「産休に入って給料が止まっているのに、自宅に十数万円もの住民税の納付書が届いた」
「育休手当しか収入がないのに、なぜ住民税を払わなきゃいけないのか分からない」
社会保険料は育休中に要件を満たせば全額免除になるのに対して、住民税だけは事情が違います。産休・育休に入って給料がゼロになった時期に、なぜか自宅のポストに数万円から十数万円の納付書が届く、という体験をする人は少なくありません。これは滞納でも会社のミスでもなく、住民税という税金がそもそも「前年の所得に対する後払い」の仕組みになっているために起きる、ごく普通の出来事です。
この記事では、なぜ給料ゼロの時期に納付書が届くのか、会社の給与天引き(特別徴収)から自宅への納付書(普通徴収)に切り替わる仕組み、一括と年4回分割のどちらを選ぶべきか、スマホ決済(eL-QR)での納め方、支払いが厳しいときに使える役所の徴収猶予制度、そして翌年の住民税が非課税になる条件まで、総務省や各自治体の公式情報にもとづいて整理しました。
1. なぜ給料が止まっている時期に届くのか、住民税の「前年課税」の仕組み

住民税は前年1年間の所得をもとに税額が計算され、今年6月から翌年5月にかけて納める後払いの税金です。今年届いた納付書の金額は、去年フルタイムで働いていたころの年収がベースになっています。
【総務省の公式見解・1次情報】
総務省「地方税制度 個人住民税」では、所得割の税率について次のように説明されています。
『所得割の税率は、所得に対して10%(道府県民税が4%、市町村民税が6%)とされており、前年の1月1日から12月31日までの所得で算定されます』
出典:総務省「地方税制度 個人住民税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
つまり、今年届く納付書に書かれている税額は、去年フルタイムで働いていたころの年収をもとに計算されたものです。産休・育休に入って今年の給料が止まっていても、去年の所得に対する請求が容赦なく届くのはこのためで、家計が一番苦しくなるタイミングと、税額が一番高くなるタイミングがずれてしまう構造になっています。
所得割と均等割、税額の内訳
住民税は、所得に応じて課税される所得割(税率合計10%)と、所得にかかわらず定額でかかる均等割(標準額4,000円)の合計で決まります。
【総務省の公式見解・1次情報】
総務省「地方税制度 個人住民税」では、均等割について次のように説明されています。
『均等割は、その税額は4,000円(道府県民税が1,000円、市町村民税が3,000円)とされています』
出典:総務省「地方税制度 個人住民税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
所得割の10%部分に比べれば少額ですが、後述する非課税の条件を満たさない限り、この均等割は所得の多寡にかかわらず毎年かかり続ける点も押さえておく必要があります。
住民税の所得割を計算するときの「所得金額」は、額面の年収そのものではなく、所得税と同じく給与収入から給与所得控除を差し引いた金額が基準になります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁 タックスアンサー「No.1410 給与所得控除」では、給与所得の金額について次のように説明されています。
『給与所得の金額は、原則として、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いた残額です』
出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
地方税法上、住民税の所得割の課税標準は前年の所得税の計算例による総所得金額等によるとされているため、去年の年収から給与所得控除を差し引いた後の金額をもとに税額が決まります。額面の年収がそのまま課税対象になるわけではない、という点は覚えておくと納付書の金額に納得しやすくなります。
#### 【現場のリアル】産休に入って初めて自宅に届いた納付書に驚いた話
初めての出産で産休に入ったばかりのある方の話です。育休手当の初回振込もまだで、通帳の残高が心細くなり始めていた時期に、見慣れない茶封筒が自宅のポストに届いたそうです。開けてみると「市民税・県民税納付書在中」という文字と、一括なら十数万円という金額が印字されていて、一瞬「会社が住民税の手続きを忘れて滞納になったのでは」とパニックになり、休職中にもかかわらず慌てて会社の総務に電話をかけたといいます。
電話口で用件を伝えると、総務担当者は特に驚く様子もなく「特別徴収から普通徴収に切り替わっただけで、去年働いていた分の税金なので滞納ではない」と淡々と説明してくれたそうです。受話器を握りしめて身構えていた本人にとっては、拍子抜けするほどあっさりした一言で、ようやく肩の力が抜けて落ち着きを取り戻したといいます。
本人は「事前に総務から一言説明があれば、あんなに動揺しなかった」と振り返っていました。産休に入る前に、会社側から普通徴収への切り替えについて案内があるとは限らないため、自分から総務や経理に「産休中の住民税はどうなりますか」と一言確認しておくと、納付書が届いたときの驚きをかなり減らせます。
2. 会社の給与天引き(特別徴収)から、自宅への納付書(普通徴収)に切り替わる仕組み
住民税の納め方には、会社が給料から天引きして納める特別徴収と、納税者本人が納付書で直接納める普通徴収の2種類があり、産休・育休で給料が止まると特別徴収から普通徴収へ切り替わります。
【総務省の公式見解・1次情報】
総務省「地方税制度 個人住民税」では、特別徴収と普通徴収について次のように説明されています。
『特別徴収とは、納税義務者以外の者(給与の支払をする会社など)が、納税義務者から税金を徴収して、納税義務者の代わりに納める方法をいいます』
『普通徴収とは、市町村が、納税義務者から申告された所得などに基づき確定した個人住民税の税額を、納税通知書に記載して納税義務者に送付し、納税義務者がこの納税通知書に従って納める方法をいいます』
出典:総務省「地方税制度 個人住民税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
会社員は原則として特別徴収の対象で、毎月の給料から自動的に天引きされます。ところが産休・育休で給料の支払いがなくなると、天引きする給料そのものがなくなるため、会社は市区町村に届け出て普通徴収へ切り替える手続きを取ります。
| 比較項目 | 特別徴収 | 普通徴収 |
|---|---|---|
| 納める人 | 会社(給料から天引き) | 納税者本人 |
| 納付方法 | 毎月の給与から自動控除 | 納付書・eL-QRで自分で納付 |
| 主な対象 | 給与の支払いが続いている会社員 | 産休・育休中、退職者、休職者など |
| 産休・育休中の扱い | 給料がないため天引き不可 | 会社の届出により自動的に切り替え |
| 本人の手続き | 不要(会社が処理) | 原則不要(会社が「普通徴収切替理由書」を提出) |
特別徴収から普通徴収への切替手続きの流れ
切り替えは会社が市区町村へ「普通徴収切替理由書」を提出することで完了し、従業員本人が役所へ何か届け出る必要は基本的にありません。
【横浜市の公式見解・1次情報】
横浜市「個人住民税の特別徴収に関するよくあるご質問」では、普通徴収への切替理由の一つとして、次のように説明されています。
『【普F】退職又は退職予定の方(5月末日まで)及び休職者』
出典:横浜市「個人住民税の特別徴収に関するよくあるご質問」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/jigyosya/shizei/choshu/20120330144100.html
つまり産休・育休で会社を休んでいる人は、退職者と同じ「普通徴収切替理由書」の対象として扱われ、給与支払報告書にその旨が記載されたうえで、市区町村から自宅へ直接納付書が送られてくる仕組みです。
- 手続きの主体:会社が市区町村へ「普通徴収切替理由書」を提出する。従業員本人が役所へ届け出る必要は基本的にない。
- 注意点1:会社側の手続きが遅れると、納付書が届く時期もずれる。産休に入る前に総務や経理に一声かけておくと安心。
- 注意点2:復職して給料の支払いが再開されても、市区町村が自動的に特別徴収へ戻すわけではない。会社が改めて「特別徴収への切替届出書」を提出する必要がある。
#### 【現場のリアル】書類の「休職者」の欄を見て退職手続きと勘違いした話
産休に入って数か月後、たまたま会社から送られてきた住民税関連の控えに目を通していたある方の話です。書類の理由欄に「退職又は退職予定の方及び休職者」とまとめて印字されているのを見て、自分は辞めたつもりがないのに退職の手続きが進んでいるのではと不安になり、その日のうちに人事担当へ問い合わせの電話を入れたそうです。
胸をざわつかせながら事情を尋ねると、担当者からは「休職者もこの様式の中でまとめて扱われているだけで、退職の意思確認とは無関係です」と説明を受け、拍子抜けするほどあっさり誤解が解けたといいます。書類上は退職者と同じ欄に振り分けられていても、実際の雇用関係には何の影響もないという事実を知り、胸をなで下ろしたそうです。
本人は「同じ欄に退職と休職が並んで書かれていると誰でも身構えると思う、見慣れない役所の書式は自己判断せず先に一本電話を入れるに限る」と話していました。
3. 普通徴収、一括納付と年4回分割納付の比較

普通徴収の納付書には一括納付書と年4回の期別納付書が同封されており、どちらを選んでも支払う合計金額は変わりません。
【東京都北区の公式見解・1次情報】
東京都北区「普通徴収の納期限」では、各期の納期限について次のように説明されています。
『第1期:6月末日 第2期:8月末日 第3期:10月末日 第4期:翌年1月末日』
(納期限が金融機関の休業日にあたるときは、翌営業日が納期限になります)
出典:東京都北区「普通徴収の納期限」 https://www.city.kita.lg.jp/living/tax/1001963/1001969.html
納期限一覧と選び方の目安
第1期は6月末、第2期は8月末、第3期は10月末、第4期は翌年1月末が納期限で、一括納付を選んでも割引や特典は付きません。
| 納付方法 | 納期限の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 第1期(年税額の4分の1) | 6月末日 | 4回に分けて納める場合の1回目 |
| 第2期(年税額の4分の1) | 8月末日 | 2回目 |
| 第3期(年税額の4分の1) | 10月末日 | 3回目 |
| 第4期(年税額の4分の1) | 翌年1月末日 | 4回目、最終期 |
| 全期一括納付 | 6月末日 | 1年分をまとめて一度に納付。国税の予定納税のような割引制度は住民税にはない |
自治体によっては一括納付を促す案内をしていることもありますが、一括で払うと納期限までに割引や特典が付くわけではありません。産休・育休中で毎月の家計に余裕がない場合は、無理に一括で払わず、年4回の期別納付を選んで手元資金を分散させる方が現実的です。会社によっては産休に入る前の最後の給料やボーナスから、残りの住民税をまとめて天引きしてくれる一括徴収の相談に応じてくれることもあるため、産休前の段階で総務に選択肢を聞いておくのも一つの方法です。
#### 【現場のリアル】家計簿とにらめっこして分割を選んだ話
育休中、毎月の収支を家計簿アプリで細かく記録していたある方の話です。届いた納付書を見て、一括で片付けてしまえば手続きが一度で済んで気が楽になりそうだと考えたものの、通帳の残高と育休手当の振込予定を並べて計算してみると、一括で払った直後の数か月は残高がかなり心もとなくなることに気づいたといいます。
数字と向き合ってしばらく迷った末、年4回の期別納付を選び、6月、8月、10月、翌年1月と、育休手当の振込サイクルに近いタイミングで少しずつ納めていくことにしたそうです。分割にしたことで、毎回の引き落とし額が育休手当の振込額を超えることはなくなり、通帳の残高を見るたびに冷や汗をかくことがなくなったといいます。
本人は「一括の方が楽そうに見えたが、実際に数字を並べてみたら分割の方が毎月の心理的な負担がずっと軽かった」と振り返っていました。合計の税額が変わらない以上、どちらを選ぶかは損得ではなく、手元の資金繰りに合わせて決めれば十分です。
4. スマホ決済アプリで自宅から納付する(地方税統一QRコード eL-QR)
納付書に印刷された地方税統一QRコード(eL-QR)を対応スマホ決済アプリで読み取れば、役所や銀行の窓口、コンビニに並ばなくても自宅で納付が完了します。
【八王子市の公式見解・1次情報】
八王子市「地方税統一QRコード(eL-QR)を活用した納税について」では、次のように説明されています。
『令和5年度当初課税分より、「地方税統一QRコード(eL-QR)」を活用した納税がはじまりました』
スマートフォン決済アプリでの納付方法については、『アプリで直接「eL-QR」を読み取り納付してください』と案内されています。
出典:八王子市「地方税統一QRコード(eL-QR)を活用した納税について」 https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/zeikin/ag569/ak0001/p032174.html
eL-QRでの納付手順と領収証書の注意点
対応するスマホ決済アプリ(PayPay、楽天ペイ、d払い、au PAYなど)でeL-QRを読み取れば納付が完了しますが、スマホ決済とクレジットカード払いでは領収証書が発行されません。
スマホ決済アプリでの納付手順は次のとおりです。
- 納付書を手元に用意し、対応するスマホ決済アプリ(PayPay、楽天ペイ、d払い、au PAYなど)を起動する
- アプリ内の「請求書払い」「税金・公金支払い」などの読み取り機能で、納付書に印刷された「eL-QR」を読み取る
- 金額が表示されたら内容を確認し、決済を実行して完了
クレジットカード払いを選びたい場合は、地方税お支払サイトでeL-QRを読み取るか、納付書に記載されたeL番号を入力すれば決済できます。ただしスマホ決済やクレジットカード払いでは領収証書が発行されないため、確定申告や会社への提出などで領収証書の原本が必要な場合は、金融機関やコンビニの窓口で納付する必要がある点には注意が必要です。
#### 【現場のリアル】スマホ決済でeL-QRの読み取りに苦戦した話
赤ちゃんを抱っこしながら家事の合間に納税を済ませようとした、あるお母さんの話です。役所に行く時間も体力もないため、スマホ決済アプリで済ませようと納付書のQRコードにカメラを向けたものの、何度読み取ってもエラー表示が出て先に進めなかったといいます。
片手で赤ちゃんを支えながらの作業で焦りが募る中、よく見ると納付書には決済アプリでよく見る四角いQRコードのほかに、コンビニ収納用のバーコードも印刷されており、最初に読み取ろうとしていたのは決済アプリ非対応のバーコードの方だったそうです。改めて納付書の隅にある「eL-QR」という小さな表記を探し、正しいコードにカメラを向け直したところ、あっさり金額が表示されて決済が完了したといいます。
本人は「同じ紙に何種類もコードが印刷されていると気づかず、10分近く格闘してしまった」と話していました。納付書にコードが複数印刷されている場合は、「eL-QR」または「地方税お支払サイト」といった表記が近くにあるコードを探すと、決済アプリでの読み取りがスムーズになります。
5. 納付が厳しいときは、役所の徴収猶予・分割相談を使う

納期限までに納付が難しい場合は、滞納のまま放置せず、先に役所の税務課へ相談するのが最も確実な対処法です。
【中野区の公式見解・1次情報】
中野区「法令に基づく徴収猶予・換価の猶予について」では、徴収猶予の対象事由の一つとして次のように説明されています。
『ご本人又は生計同一のご家族が病気にかかり、又は負傷した場合』
猶予期間中の納め方については、『猶予期間中は、原則として、財産状況・収入等に応じて分割納税をすることとなります』と案内されています。
出典:中野区「法令に基づく徴収猶予・換価の猶予について」 https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kurashi/zeikin/jyuminzei-nozei/cyosyuyuyo.html
徴収猶予の対象事由と相談時に準備するもの
徴収猶予は病気・けが・災害・事業の休廃止などが地方税法で定められた法定事由ですが、実務では産休・育休による収入減の相談にも、納期限内の分割納付や年度をまたぐ猶予という形で応じてもらえるケースが多くあります。育休手当の振込が遅れている、貯金が想定より早く底をついた、といった事情の場合も同様です。
相談時には、収入や支出の状況が分かる資料の提出を求められることが一般的です。窓口に行く前に、次のようなものを手元に準備しておくと話がスムーズです。
- 納付書(金額・納期限が分かるもの)
- 育児休業給付金の振込通知や振込予定が分かるもの
- 直近の家計収支がわかるメモ、または通帳の写し
- 会社から発行された休職・産休育休の証明(求められた場合)
自治体ごとに窓口の名称や相談方法(電話・窓口・電子申請)が異なるため、まずはお住まいの市区町村の税務課・納税課に問い合わせるのが確実です。
#### 【現場のリアル】役所の窓口で分割納付を相談した話
育休手当の初回振込が予定より1か月以上遅れ、手元の生活費が底をつきかけていたある方の話です。届いた一括納付書の金額を見て到底払えないと感じ、意を決して市役所の納税課の窓口を訪ねたそうです。
てっきり厳しく問い詰められるものだと身構えていたところ、事情を説明すると担当者は淡々とした様子で「育休中で収入が不安定なんですね、月々いくらなら無理なく払えますか」と聞いてくれ、こちらが提示した無理のない金額での分割納付にその場で応じてもらえたといいます。拍子抜けするほどあっさりとした対応で、窓口に行く前に感じていた緊張はすっかり消えていたそうです。
本人は「滞納する前に相談すればここまで柔軟に対応してもらえるとは知らなかった、督促状が届いてから慌てて相談するものだと思い込んでいた」と話していました。役所の窓口は、納期限を過ぎて滞納になってから駆け込むよりも、払えないと分かった時点で早めに相談したほうが選べる選択肢が多いというのが、実際に窓口を経験した人たちに共通する感想です。
6. 翌年度の住民税が非課税になる仕組みと条件
1年間まるごと産休・育休で過ごし、その年の所得が非課税限度額以下であれば、翌年度の住民税は均等割・所得割ともに非課税になり、納付書自体が届かなくなります。
【総務省の公式見解・1次情報】
総務省「地方税制度 個人住民税」では、均等割の非課税限度額について次のように説明されています。
『所得金額が35万円×世帯人員数+10万円+21万円(同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合のみ加算)以下の場合』に非課税となる
また、この基本額・加算額は『生活保護基準の級地区分に応じて率(1級地:1.0、2級地:0.9、3級地:0.8)を乗じた額を基準として条例で設定』されると説明されています。
出典:総務省「地方税制度 個人住民税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_03.html
非課税限度額の計算式と、均等割・所得割それぞれのライン
非課税の基準は総務省が示す「35万円×世帯人員数+10万円+21万円(扶養がいる場合のみ加算)」が均等割の全国共通の目安ですが、東京都特別区(1級地)では均等割の加算額が31万円、所得割の加算額が42万円と、均等割より所得割の方が非課税になりやすい基準になっています。
つまり非課税になる所得のボーダーラインは全国一律の金額ではなく、居住する市区町村の地域区分(級地)によって0.8倍から1.0倍の幅で変わります。目安として、級地区分が最も高い東京都特別区(23区)の場合、東京都主税局は次のように案内しています。
【東京都主税局の公式見解・1次情報】
東京都主税局「個人住民税」では、東京都特別区における非課税限度額について次のように説明されています。
均等割が非課税になるのは、扶養親族等がいない場合は『45万円 以下』、扶養親族等がいる場合は『35万円 × (本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数) + 31万円 以下』
所得割が非課税になるのは、扶養親族等がいない場合は『45万円 以下』、扶養親族等がいる場合は『35万円 × (本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数) + 42万円 以下』
出典:東京都主税局「個人住民税」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju
扶養親族等がいる場合は所得割の非課税ラインの方が均等割より緩く設定されているため、所得がこの2つのボーダーラインの間に収まる人は「所得割は非課税だが、均等割の数千円だけは課税される」という状態になることがあります。扶養親族等がいない単身者であれば、どちらの基準も45万円以下で共通です。
| 世帯の状況 | 均等割が非課税になる所得 | 所得割が非課税になる所得 |
|---|---|---|
| 扶養親族等なし(単身) | 45万円以下 | 45万円以下 |
| 扶養親族等あり | 35万円×人数+31万円以下 | 35万円×人数+42万円以下 |
(出典:東京都主税局「個人住民税」、東京都特別区=1級地の場合。人数は本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計)
育児休業給付金は雇用保険法上そもそも課税されない非課税所得なので、住民税の所得金額には含まれません。1年間まるごと産休・育休に入っていて、その年の収入が非課税の育休手当だけだった場合、税法上の所得金額は0円として扱われ、均等割・所得割いずれの非課税限度額も下回るため、翌年度の住民税は均等割・所得割ともに非課税になり、納付書自体が届かなくなります。
ただし、これはあくまで「その年(1月1日から12月31日)の所得」で判定される話です。年度の途中から産休に入った場合は、休みに入るまでの給料が所得として残るため、金額次第では非課税限度額を超え、翌年度も一定額の住民税がかかることがあります。非課税になるかどうかを見極めるには、産休・育休に入った月と、その年に支払われた給与の総額を確認しておく必要があります。
#### 【現場のリアル】翌年届いた納付書の金額が0円だったことに驚いた話
1月から12月まで、ほぼ丸1年を育休で過ごしたある方の話です。前年は苦労しながら分割で住民税を納めていたため、翌年もまた同じくらいの納付書が届くものと覚悟していたそうです。
ところが翌年の6月になっても自宅に納付書が届かず、逆に「手続きを忘れられているのでは」と不安になって市役所に電話をかけたところ、「前年の所得が非課税限度額以下なので、今年度は課税されていません」とあっさり説明を受けたといいます。電話を切ったあと、去年あれほど苦労して分割で納めていた金額を思い出し、「同じ制度の中でここまで差が出るのか」としみじみ実感したそうです。
本人は「非課税になる仕組みを事前に知っていれば、前年の納付を乗り切るときの気持ちの持ちようも違っていたと思う」と話していました。
7. よくある質問(Q&A)
産休・育休中の住民税について読者からよく寄せられる質問は、支払いが厳しいときの相談先、年末調整の要否、ポイント還元の有無、一括と分割の差額、会社の立て替えの5点です。
読者からよく寄せられる5つの質問
支払いが厳しければ滞納前の相談で分割・猶予に応じてもらえ、年末調整の書類提出は休職中でも必要、スマホ決済のポイント有無はアプリ次第、一括と分割で合計税額は変わらず、会社の立て替えは義務ではなく運用次第、この5点が要点です。詳細は次の表と各項目のとおりです。
| No. | 質問の要旨 | 結論(詳細は各項目を参照) |
|---|---|---|
| Q1 | 納期限までにお金が用意できない | 滞納前に役所の税務課へ相談すれば分割・猶予に応じてもらえる |
| Q2 | 休職中も年末調整の書類は必要か | 必要。育休手当は非課税所得なので収入欄には含めない |
| Q3 | スマホ決済でポイントは付くか | アプリごとに異なる。事前に公式サイトで要確認 |
| Q4 | 一括と分割で合計金額は変わるか | 変わらない。利息・手数料は上乗せされない |
| Q5 | 会社は住民税を立て替えてくれるか | 法律上の義務ではなく、会社ごとの運用次第 |
#### Q1. 育休手当の振込が遅れていて、納期限までに住民税を払うお金が手元にありません。
市区町村役場の税務課・納税課へ早めに連絡し、育児休業中で収入が不安定であることを伝えて相談してください。前述のとおり、事情によっては分割納付や、年度をまたぐ徴収猶予に応じてもらえることがあります。督促状が届いてから慌てるより、払えないと分かった時点で先に相談したほうが選べる対応の幅が広くなります。
#### Q2. 産休・育休中も、会社の年末調整の書類は提出する必要がありますか。
はい、必要です。休職前に支払われた給与の年末調整や、配偶者控除・扶養控除の適用を受けるために、会社から配られる申告書は例年どおり提出してください。育児休業給付金は非課税所得なので、申告書の収入欄には含めません。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「年末調整がよくわかるページ」では、年末調整の対象となる人や手続きの流れが解説されています。年の途中から産休・育休に入り、年内に一部だけ給与の支払いを受けていた人も、その年最後の給与を受け取る時点で会社に在籍していれば、原則として年末調整の対象に含まれます。
出典:国税庁「年末調整がよくわかるページ」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm
#### Q3. スマホ決済アプリで住民税を納めると、ポイントは付きますか。
決済アプリによってポイント付与の有無や還元率が異なり、税金の支払いをポイント付与の対象外としているアプリもあります。ポイントを目的にする場合は、事前に利用している決済アプリの公式サイトで、地方税の納付がポイント対象かどうかを確認しておくと安心です。
#### Q4. 一括で納付書どおりに払うのと、4回に分けて払うのとで、合計金額は変わりますか。
変わりません。一括納付にも4回の分割納付にも利息や手数料は上乗せされず、合計の税額は同じです。手元の資金繰りに合わせて選べばよく、無理に一括で払う必要はありません。
#### Q5. 会社が住民税を立て替えてくれるという話を聞きましたが、必ず利用できますか。
産休前の最後の給料やボーナスから残りの住民税をまとめて天引きする、あるいは会社が一時的に立て替えて復職後に精算するといった対応は、法律で義務づけられた制度ではなく、会社ごとの給与実務や就業規則によって扱いが異なります。利用できるかどうかは、産休に入る前に総務や経理へ直接確認しておく必要があります。
まとめ、住民税は「前年の後払い」と理解しておけば慌てずに済む
住民税は前年1年間の所得に対して課税され、今年6月から翌年5月にかけて納める後払いの税金です。産休・育休で給料が止まると、会社は特別徴収から普通徴収への切り替え手続きを行い、自宅へ直接納付書が届きます。支払い方法は一括、年4回の分割、そしてeL-QRを使ったスマホ決済の3通りがあり、家計に合わせて選べます。納期限までに払うのが難しい場合は、滞納する前に役所の税務課へ相談すれば、分割納付や徴収猶予に応じてもらえることがあります。そして1年間まるごと育休で過ごし、その年の所得が非課税限度額を下回っていれば、翌年度の住民税は非課税になり、納付書自体が届かなくなります。
仕組みを知っているかどうかで、納付書が届いたときの動揺の大きさはかなり変わってきます。会社への確認や役所への相談に迷ったときは、自己判断で抱え込まず、早めに担当窓口へ具体的に聞いてみるのが一番の近道です。