「居酒屋とコンビニ、2つのバイトを掛け持ちしているけれど、年末調整の書類はどっちに出せばいいのか」
「秋に辞めたカフェのバイト先に、今さら源泉徴収票をくださいと連絡していいものなのか」
特定の会社に籍を置かず、複数のアルバイトやパートを掛け持ちして生活費を稼いでいるフリーター。
年末調整の時期になると、扶養控除等申告書をどちらのバイト先に出せばいいのか、両方に出したらどうなるのか、辞めたバイト先とどう連絡を取ればいいのかといった疑問が一気に押し寄せてきます。
扶養控除等申告書を提出できるのは、掛け持ちしているバイト先のうち1か所だけです。国税庁もこの点を明確に案内していて、2以上の給与の支払者から給与を受ける場合は、そのうちのいずれか一方にしか提出できません。
そして、扶養控除等申告書を出さなかったサブのバイト先では、控除が一切織り込まれない「乙欄」という税額表で所得税が天引きされ続けます。この乙欄で多く引かれすぎた税金は、年が明けてから確定申告をすることで、現金で口座に戻ってきます。
この記事では、掛け持ちフリーターが年末調整の書類をどちらに出すべきかという基本ルールから、辞めたバイト先への源泉徴収票の請求方法、自分で払った国民健康保険・国民年金の控除、確定申告で税金が戻ってくる仕組みと期限まで、国税庁の一次情報とあわせて整理しました。
1. 扶養控除等申告書を出せるのは掛け持ち先の1社だけ

扶養控除等申告書を提出できるのは、掛け持ちしているバイト先のうち1か所だけです。両方に提出することは制度上できません。
年末が近づくと、バイト先から「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出を求められます。掛け持ちしている場合、この用紙をどちらのバイト先にも出していいのか、それとも1か所に絞るべきか迷う人は少なくありません。
国税庁は、この申告書をどこに出せるかについて次のように案内しています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」には、次のように明記されています。
『2以上の給与の支払者から給与を受ける場合には、そのうちのいずれかの給与の支払者に対してのみ提出することができます。』
出典:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm
つまり、掛け持ち先の両方に扶養控除等申告書を提出することは制度上できません。提出先に選ぶのは、原則として収入が一番多い、いわゆる「メイン」のバイト先です。
扶養控除等申告書を提出した先は「主たる給与」の支払者として扱われ、それ以外は「従たる給与」の支払者として扱われます。この2つでは、天引きされる所得税の計算方法がまったく違います。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」では、次のように説明されています。
『主たる給与とは、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与をいい、主たる給与を支払う場合の源泉徴収税額は、税額表の「甲欄」で求めます。』『従たる給与とは、主たる給与の支払者以外の給与の支払者が支払う給与をいい、従たる給与を支払う場合の源泉徴収税額は、税額表の「乙欄」で求めます。』
出典:国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2520.htm
甲欄と乙欄で天引きされる所得税はここまで違う
同じ月給でも、甲欄より乙欄のほうが天引きされる所得税は高くなります。控除事情を考慮するかどうかが分かれ目です。
甲欄は、扶養親族の人数などの控除事情を織り込んで税額を割り出す仕組みのため、同じ月給でも天引きされる所得税は比較的低く抑えられます。一方の乙欄は、そうした個人の事情を一切考慮せず、支給額に応じて機械的に高めの税率を当てはめる仕組みです。サブのバイト先の給与明細で所得税の欄がやけに大きいと感じたら、それはミスでも取られ損でもなく、乙欄が適用されているだけ、というケースがほとんどです。
| 区分 | 提出書類 | 適用される税額表 | 天引きの特徴 |
|---|---|---|---|
| ①メインのバイト先(収入が一番多い先) | 扶養控除等申告書を提出 | 甲欄 | 控除を織り込んだ税額で天引きされる |
| ②サブのバイト先(収入が少ない先) | 扶養控除等申告書は提出しない | 乙欄 | 控除なしの高い税率で天引きされる |
#### 現場のリアル: サブ先の給与明細を見て乙欄の天引き額に驚いた話
平日の夜は居酒屋、週末の日中はアパレルショップの試着室スタッフとして働いていた方から聞いた話です。居酒屋のほうは月10万円ほど、アパレルのほうは月4万円ほどの収入で、当然ながら居酒屋に扶養控除等申告書を出していました。ある月、アパレル側の給与明細をたまたま開いたところ、所得税の天引き欄に居酒屋のほうよりも高い金額が印字されていて、一瞬「桁を打ち間違えているのでは」と本気で疑ったそうです。店舗のシフト管理担当に問い合わせると、「うちは扶養控除の書類をいただいていないので、法律で決まった税率でお引きしています」とだけ説明され、それ以上は詳しく教えてもらえませんでした。納得できないまま数か月が過ぎ、あとになって「乙欄」という言葉と、確定申告をすれば戻ってくる仕組みを知ったとき、「先にこの言葉さえ知っていれば、あんなに不安にならずに済んだのに」とこぼしていました。
2. 確定申告をすると乙欄で引かれすぎた税金が戻ってくる
乙欄で天引きされすぎた所得税は、確定申告をすることで現金として還付されます。年末調整では精算されません。
サブのバイト先で天引きされている乙欄の所得税は、年末調整で精算されることがありません。年末調整は、扶養控除等申告書を提出したメインのバイト先でしか行われないためです。サブ先の給与は、天引きされたままの状態で1年が終わります。
ここで登場するのが確定申告です。年が明けてから、メインとサブ、両方のバイト先の源泉徴収票を持ち寄って確定申告をすると、国税庁が1年間の給与を全部合算し、正しい年間の所得税額を計算し直してくれます。合算後の本来の税額と、すでに天引きされていた税額の合計を比べ、天引きされすぎていた分があれば、その差額が現金で還付されます。
給与を2か所以上から受けている人の申告義務について、国税庁のタックスアンサーには次のような条件が示されています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」では、2か所以上から給与を受けている人について次のように案内しています。
『給与を2か所以上から受けていて、かつ、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える人』
出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
サブ先の年収がこの基準を超えていれば確定申告は義務です。逆にサブ先の年収が20万円に届かず申告義務がない場合でも、乙欄で天引きされた所得税が発生しているなら、その分を取り戻すための申告を自分の意思で行うことができます。義務があるかどうかと、還付を受けられるかどうかは別の話だと考えておくと分かりやすいはずです。
還付額の具体例(居酒屋メイン×アパレルサブのケース)
本来の所得税と、すでに前払いしていた所得税の差額が、確定申告後に現金で還付されます。
還付額のイメージを、居酒屋をメイン、アパレルをサブとして掛け持ちしていたケースで見てみます。あくまで一例としての目安です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| メインの居酒屋(甲欄・年末調整済み) | 年収 130万円 |
| サブのアパレル(乙欄で天引き) | 年収 45万円/天引き所得税 約38,000円 |
| 自分で払った国民健康保険・国民年金 | 約180,000円 |
| 合算年収175万円に対する本来の所得税 | 約6,000円 |
| すでに前払いしていた所得税の合計 | 約38,000円 |
| 確定申告後に還付される差額 | 約32,000円 |
サブ先の所得税がまるごと戻ってくることも珍しくありません。確定申告をせずに放置すると、この差額はそのまま国に取られたままになります。
#### 現場のリアル: 確定申告をしてみたら数万円戻ってきて驚いた話
コンビニと個人経営の学習塾で採点補助を掛け持ちしていた大学生の方の話です。学生のうちは確定申告なんて自分には関係ないと思い込んでいたそうですが、友人から「乙欄で引かれた分、戻ってくるらしいよ」と聞き、半信半疑のまま国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセスしてみたといいます。コンビニとお塾、両方の源泉徴収票の数字をスマホで撮影して読み込ませ、国民年金の学生納付特例を使わずに自分で払っていた分の控除証明書も入力したところ、画面に「還付される金額 41,600円」と表示されました。振込予定日をカレンダーに書き込みながら「バイト代とは別に、こんなお小遣いみたいな入金があるなんて聞いていなかった」と話していたのが印象的でした。もっとも、還付されるのはあくまで自分が払いすぎていた税金であって、臨時収入ではありません。それでも、知っているかどうかだけで数万円の差が出るという事実には変わりないようです。
3. 辞めたバイト先から源泉徴収票を回収する方法

辞めたバイト先にも源泉徴収票の交付を請求できます。会社側には退職者に対しても法律上の発行義務があるからです。
確定申告には、その年に働いたすべてのバイト先の源泉徴収票が必要です。年の途中で辞めたバイト先がある場合、そこからも源泉徴収票をもらわなければなりません。
「もう辞めた職場に連絡するのは気まずい」と感じる人は多いですが、心配は不要です。給与を支払った会社には、源泉徴収票を発行する法律上の義務があり、これは退職者に対しても変わりません。
【国税庁の公式見解・1次情報】
所得税法第226条第1項は、給与の支払者の源泉徴収票交付義務について次のように定めています。
『居住者に対し国内において給与等の支払をする者は、(中略)その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その年の翌年1月31日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後1月以内)に、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。』
出典:所得税法第226条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
条文の通り、年の途中で辞めた人については「退職の日以後1月以内」に交付することが求められています。つまり、退職から1か月経っても源泉徴収票が届かない場合は、催促の連絡を入れて構いません。会社側に発行の義務がある以上、電話やメールで請求すること自体は何もおかしなことではなく、むしろ法律に沿った正当な依頼です。
請求時に伝える内容と催促のタイミング
在籍期間・氏名・確定申告のためである旨の3点を伝えれば、催促の連絡として十分です。
連絡する際は、在籍していた期間と氏名、確定申告のために必要である旨を伝えれば十分です。郵送してもらうか、店舗によってはPDFデータで送ってもらえることもあります。それでも発行してもらえない場合は、税務署に相談すれば、会社に対して指導が入る制度も用意されています。
#### 現場のリアル: 辞めたバイト先の店長にLINEで再発行を頼んだやり取り
半年前に契約満了で退職した居酒屋のバイト先に、源泉徴収票の再発行を頼まなければならなくなった方の話です。在籍中は店長とLINEでシフトの連絡を取り合っていたものの、退職後にいきなりメッセージを送るのは気が引けて、下書きを何度も打っては消していたそうです。最終的に送ったのは「お世話になっております。以前お世話になっていた〇〇です。確定申告のために、今年分の源泉徴収票を発行していただけますでしょうか。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」という短い文面でした。既読がついたまま数日返信がなく、内心「もしかして無視されているのでは」と気をもんでいたところ、1週間ほど経ってから「対応します、少々お待ちください」とだけ返信が来て、その2週間後に自宅へ源泉徴収票が郵送されてきたといいます。「返信が来るまでの数日が一番気まずかったけれど、催促の電話をもう1本かける勇気は結局出せなかった。待っていれば届くものなんだと分かった」と振り返っていました。反応が遅い場合は、最初のメッセージから2週間ほど様子を見てから、電話で改めて確認するのも一つの手です。
4. 自分で払った国民健康保険・国民年金は全額控除できる
自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料は、社会保険料控除として全額を所得から差し引けます。
親の扶養から外れて自分で国民健康保険や国民年金保険料を納めているフリーターの場合、その支払額は確定申告で全額を所得から差し引くことができます。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1130 社会保険料控除」では、対象となる社会保険料と控除額について次のように説明されています。
『納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について、社会保険料控除として、その年分の総所得金額等から控除することができます。(中略)控除できる金額は、その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金から差し引かれた金額です。』
出典:国税庁「No.1130 社会保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm
国民年金保険料は日本年金機構から11月頃に送られてくる控除証明書のハガキに年間の支払額が記載されています。国民健康保険料は自治体から届く納付済額のお知らせや、手元に残しておいた納付書の領収印でも確認できます。この2つの支払額を確定申告書に入力するだけで、社会保険料控除として所得からまるごと差し引かれ、還付額はさらに増えます。ハガキや領収書を「見ればいつでも捨てられる紙」だと思わずに、確定申告の時期まで手元に残しておくことが、還付額を減らさないための一番簡単な対策です。
5. 還付申告はいつまで出せるのか

還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間、いつでも提出できます。
「確定申告の時期を逃したら、もう戻ってこないのでは」と焦る人もいますが、還付を受けるための申告に限っては、通常の確定申告期間(2月16日から3月15日ごろ)にこだわる必要はありません。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2030 還付申告」では、還付申告の提出時期について次のように説明されています。
『還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間、提出することができます。』
出典:国税庁「No.2030 還付申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
つまり、掛け持ちしていた年の翌年1月1日から数えて5年間は、いつでも申告して差し支えありません。学業やシフトが立て込んでいて年明けすぐに動けなくても、期限に間に合わないという心配は基本的に不要です。とはいえ、辞めたバイト先の連絡先が変わってしまったり、源泉徴収票を紛失してしまったりすると、書類を集める手間はどんどん増えていきます。落ち着いたタイミングで早めに動いておくに越したことはありません。
6. よくある質問
掛け持ちフリーターの年末調整・確定申告でよく寄せられる4つの疑問に、まとめて答えます。
#### Q1. 年間のバイト代の合計が103万円以下でも、確定申告したほうがいいですか。
サブ先で乙欄の所得税が1円でも天引きされているなら、確定申告する価値はあります。乙欄の天引きは扶養控除や基礎控除を考慮しない仕組みのため、年収が103万円以下で本来の所得税がゼロになる人であっても、サブ先では天引きされているケースが多いからです。合算後の本来の税額がゼロであれば、天引きされていた分は全額戻ってきます。
#### Q2. どちらが「メイン」のバイト先か、収入がほぼ同じで判断がつきません。
法律上、金額の多寡だけで機械的に決まっているわけではなく、扶養控除等申告書を提出した先が「主たる給与」の支払者として扱われます。とはいえ、年末調整による節税効果を最大化する観点からは、年間を通じて収入が多く見込める先に提出するのが基本です。収入がほぼ同じで判断に迷う場合は、勤務日数やシフトの安定性が高いほうを目安にしても構いません。
#### Q3. うっかり両方のバイト先に扶養控除等申告書を出してしまいました。
すぐに気づいた時点で、いずれか一方のバイト先に連絡し、取り下げの申し出をしてください。前述の通り、扶養控除等申告書は2か所以上の給与の支払者のうち1か所にしか提出できない書類です。両方で控除が適用された状態のまま年末調整が進んでしまうと、後日確定申告で税額のずれを精算する必要が出てきます。慌てず、まずはどちらか一方に「重複して提出してしまったので取り下げたい」と伝えれば対応してもらえます。
#### Q4. 確定申告はスマホだけでできますか。
できます。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、スマホのカメラで源泉徴収票を撮影して金額を読み込ませ、画面の案内に沿って国民健康保険や国民年金の支払額を入力していくだけで申告書を作成できます。マイナンバーカードとマイナポータル連携に対応した端末であれば、税務署に行かずにそのままe-Taxで提出まで完了します。操作に不安がある場合は、税務署や確定申告会場の相談窓口で、職員と一緒に画面を操作しながら進めることもできます。
まとめ
扶養控除等申告書を提出できるのは、掛け持ちしているバイト先のうち1か所だけです。国税庁のA2-1の案内にある通り、2以上の給与の支払者から給与を受ける場合は、そのうちのいずれか一方にしか提出できません。提出したメイン先では甲欄、提出しなかったサブ先では乙欄で所得税が計算され、乙欄の税額は控除を考慮しない分、どうしても高くなります。
この乙欄で天引きされすぎた税金は、年が明けてからメインとサブ両方の源泉徴収票を合わせて確定申告をすることで戻ってきます。年の途中で辞めたバイト先がある場合も、所得税法第226条により会社には源泉徴収票の交付義務があるため、退職後であっても遠慮せずに発行を依頼して構いません。自分で払った国民健康保険や国民年金があれば、社会保険料控除として全額を所得から差し引けるため、還付額はさらに増えます。
還付を受けるための申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。慌てて年内に片づける必要はありませんが、辞めたバイト先の連絡先や納付書は時間が経つほど探しにくくなります。手元にある源泉徴収票や納付書を、まず一箇所に集めるところから始めてみてください。
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