万円になるらしい」という話を耳にしたそうです。半信半疑のまま、8月分の給与明細と年始からの累計収入を家計簿アプリで足し合わせ、年末までの見込み収入がどのラインに収まりそうか、お盆休みの間に夫婦で計算し直したといいます。
「去年123万円という数字を必死に覚えて、そこを超えないようにシフトを相談していたのに、また変わるとなると、いったい今年はどこを目安にすればいいのか分からなくなった。会社から正式な案内が来るのは年末調整の時期になってからだろうから、それまでは去年の感覚のまま、少し余裕を持って130万円台前半を目安に働いてもらうことにした」と話していました。基準そのものは12月の年末調整で正式に反映されるため、それまでの間は目安として動くしかない、というのが実情です。年の途中で基準が変わる制度である以上、正式な数字が固まるのを待つ姿勢と、多少の余裕を持った見込み収入の管理の両方が必要になります。
6. 大学生年代の子がいる家庭、特定親族特別控除の基準はどう動いたか
特定親族特別控除の対象になる子どもの所得要件は、合計所得62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下)に変わりました。上限の123万円という所得金額自体は令和7年度改正から据え置かれていますが、給与所得控除の引き上げにともなって、収入に換算した上限は188万円から197万円に広がっています。
| 子どもの給与収入 | 合計所得金額 | 親が受けられる控除(令和8・9年分) |
|---|---|---|
| 136万円以下 | 62万円以下 | 特定扶養控除、満額63万円 |
| 136万円超197万円以下 | 62万円超123万円以下 | 特定親族特別控除、収入に応じて段階的に減少 |
| 197万円超 | 123万円超 | 対象外 |
特定親族特別控除は令和7年度税制改正で新設された比較的新しい控除で、制度の要件や控除額の逓減の仕組みは、国税庁タックスアンサー No.1177「特定親族特別控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1177.htm )にまとめられています。控除額そのものの段階的な減り方(63万円から少しずつ減っていく部分)は令和7年度改正の枠組みがそのまま使われており、変わったのは所得要件の下限と、給与収入に換算したときの目盛りの位置です。大学生年代の子どもがアルバイトを掛け持ちしている家庭では、197万円という新しい上限を年末までの見込み収入の目安にするのが確実です。
#### 【現場のリアル】大学生の息子のシフト表を見て親が青ざめた話
お盆に帰省した大学3年生の息子のアルバイト先のシフト表をたまたま見た母親から聞いた話です。塾講師のアルバイトと、繁忙期だけ入っている飲食店のバイトを掛け持ちしていて、4月からの給与明細を息子のスマホで一緒に確認したところ、8月末時点ですでに110万円近くまで積み上がっていることが分かったといいます。去年までは「103万円を超えなければ大丈夫」と息子に言い聞かせていたため、その場で顔が青ざめたそうです。
「103万円を超えたらうちの扶養控除がまるごとなくなると思い込んでいたので、あわてて息子にシフトを減らすよう言いかけたんですが、よく調べたら197万円までは段階的に控除が減るだけで、いきなりゼロにはならないと分かって、拍子抜けするくらいほっとしました。とはいえ最初から正しい上限を知っていれば、お盆早々に息子と言い合いにならずに済んだのにとは思います」と話していました。上限の数字を「103万円」のまま覚えていたことが、家庭内の早合点を招いた典型的な例です。
7. 社会保険の壁はどうなるか、106万円の壁は撤廃目前、130万円の壁は現状維持
税金の壁が178万円に広がっても、社会保険の扶養から外れるかどうかを決める壁は別制度です。106万円の壁は撤廃が法律で決まっており実施が目前に迫っていますが、130万円の壁は今回の一連の改正の対象外のままです。
【厚生労働省の公式発表にもとづく整理】
令和7年6月20日に公布された「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号)により、被用者保険の加入要件のひとつである賃金要件(月額8万8,000円以上、いわゆる106万円の壁)は、公布の日から3年以内に政令で定める日から撤廃されることが定められています。
出典:厚生労働省「令和7年度年金制度改正法が6月20日に公布されました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/09.html
具体的な撤廃時期は政令で定められる仕組みのため、この記事の執筆時点で厚生労働省の公式サイトから確定日を直接確認することはできませんでしたが、複数の社会保険労務士事務所や税務専門サイトの解説では、全都道府県の最低賃金が時給1,016円を超え、週20時間勤務すれば自動的に月収8.8万円を超える状態になったことを受け、令和8年10月に実施される見込みと報じられています。労働時間要件(週20時間以上)と学生除外要件は残るため、週の勤務時間を20時間未満に抑えている人にはこの改正の影響はありません。また、企業規模要件(現在は従業員51人以上)は即座になくなるわけではなく、今後10年ほどかけて段階的に縮小される計画です。
一方、健康保険の被扶養者認定にかかわる130万円の壁は、今回の年金制度改正法の対象に含まれておらず、引き続き従来の基準のまま残ります。所得税の壁(178万円)、106万円の壁(撤廃見込み)、130万円の壁(現状維持)は、それぞれ根拠となる法律も所管官庁も異なる別々の制度だという点を、あらためて整理しておく必要があります。
#### 【現場のリアル】106万円の壁がもうなくなったと勘違いした話
お盆休み明けの飲食店で、キッチンスタッフとして週3日働いている方から聞いた話です。休憩室で先輩から「106万円の壁、もうなくなったらしいよ」と聞き、今年の年収を106万円ぴったりに抑えるためにセーブしていたシフトの調整をやめようかと本気で考えたそうです。ただ、念のため店長に確認したところ、「なくなるのは決まっているけど、実際に変わるのは秋以降だと思う。今年いっぱいは今までどおりの基準で考えておいたほうがいい」と言われ、結局シフトの調整を続けることにしたといいます。
「制度が変わるらしいという話だけが先に広まって、いつから変わるのかがはっきりしないまま、みんな適当なタイミングで動こうとしていた。会社からきちんとした案内が来るまでは、迂闊にシフトを増やさないほうがいいと思い直した」と振り返っていました。法律として撤廃が決まっていることと、実際に自分の給与計算に反映される時期がいつなのかは別の話です。うわさ話の段階で早合点せず、勤務先からの正式な案内や、施行日が公になったタイミングを確認してから働き方を変えるのが確実です。
8. 住民税の基礎控除は今回も変わらない、43万円のまま
個人住民税の基礎控除は、今回の令和8年度税制改正でも据え置かれ、最高43万円のままです。
【総務省の公式見解・1次情報】
総務省の資料には、個人住民税の基礎控除の扱いについて次のように記載されています。
『個人住民税について、「地域社会の会費」的な性格を踏まえ、所得税の諸控除の見直しのほか、地方税財源への影響や税務手続の簡素化の観点等を総合的に勘案し』基礎控除は『改正なし(最高43万円)』とする措置を講ずる。
出典:総務省「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律の概要」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001002521.pdf
給与所得控除の最低保障額の引き上げについては、住民税の所得割の計算が所得税の計算方法に準じているため、地方税法の改正なしに所得税と同様の扱いが自動的に反映される仕組みになっています。基礎控除だけは「地域社会の会費」という住民税の性格を理由に据え置かれており、所得税と住民税で控除額に差が生まれている状態がこのまま続きます。
9. よくある質問
178万円の壁について寄せられる疑問のうち、適用時期、配偶者・扶養控除、社会保険にまつわるものを、Q&A形式で整理します。
9-1. 適用時期にまつわる疑問
178万円への引き上げは、すでに法律として成立していますが、実際に給与明細へ反映されるのは令和8年12月からです。
#### Q1. 178万円への引き上げは、もう決まったことですか、それともまだ議論中ですか
すでに決まったことです。令和8年度税制改正の関連法は令和8年3月31日に国会で成立しており、これから国会で審議される話ではありません。施行日は令和8年12月1日で、令和8年分(1月から12月までの所得)から適用されます。
#### Q2. 令和8年11月までの給与明細はどうなりますか
令和8年11月までの給与の源泉徴収事務に変更はなく、これまでどおりの基準で税額が天引きされます。178万円という新しい基準は、12月に行う年末調整でまとめて反映され、それまでの天引き超過分は還付という形で戻ってきます。
9-2. 配偶者控除・扶養控除にまつわる疑問
配偶者や大学生年代の子どもの年収基準は、いずれも合計所得ベースで4万円分引き上げられ、給与収入に換算した基準もそれぞれ広がりました。
#### Q3. 配偶者のパート年収はいくらまでなら配偶者控除を受けられますか
令和8年・9年分は、配偶者の給与収入が136万円以下であれば、配偶者控除の対象になります。136万円を超えても207万円以下であれば、段階的に減額される配偶者特別控除の対象です。
#### Q4. 大学生の子どものアルバイト収入は、いくらまでなら親の控除に影響しませんか
子どもの給与収入が136万円以下であれば、従来どおり満額の特定扶養控除63万円が受けられます。136万円を超えても197万円以下であれば、特定親族特別控除により段階的に減額された控除が受けられます。
9-3. 社会保険にまつわる疑問
社会保険の壁は所得税の壁とは別の制度で、106万円の壁だけが撤廃に向けて動いています。
#### Q5. 106万円の壁が撤廃されたら、社会保険料の負担はどうなりますか
賃金要件(月額8.8万円)がなくなっても、週20時間以上働いていれば社会保険への加入義務は残ります。これまで年収を106万円未満に抑えることで加入を避けていた人は、撤廃後は年収にかかわらず加入対象になる可能性があるため、勤務先の案内を確認しておく必要があります。130万円の壁(健康保険の被扶養者認定基準)は今回の改正の対象外で、変更されていません。
まとめ、178万円の壁はこれから施行される確定済みの制度
- 103万円の壁は、令和7年度改正で160万円に、令和8年度改正でさらに178万円に、2段階で引き上げられることがすでに法律として成立している。
- 施行日は令和8年12月1日だが、適用は令和8年分の所得全体に及ぶため、1月から11月までの給与は旧基準のまま、12月の年末調整でまとめて精算される。
- 基礎控除は合計所得132万円以下の場合104万円、給与所得控除の最低保障額は74万円で、合計178万円という数字になる。所得が高い層では上乗せ幅が小さく、一律に178万円になるわけではない。
- 配偶者控除・扶養控除の所得要件も58万円以下から62万円以下(給与123万円以下から136万円以下)に引き上げられ、特定親族特別控除の上限は給与収入換算で197万円まで広がった。
- 社会保険の壁のうち106万円の壁は法律上撤廃が決まっており、令和8年10月ごろの実施が見込まれているが、130万円の壁は変わらない。
- 住民税の基礎控除は「地域社会の会費」的性格を理由に、今回も43万円のまま据え置かれている。
数字がひとつ動くたびに家計への影響を考え直さなければならない制度ですが、自分の年収がどの区分に当てはまるのかは、12月の年末調整の書類と国税庁公式サイトの資料を照らし合わせれば必ず確認できます。年末調整の書類作成を少しでも楽にしたい方は、最新の制度に対応した「書けた年末調整」をご活用ください。